2011/01/06

ミカラ・ペトリ with コペンハーゲンSQ

現代の最も優れたリコーダー奏者のひとりとして、ミカラ・ペトリ Michala Petriの名がすぐに挙がるだろう。彼女の名前を知らなずして管楽器を吹いてはいられまい。圧倒的なテクニックと音楽性でリコーダー界に君臨し、世界中の著名な奏者・オーケストラと共演、その美貌も相まって聴衆からの人気も高いプレーヤーである。

なんとそのミカラ・ペトリが、サクソフォンと共演したアルバムが存在する。しかも、あのコペンハーゲンサクソフォン四重奏団と、である。コペンハーゲンSQは、パスカルとリュエフが収録されたアルバムでは悪名高い事この上ないが(失礼)、そういえばミカラ・ペトリはデンマークの出身であった。たしかに共演することに不思議はないのだろう。

「Scarlatti(Classico CLASSCD489)」というタイトルのスカルラッティ作品集で、ミカラ・ペトリとの共演は2曲のみ「Sonata in D minor, K.90/L.106/P.9」「Solo Sonata in D minor, K.89/L.211/P.12」である。他にはサクソフォン四重奏のみの編成で、10曲の鍵盤ソナタが収録されている。

聴いてみると、さすがにリコーダーとサクソフォンということで、やや不自然…おそらく、リコーダーだけオンマイクで収録してバランスをいじっているのだろう。そのせいで、想像していた響きとはかけ離れた音が聴こえてくるのだが、慣れてしまえばOK。自在、かつどこまでも可愛らしくフレーズをもて遊ぶペトリの明るい音楽性に感嘆するばかりである。コペンハーゲンSQのメンバーは、音色のコントロール含めてかなり控えめで、そのギャップがちょっとおかしくもある。

ペトリの演奏も、他の録音で聴かれるような圧倒的な覇気はややここでは薄まっており、完全という状態ではないとも感じられた。50歳記念のクレメラータ・バルティカとの共演ライヴ録音などと聴き比べてしまうと、さすがに分が悪いか。コペンハーゲンSQに受け止められるだけの器がなかったのか、それともペトリが単に気乗りしていないだけなのか判らないが(笑)。

とはいえ、世界最強のリコーダーとサクソフォンの共演などめったに聴けるものではないから、貴重な録音である。ぜひ探して、聴いてみていただきたい。

2011/01/05

ミュールの新復刻盤

マルセル・ミュールの新復刻盤の情報。

グリーンドア音楽出版より、マルセル・ミュールの新たな復刻盤が発売となった。今回復刻されたのは1940年代~1950年代の録音で、セルマー、デッカが出版したSPに含まれているものを中心に、パリ四重奏団、ピアノとのデュエットなどが収録されている。音盤提供は、おなじみ木下直人氏(残念ながら復刻は木下氏ではない 訂正:復刻も木下直人氏だとのこと!しかもPierre Clementカートリッジ)である。今回が初めてのCD化となる録音も数多く含まれており、貴重である。

アレクサンドル・グラズノフ - カンツォーナ ヴァリエ~スケルツォ…サクソフォン四重奏曲 作品109 Ⅱ楽章より
ルイジ・ボッケリーニ - メヌエット
ピエール・ヴェローヌ - イルカ…8つの子供の小品より
ドメニコ・スカルラッティ - スケルツォ…クラブサン・ソナタ K.519/L475より
ニコライ・リムスキー=コルサコフ - 熊ん蜂の飛行
フリッツ・クライスラー - クープランの様式による才たけた貴婦人 
フリッツ・クライスラー - 愛の喜び
ジャック・イベール - 机の下で…子供のためのピアノ小品集「物語」より
ポール・ボノー - ワルツ形式によるカプリス
モンドンヴィユ - タンブーラン
フランソワ・ゴセック - ロンドとタランテラ…村祭りより
ガブリエル・ピエルネ - カンツォネッタ 作品19
ジャック・イベール - アリア 変ニ長調
エンリケ・グラナドス - スペイン舞曲 作品37より…5番アンダルーサ
モーリス・ラヴェル - ハバネラ形式による小品
アレクサンドル・ローレンス - パヴァーヌと速いメヌエット
ベートーヴェン - メヌエット
ジャン=フィリップ・ラモー - ガヴォット…歌劇”栄光の殿堂” より
エンリケ・グラナドス - 間奏曲…ゴイェスカスより

