フィル・ウッズ Phil Woods「ソナタ Sonata」といえば、ジャズ/クラシックの語法を融合させた、サクソフォンのための有名な作品だ。本作品は、最初からこのような形で存在していたわけではなく、大きな変遷を経て現在の形に落ち着いている。
よく知られているのは、出版がKendor MusicからAdvance Musicに移った時の改訂であるが、本記事で取り上げるのはその話題ではない。初めてウッズの手による作品が世に出た時には、もっと違う形をしていたのだ。
委嘱者はヴィクター・モロスコ Victor Morosco氏。クラシックのみならず、ジャズにも精通したアメリカのサクソフォン奏者である。彼がカーネギー・ホールで開催したリサイタルに臨むにあたり、ウッズに新作を委嘱。そうして生まれたのが、サクソフォン、ピアノ、ベースのトリオ編成のために書かれた、「Pieces (Four Moods) for Saxophone, Bass and Piano」と呼ばれる作品だ。初演は成功し、好意を持って迎えられたようだ。
その1962年12月2日のリサイタルにおける初演録音が現存し、以下のYouTubeリンクより聴くことができる。サクソフォンはもちろん、委嘱者であるモロスコ氏。ピアノはAbraham Stokman氏、ベースはJohn Beal氏である。一部音飛びが残念であるが、当時の様子を非常によく伝える音質に驚かされた。
現在の「ソナタ」とは別の作品と言えるほど、全く別の作品ではあるが、全体の構成や、フレーズの共通点など、「ソナタ」の原型であることがはっきりとわかる。第4楽章などは、ベースのオスティナートが非常に緊張感のあるテンションを生み出しており、興奮させられる。
こののち、1974年には、ウッズはベースを編成から削除し、第1楽章に即興パートを挿入して、「ソナタ」と名付けた。1994年には別の楽章にも即興パートを挿入し、これがKendor Musicから出版されたバージョンとなった。1997年にはさらに改訂が施され、Advance Musicから出版されている。
0 件のコメント:
コメントを投稿