2014/01/16

シガード・ラッシャーの言葉より

シガード・ラッシャー Sigurd Rascherの高弟として名高い、ジョン=エドワード・ケリー John Edward Kellyが、「ラッシャーが信じていたこと」として、インタビューの最中に語りだす言葉が凄い。

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He (Sigurd Rascher) believed that music is one of the great accomplishments of human history, central to the identity of the human being, who he is, and that we have to take care of that identity, it doesn't happen by itself.

ラッシャーは信じていた。音楽は人類史上、もっともすぐれた業績のひとつであり、人間が人間であることを証明するものだ、と。人間はそれを大事にする必要がある。無から生じるわけではないから(諸岡敏行訳)。

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どこまでも深く音楽に関わってさえ、いや、音楽を生業としている方でさえ、こういったフレーズを口に出すことができるだろうか。「サキソフォン物語(現代:Devil's Horn)」を読んでいて、最も深く私の心に残った言葉だ。「もっとも優れた業績」とは、音楽学者あたりからは出てきそうな言葉ではあるが、さらに続いて「人間が人間であることを証明するものだ(原文ではcentral to the identity of...となっている)」と…。

聴き手をその場限りの興奮で満足させるような商用音楽ばかりが売れるこの時代に、敢えて見直すべき言葉ではないだろうか。もっと高い精神性を持つ音楽がたくさん生まれ、皆に演奏され、広く聴かれても良いのではないか。…それとも、その現代の商業主義の潮流さえも、音楽のあるべき姿=現代の人間のアイデンティティとして、自然な流れに乗ったものなのかもしれない。

…いやー、それにしてもidentityってのは本当に日本語に直しづらいですな。

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