2015/11/26

デファイエ四重奏団復刻盤:サクソフォーン・アンサンブルの至芸

これまで最もリピートして聴いたサクソフォンのCDは、かつてEMIから出版されていた「サクソフォーンの芸術」3枚組の、2枚目である。デファイエ四重奏団が吹いたピエルネ、デザンクロ、リヴィエ、シュミットの録音が収録されている。当時、アンサンブルコンテスト向けにデザンクロ「四重奏曲」に取り組んでいたこともあり、お気に入りの録音を見定めるべく、同曲が収録されたCDを買ってはふむふむと聴きこんでいたのだ。「サクソフォーンの芸術」は、高校の研修旅行先でふらりと立ち寄った長崎のどこかの商店街のCD屋で見つけた。最初はピンとこなかったのだが、聴きこんでいくうちにその味わい深さに惹かれていった。まるで弦楽器のごとき音色や、絶妙なフレージングなど、もはや耳から離れなくなってしまった。デファイエ四重奏団のEMI盤を聴きこむことで、「往年のフレンチ・スクールの演奏がどういったものであるか」を、曲がりなりにも知ることができたのだと思う。

すっかり惚れ込んでしまった私は、デファイエ四重奏団の録音を集めようと試みたのだが、探せど探せど見つからない。それもそのはず、デファイエ四重奏団の録音で、CDになっているものはこれくらいしか無かったのだ。"伝説"とされていたSony盤を耳にするまでは、「サクソフォーンの芸術」の入手から4年を要した。大学の吹奏楽団にトレーナーとして招いていた松雪先生から、同LPをMDに録音したものをお借りしたのだ。おお、これが伝説のリュエフだな早速聴いてみるかと、再生した瞬間の衝撃といったら!サクソフォンに対する常識が根本から覆った…とは言い過ぎだろうか、いやそんなことはない。あまりの衝撃に、このブログの元となるウェブページ"kuri_saxo"をその日のうちに立ち上げ、感想を書いたのだ。

さらに3年後、木下直人さんとお知り合いになり、様々な録音を送っていただく中に、デファイエ四重奏団のこの録音が含まれていた。復刻の素晴らしさ(当時はシステムが完成形に至っていなかったが、それでも素晴らしい復刻だった)により、本来のLPの音がどのようなものであったのかを聴くこととなり、Sony盤の凄まじさを再認識したのだった。ここまで技術的に/音楽的に完成されていて、多くの人に聴かれ愛される、四重奏の録音があっただろうか。ただの懐古趣味ではないことを、言葉で語るのみならず、多くの方に実感してもらうことができるという点でも、今回の復刻は価値があると言えるだろう。

なんだか長くなった。というか、長くならざるを得なかった。なんせ13年分なもので。このたびの復刻に携わった全ての関係者に御礼申し上げたい。タイトルはオリジナルから引用し、「サクソフォーン・アンサンブルの至芸(SONY SICC 1972~3)」とされた。Amazon等でも取り扱いを開始している。サクソフォーン・アンサンブルの至芸

メンバー編成は以下のとおり。結成から解散まで、不動のメンバーであった。

ダニエル・デファイエ(ソプラノサクソフォン)
アンリ=ルネ・ポラン(アルトサクソフォン)
ジャック・テリー(テナーサクソフォン)
ジャン・ルデュー(バリトンサクソフォン)

「サクソフォーン・アンサンブルの至芸 L'art supreme du quatuor de saxophones(1978年)」「フランス・サクソフォーン四重奏の新たなエスプリ Esprit nouveau de France saxophone quartette(1975年)」の2枚が復刻されている。

1978年の録音は、来日時、石橋メモリアルホールにて録音された。ジャケット写真は、ポラン氏によれば400枚位撮影されたうちの1枚というが、本当だろうか。小品が中心だが、聴きどころは多い。よく取り出して聴くのはスカルラッティ。ぶっ飛んだテンポ設定、火花を撒き散らしながら軽やかに走り抜ける爽快感が心地よい。これぞフランスのエスプリだ。アルベニスの3曲も魅力的だなあ。特にカディスの中間部!

1975年の録音は、録音技師アンドレ・シャルラン率いるシャンゼリゼ録音センターへの外部委託。1975年の2月3日~5日とされているが、同じくポラン氏によれば「実質1日で録り終わってしまった」とのこと。リュエフはほぼ1発録りだったとのことだが、実際はどのくらい編集されているのかな。ソニーのエンジニアはシャルランの録音を気に入らなかったというが。ヘヴィな選曲だが、改めて聴くとティスネに惹かれる。現代音楽ではあっても、やはり根底に流れるのは「音楽」なのだ。

収録曲は以下のとおり。Sony Music Shopのサイトからのコピペ。

[DISC:1]
1. G線上のアリア・・・管弦楽組曲第3番ニ長調より (J.バッハ作曲/M.ミュール編曲) 試聴
2. 3つの小品 I. プレスト・ジョコーソ 試聴
3. 3つの小品 II.アンダンテ・カンタービレ 試聴
4. 3つの小品 III.スケルツォ 試聴
5. メヌエット (ボッケリーニ作曲/M.ミュール編曲) 試聴
6. アヴェ・ヴェルム・コルプス Kv.618 (モーツアルト作曲/M.ミュール編曲) 試聴
7. スケルツォ・・・弦楽四重奏曲第2番より 作品41 (シューマン作曲/M.ミュール編曲) 試聴
8. アンダンテ・カンタービレ・・・弦楽四重奏曲第1番より 作品11 (チャイコフスキー作曲/M.ミュール編曲) 試聴
9. カディス・・・スペイン組曲第4番より 作品47 (アルベニス作曲/M.ミュール編曲) 試聴
10. コルドバ・・・スペインの歌より 作品232 (アルベニス作曲/M.ミュール編曲) 試聴
11. セヴィーリヤ・・・スペイン組曲第3番より (アルベニス作曲/M.ミュール編曲) 試聴
12. 小さな黒ん坊 (ドビュッシー作曲/M.ミュール編曲) 試聴
13. 小さい羊飼い・・・「子供の領分」より (ドビュッシー作曲/M.ミュール編曲) 試聴
14. ゴリウォークのケークウォーク・・・「子供の領分」より (ドビュッシー作曲/M.ミュール編曲) 試聴
[DISC:2]
1. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) I.序奏 試聴
2. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) II.フーガ 試聴
3. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) III.メヌエット 試聴
4. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) IV. パスピエ 試聴
5. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) V.アリア 試聴
6. サクソフォーン四重奏のためのコンセール(演奏会用四重奏曲) VI. ロンド形式のフィナーレ 試聴
7. アリアージュ 第1部 (ティスネ作曲) 試聴
8. アリアージュ 第2部 (ティスネ作曲) 試聴
9. サクソフォーン四重奏曲 I.動きを持って 試聴
10. サクソフォーン四重奏曲 II.コラール 試聴
11. サクソフォーン四重奏曲 III.ワルツの動きで 試聴
12. サクソフォーン四重奏曲 IV.生き生きと 試聴

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