2014/11/08

ファブリス・モレティ2014東京公演

アドルフ・サックス生誕200周年の記念すべき日に、ルーテル市ヶ谷にて実に素晴らしいリサイタルを聴いた。

【CD発売記念 ファブリス・モレティ サクソフォーンリサイタルツアー2014 東京公演】
出演:ファブリス・モレティ(sax)、服部真理子(pf)
日時:2014年11月6日 19:00開演
会場:ルーテル市ヶ谷・音楽ホール
料金:3500円、学生2500円(当日各500円増し)
プログラム:
J.B.サンジュレ - ファンタジー・ブリランテ
P.A.ジュナン - ソロ・ドゥ・コンセール
B.ハイデン - ソナタ
M.コンスタン - ムジク・ドゥ・コンセール
H.トマジ - エヴォカシオン
P.イトゥラルデ - ギリシャ組曲
A.グラズノフ - 協奏曲
R.プラネル - 感傷的なワルツ(アンコール)
林光 - キュンキュン(アンコール)
E.ボザ - アリア(アンコール)

ファブリス・モレティ Fabrice Moretti氏は、マルセル・ミュール、ダニエル・デファイエと続くエコール・フランセーズの継承者として、サクソフォンの伝統的なクラシック作品を趣味良く聴かせる、数少ない奏者の一人。少し前まではデュオ服部の招きで、最近は鈴研音楽会の招きで、毎年来日している。今年はなんと、アドルフ・サックス生誕200周年のその日にリサイタルを開催。コンサート中のMCによれば、昨年来日した折に「この記念すべき日を日本の聴衆の皆さんとお祝いしたい!」と決め打ちで選んでホールを確保したそうだ。私自身は昨年は伺えず、2年ぶりとなったが、期待通りの、いや、期待以上のリサイタルであった。

クランポンの最新機種"Senzo"を携えたモレティ氏。もちろんS-3プレスティージュ時代も美しい音色で魅了したが、さらにその音色に磨きがかかっていると感じた。個人的な感想だが、金属的な音色の成分がやや縮退し、まろやかさが全体を覆い、さらにダイナミクスのコントロール(特にp)が進化していると感じた。開発に深く携わっただけあって、やはりわが意を得たりというようなコントロールが随所に見られた。

古い2作品を"Senzo"で聴く。響きは芳醇で、アドルフ・サックスの制作したサクソフォンとはかけ離れているが、違和感は感じない。色気…というか、エスプリを振りまきながら、見事に吹ききるモレティ氏。コンサート最初から喝采モノである。モレティ氏のコンサートは、ピアノの服部真理子氏との掛け合いのMCも魅力だ。新しく録音したCDの話、Senzoの話、アドルフ・サックスの話、作曲家の話…どれも聞いて楽しいものだ。ハイデンは、なかなかライヴで演奏する奏者もおらず、珍しい作品だが、今までのこの作品のイメージをい覆されるような(第3楽章の爆速であること!)凄みがあった。コンスタンほど現代に近づいても、モレティ氏の演奏はまったくブレず、しっかりしたテクニックの下地、芳醇な音色、趣味の良さ、どれをとっても一級品だ。

後半は、民族音楽に影響を受けた佳作「エヴォカシオン」「ギリシャ組曲」が続く。「ギリシャ組曲」は、スパニッシュ・ジャズではあるが、モレティ氏が吹くとまるでフランスのおしゃれなシャンソンのごとく響く。これはこれでアリだな(笑)。最後のグラズノフは、アドルフ・サックス200周年を祝うハッピー・バースデーの曲にも聴こえてしまったほどだ。名演奏とは、このような演奏のことを言うのだろう。筆舌に尽くしがたい。

アンコールは…林光作品が面白い!最後は「アリア」でしっとりと。

ツアーはまだまだ続く。ぜひお近くの方は聴いてみることをおすすめする。

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