今日、2014年11月6日は、アントワーヌ・ジョゼフ・アドルフ・サックス Antoine Joseph Adolphe Sax(1814 - 1894)の200回目の誕生日だ。
素晴らしい楽器を発明した、このベルギー・ディナン生まれの才気あふれる楽器職人に、われわれサクソフォン奏者は改めて感謝しなければならない、と思う。サクソフォンがない音楽界など、もはや考えられない…とは言い過ぎだろうか。
とはいえ、改めて、ここまで素晴らしい管楽器もなかなかないとの思いを強くする。それは、この楽器が自然発生的に進化てきたのではなく「発明」されたからなのだが、オクターヴキィがあり、音量のコントロールが自由自在、音色もヴァリエーション豊富、人間工学に基づいたキィ配置でフィンガリングも限界がなく、音程も作りやすく、同族楽器で高音から低音までカバーし、しかも互いに音色が溶け合い…こういった特徴を並べるだけでも、いかにサックス氏がしっかりした考えを持って、この楽器の基礎を作ったのか…氏の生真面目さか、天才性かはわからないが、その凄さが良くわかる。
ところで、サックス氏は、軍楽隊における木管と金管の音色の融和を狙ってサクソフォンを考案したと伝えられている。実際、当時のサクソフォンを吹いてみると、音量や音色など、非常に控えめであり、現代の楽器特性とは似ても似つかないものである。楽器やマウスピースの構造の変化によって、サクソフォンはその特性を徐々に進化させてきたことはよく知られているが、誰がどのようにして(演奏家か?指揮者か?楽器職人か?)その特徴を持たせるきっかけ、ならびに方向性を作っていったのか、という経緯を詳しく知ることができればと、常々から思う。
サックス氏が最初考案したサクソフォンのままでは、ジャズを中心としてここまでの市民権を得るには至らなかっただろう。また、クラシックの世界においても、ここまで多くの充実した作品(現在、サクソフォンのために書かれたクラシック作品は、およそ30000作品ある、と言われている)は生まれ得なかったであろう。サックス氏の功績とともに、そういったサクソフォンの方向性を決定付けた「何か」について、同列に論じられるようになってほしいと考えている。
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