SaxofanのKさんに聴かせていただいたCD。どうもありがとうございました!
ちょっと異常なCD。仮に2013年あたりにこのCDがレコーディングされていたとしたらごく普通のCDだと思って、それなりの感想しか持たなかったのだろうが、レコーディングが1991年というところがミソだ。というのも、驚いたことに、そのような時期のリリースにも関わらず、アルバム全体でノン・ヴィブラートが貫かれているのだ。現代の(まさに今現在の)演奏におけるトレンドを10年以上先取りしているということだ。
The Quatuor de Saxophones de Versaillesは、1983年に結成、1985年にエコール・ノルマルの"the diplome Superieur de Concertiste"(って何?)を取得。1990年メニューイン財団の現代音楽賞を受賞している。現在は活動している実態を把握できないが、解散してしまったのだろうか。メンバーは以下の通り。
Claude KELOGLANIAN, Soprano Saxophone
Xavier ROSSELLE, Alto Saxophone
Michel OBERLI, Tenor Saxophone
Dany AUBERT, Baritone Saxophone
Jean Rivier - Grave et Presto
Jean Françaix - La suite
Demis Visvikis - Cascades de Feu
Vincent Paulet - Aeolian Voices
Denis Badault - En Effet
Eric Barret - Quintet Kavisilaq (guest: Eric BARRET)
のっけから、「グラーヴェとプレスト」の演奏で驚かされる。Michel Meriot率いるLe quatuor de saxophones de la musique de la Sureté nationale(国家警察音楽隊サクソフォン四重奏団)に入っている"プレスト"と同じ超展開。ずっと前から気になっているのだが、楽譜が存在するのだろうか…。続くフランセの「組曲」は、アルモ四重奏団が録音していることでも有名だが、実はこの団体に献呈された作品なのだ。ヴィブラートを取り払うことで、表情の変化はやや乏しくなっている印象を受けるが、逆にひたすら精緻・ストイックさを楽しむことができる。
後半の4曲で面白いのは、「Cascades de Feu」「Quintet Kavisilaq」の2作品。シリアスな響きながら、斜めに構えたエンターテイメント性が面白い「Cascades de Feu(直訳すると、"炎のカスケード")」は、13分に及ぶ長尺の中に見せ場がいくつもあって強烈だ。「Quintet Kavisilaq」では、作曲家・ジャズサクソフォン奏者のEric Barret氏をゲストに迎え、抑制された伴奏とソロ、という極端な対比を面白く聴いた。
ヴィブラートを避けている演奏について、私が思うところを関連する記事へのリンクによって示しておく。初めてこの記事を書いたのは2006年の頃だが、その頃と考察は変わっていない。
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