このトラックリストだが、以前木下さんに送っていただいたCD-Rと並び順が同じで、驚いてしまった。というわけで、木下氏による復刻の音盤を所持しているのだが、聴き比べる意味でも入手しようと考えている。Amazonではまだ取り扱いを開始していないが、いずれ買えるようになるだろう。

2011/01/04

ララン氏のスカラムーシュ

昨日は、鈍行で長野の実家から東京まで帰ってみた。実家の最寄り駅から東京のアパートの最寄り駅までぴったり5時間。携帯音楽プレーヤーで楽しんでいたら、あっという間だった。

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必要があって、ダリウス・ミヨー「スカラムーシュ」の録音(サクソフォン+ピアノ版)をいくつか聴いてみた。ぱっと思いつくのが須川展也氏、クロード・ドゥラングル氏、ジェローム・ララン氏、ジャン=マリー・ロンデックス氏あたりの各録音。技術的な部分は完全にクリアした上で、どれも個性的で面白いのだが、聴き比べてみて一番良いなあと思ったのがジェローム・ララン氏の録音だった。

この曲は細かい仕掛けが多く曲芸的に演奏しようと思えば演奏できるのだが、なんとなく今日は極端な中断やダイナミクスよりも、もっともっと自然な演奏が聴きたいと思っていたところだった。ララン氏の演奏は、ピアノ(棚田文則氏)ともども、全楽章にわたって実にスッキリと聴かせている。あまりラテン音楽っぽくなくて、本当にお洒落なフランス音楽そのもの、という感じ。サクソフォンというよりもクラリネットあたりを耳にしているような気になる。

ララン氏の演奏は、サクソフォンの自在なコントロールとすっきりした音色などでもって、現代のフレンチ・サクソフォンを最良の形態で具現化した例のひとつだ。ごくごく自然体、特殊奏法とかフラジオとか一切無い状況で、鼻歌でも歌うようにスラスラと音符を並べていく。一見簡単そうに見えることを、自然に湧き出るがごとく演奏しているのが素敵である。

CDではないがYouTubeでミーハ・ロギーナ Miha Rogina氏と李早恵氏のDuo Kalypsoの演奏を聴くことができる。こちらも、ララン氏と同じ傾向の演奏だと言えると思う。
第1楽章:http://www.youtube.com/watch?v=kIM4pe3W-YA
第2楽章:http://www.youtube.com/watch?v=xdAhvfZsMDw
第3楽章:http://www.youtube.com/watch?v=O-X7r-qrfds

2011/01/03

Facebook

世界最大のSNSということで何かと話題の「Facebook」を頻繁に利用するようになった。

これまではTwitterをそれなりに利用していたが、Twitterと比較してメディア(写真・リンク)のシェアがやりやすいこと、海外の利用者との交流を持ちやすいこと、グループを作成できること、などいくつかの利点がある。そのため、Twitterは既にほとんどほったらかしで、Facebookをメインに利用し始めた。

使い始めはなかなか面白さがよく判らなかったが、大学時代の仲間がいろいろと活用しているのを眺めつつ試行錯誤しているうちに、いつの間にか楽しく利用するようになった。アプリケーションの追加によりいろいろと機能を追加することもでき、使い方の拡がりがあるところも面白いと思う(アプリの活用ここについてはまだまだこれからだが)。

サックス界では最近Twitterが拡がる傾向があるが、その次はFacebookが来るのではないかな…と予想。今後、私はTwitterのほうを段階的にトーンダウンさせて、Facebookを積極的に使っていこうと考えている。

