2015/10/09

ハバネラ・サクソフォン四重奏団特集(その2):おすすめのCDは?

昨日の記事に続き、今日はハバネラ・カルテットのCDをご紹介。手に入りやすくおすすめできる2枚を取り上げる。

「Grieg, Glazounov, Dvorak(Alpha 041)」
エドワルド・グリーグ - 組曲「ホルベアの時代から」
アレクサンドル・グラズノフ - サクソフォーン四重奏曲作品109
アントニン・ドヴォルザーク - 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」

曲目は、純粋に奏者の技量が試されるであろう古典作品。何気なくCDを聴き始めると、派手な経歴からは想像できない意外なほどの「普通の」演奏に驚くことだろう。一見するとテクニックばかりをさらけ出しているとか超絶技巧だとかいう印象はなく、上質のサウンドが小川のようによどみなく流れてゆく。続くグラズノフやドヴォルザークでも下手な小細工をせずに丹念に組み上げられたアンサンブルが心地よい。

この一見「普通の」演奏を実現する難しさ!超絶技巧を超絶技巧と思わせず、アルティシモ音域までを均一なサウンドで作り上げ、どこまでも自然なフレージングを徹底して追求した結果、「サックスのCD」というより「クラシック音楽のCD」として高いレベルで結実してしまった…とでも言えばいいだろうか。お堅い「普通の」クラシックファンの耳をも納得させる屈指の四重奏アルバム。

紙ジャケット仕様。表紙にはアルファレーベルの特徴である絵画(Georg Nikolaj Achen "Interior", 1901 オルセー美術館蔵)が使用され、アルバムに花を添えている。国内では、輸入盤のみならず、代理店経由で流通している版も存在し、日本語解説が添付されている。

「L'engrenage(Alpha 518)」
アレクサンドロス・マルケアス - 歯車のように
ルイ・スクラヴィス - 期待とダンス
ジョエル・メラ - 出会い
アラン・ベルロー - ちいさな炎いくつも
リオネル・ボール - あいまいな女たち
ファビアン・レヴィ - ドゥルフ
ルイ・スクラヴィス - 分離
ヤセン・ヴォデニチャロフ/ルイ・スクラヴィス - 黄金のしずく
ジェルジ・リゲティ - 東風(「バガテル 第3番」を固執旋律に据えた即興演奏)
ルイ・スクラヴィス - 水の花
ルイ・スクラヴィス - その民なりの幼き日
ルイ・スクラヴィス - 後日談

スクラヴィス氏はヨーロッパジャズ界屈指の演奏家&作曲家。特に即興演奏のスペシャリストとして定評のある奏者。バスクラリネットやサクソフォーンを操りながらそのスーパー・テクニックでコード上のアドリブから完全即興までをこなすが、このアルバムもその能力が遺憾なく発揮された録音だ。

記譜を受け持つハバネラ四重奏団/即興を受け持つスクラヴィス氏という、相反するサウンドが不思議なグルーヴ感を作り出している、という印象を受ける。ショックの大きさで言えばスクラヴィス氏の独特な即興演奏が上だろうが、そういった場所にあってもスクラヴィス氏を立てながら自己主張を怠らないハバネラ四重奏団。強烈な奏者同士のぶつかりが大きな実を結んだということかな。

聴きづらい曲もあるけれど、ジャズのイディオムをベースとした曲もあったりしてなかなか楽しい。リゲティの「6つのバガテル」第三楽章の伴奏を下敷きに、スクラヴィス氏が延々と即興演奏を続けていく「東風」というトラックは、アルバムのコンセプトを示唆しているようで興味深く聴いた。これ、サクソフォン奏者だけじゃなくてクラリネットの人にも聴いてもらいたいなあ。

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