JASRACからの請求:顛末

以前、2年前の演奏会に対してJASRACから演奏料の請求があった話を紹介した。初めてJASRACからコンタクトがあったときに、次のような説明を受けた。

「入場料無料のアマチュアの演奏会にゲスト(ギャラあり)が出演し、その演奏会にJASRAC管理曲目が含まれていた場合、その管理曲目に対して演奏料がかかる。」

請求のきっかけとなったTsukuba Saxophone QuartetのSaxophone Concert Vol.2を例にして考えてみよう。同演奏会は、次のようなプログラムだった。

客演(*):松雪明
C.サン=サーンス「オーボエ・ソナタ」(ssax, pf)
C.A.ドビュッシー「チェロ・ソナタ」(bsax, pf)
J.t.フェルドハウス「Grab It!」(tsax, ghettoblaster)
J.フェルド「サクソフォン四重奏曲」より1,5(4sax)
*A.K.グラズノフ/柏原卓之「サクソフォン協奏曲」(solosax, 8sax div)
*G.ホルスト/TsukubaSQ「セント・ポール組曲」(8sax div)
*伊藤康英「木星のファンタジー」(8sax div アンコール)

このうち、JASRACの管理楽曲は、フェルドハウス「Grab It!」、A.K.グラズノフ「サクソフォン協奏曲」、伊藤康英「木星のファンタジー」である。上のJASRACの説明からすると、この3曲全てについて演奏料がかかることになる。フェルドハウス「Grab It!」においてはゲスト奏者が客演していないにもかかわらず、である。納得がいかなかったのだが、演奏料も安いし、交渉すればするだけ時間が無駄になってしまうしで、結果的にマイナスの側面のほうが大きかったため、疑問を言うだけ言って大人しく支払うことにした。

ということで、上の説明を鵜呑みにして(だって、著作権云々に関しては、相手はプロフェッショナルですからね)、請求書を待ち構えていたところ、なななんと!請求書の到着とともに別の説明を受けた。それによると、上の説明は間違っており、正しくは次の通りだとのこと。

「入場無料のアマチュアの演奏会にゲスト(ギャラあり)が出演し、ゲストがJASRAC管理曲目を演奏した場合、その対象楽曲に対して演奏料がかかる。」

つまり、演奏料がかかるのはA.K.グラズノフ「サクソフォン協奏曲」、伊藤康英「木星のファンタジー」だということだ。以前の記事、私自身の知識のなさを嘆いたが、まあ、著作権のプロフェッショナルであるJASRACの職員にしてこの程度の知識で仕事をしているくらいなのだ。これがプロの仕事か?…かなりイラッとしつつ、とにかく無知は罪であるとの思いを強くした出来事であった。

2011/01/02

第3回JML国際コンクール審査員

2011年7月に開催される、第3回ジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォンコンクール The Third Jean-Marie Londeix International Saxophone Competitionの審査員が、いつの間にか公式ページ上で発表されていた。それによると:

Jean-Marie Londeix, President of Jury
Dr. William Street, Coordinator
Arno Bornkamp
Lars Mlekusch
Daniel Kientzy
Debra Richtmeyer
Narong Prangcharoen

とのこと。凄いメンツだ…まず目を引くのは、何と言ってもダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏!!あまりコンクールの審査員などに登場するイメージはなかったのだが、まさかここに審査員として登場するとは…驚いた。サクソフォン奏者にとっては、この人の前で現代作品を吹くことは、恐れ多くもあり名誉なことでもあり…というとことではないだろうか。

アルノ・ボーンカンプ、デブラ・リヒトマイアーの両名については、いまさら説明の必要もないだろう。Lars Mlekuschという方の名前は初めて聞いたが、この方はウィーン音楽院のサクソフォン科教授だそうだ。また、Narong Prangcharoen氏は、サクソフォン奏者ではなく、作曲家。調べてみたところ、公式ページがあった。

2011/01/01

アニヴァーサリー作曲家

2011年…ピアノ界ではフランツ・リストの生誕200年などと騒がれているようだが、リストはサクソフォンのために作品を書いていないし、いまいちピンと来ない。そこで、新年恒例、声楽家・松平敬氏の「アニヴァーサリー調査」を眺めてみたところ…ふっふっふ、良い感じの「アニヴァーサリー」がたくさんあるではないか(´ー`)

"ニーノ・ロータ生誕100周年"
ちょうどニーノ・ロータに関連した作品を、Tsukuba Saxophone Quartetで演奏しようと考えているため、なんだかタイムリーだと感じる。映画音楽のみならず純粋なクラシック音楽の作曲家としても活躍したとのことだが、私自身、映画音楽以外のニーノ・ロータ作品は良く判っていない。やはりニーノ・ロータの真髄は映画音楽にあると感じるのだ。特にフェデリコ・フェリーニとタッグを組んだときの、驚異的に美しい映像に付与される、人間の血が通っているような音楽こそ、まさに映画音楽の巨匠と評されるにふさわしい。
YouTubeの映像を貼り付けておく。8 1/2(はっかにぶんのいち)で、大女"サラギーナ"が砂浜でルンバを踊るシーンだ。夢のように光輝く幻想世界、そこに割って入るニーノ・ロータのルンバ。8 1/2でも評価が高い場面のひとつである。



"アラン・ペッテション生誕100周年"
サクソフォン吹きなら誰もが知っている(はず)「交響曲第16番」のペッテションである。そもそも、ニーノ・ロータと同じ年の生まれだということが驚きだ。悲劇的な人生のイメージばかりが強く、楽曲そのもの私も聴いた作品は「交響曲第7番」「交響曲第16番」くらい。ということで、新年早々NMLで「交響曲第5番」を聴いてみた。…うっ、く、暗い。新たな年の初めに聴くものではないかもしれない。
第5番といえば、ベートーヴェンでありメンデルスゾーンでありチャイコフスキーでありショスタコーヴィチだが、ここまで救いようのない第5番も他にはないと感じた。今年は他の交響曲も、少しずつ聴いてみることとしよう。

第5番を聴いておきながら、ここでは再び第7番と第16番のCDを紹介する。Amazonへのリンクはこちら→「Allan Pettersson: Symphony 7 & 16(Swedish Society SCD 1002))」。「交響曲第16番」はジョン=エドワルド・ケリーが参加した盤もあるが、ヘムケ氏が参加しているこの盤が大変素晴らしい。オーケストラのffと対等に渡り合うヘムケ氏の輝かしいサクソフォンは、「オーケストラ+サクソフォン」という編成の録音媒体の中では、最高のものの一つだ。

"パーシー・グレインジャー没後50年"
サクソフォンとは関わりが深い作曲家。以前ブログの記事でも取り上げたが、グレインジャーは第一次世界大戦従軍時に音楽隊でサクソフォンとオーボエを吹いていたということで、サクソフォン吹きとしてのキャリアは筋金入りだ。ただ、例えばサクソフォンのソロ作品があったりするわけではなく、専ら管楽アンサンブル作品、サクソフォンラージ作品の中での用法に限定されるのが、ちょっと意外なところ。

…ということで、サクソフォンとの関わりはとりあえず置いておいて(いいのかっ)、このCD「グレインジャー・エディション15 管弦楽作品集3(Chandos CHAN9839)」を聴いた。私が大好きな三つの吹奏楽曲のうちのひとつ、「ローマの権力とキリスト教徒の心」のオーケストラ版が収録されている。吹奏楽版よりも壮大な印象。大伽藍…じゃなかった、大聖堂のような巨大な建築物の前に立ち尽くしているような、そんな気分にすらさせられる。幸いNMLにはシャンドスのグレインジャー作品集がすべて揃っている。2011年、グレインジャーに関してはここから聴いていこうかな。