少しずつ続けているギャルド吹奏楽団の復刻CDのレビュー。先日書いたデュポン楽長時代の2枚(1枚目、2枚目)に続いて、ブラン楽長時代の録音が復刻されたCDのレビューを。やはり長くなりそうなので1枚ずつにレビューを分けることとした。フランソワ=ジュリアン・ブラン Francois-Julien Brun楽長指揮ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団 Musique de la Garde Républicaine。
収録曲目は下記の通り…グリーンドア音楽出版のページからコピペした。とにかく注目すべきは、1961年11月3日の厚生年金ホールにおけるライヴ録音=ギャルド歓迎演奏会、である。木下直人さんが書いたライナーノーツによれば「この録音は某音楽団体によって永く秘蔵されてきたが(後略)」ということで、この録音が残っていたのかという大きな驚きがあった。これを探し当てて世に送り出した木下さんの努力に感服である。
◇ギャルド歓迎演奏会/厚生年金ホール (Rec.3.Nov.1961)
1.ベルリオーズ:「ローマの謝肉祭」序曲
2.ファリャ:バレエ組曲「三角帽子」より(近所の人々の踊り/粉屋の踊り/終幕の踊り)
3.リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
◇朝日ソノラマ昭和36年12月号より
4.リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
◇コンサート・プログラムより
5.フランス国家・君が代・英雄行進曲(サン・サーンス)
◇Masterworks from France 462 (Rec.1959)
6. ミゴー:教会交響曲 (祈りと入祭唱 犠牲 信奉ミサ)
ということで、あまり冷静に聴けないのだが…。まずは冒頭のベルリオーズを聴いてみよう。冒頭一発目のサウンドから、信じられない瞬間が続く。なんという輝かしく、魅力的な音色だろうか。管楽器を重ねあわせるだけで、このようなサウンドが生まれることがある意味信じられない。彼らは、オーケストラに追いつこうとしてオーケストラのレパートリーに取り組んでいるのではなく、オーケストラと同系列か、もしくはそれらを上回るものとして吹奏楽を位置づけ、実際そのレベルの演奏を提示しているのだから凄い。この曲と、あと「ハンガリー狂詩曲第2番」はNHKホールでも演奏されているが、それと聴き比べてみるのも一興だろう。
ファリャの「三角帽子」は、実に音楽的だ。ブラン楽長の手腕が遺憾なく発揮され、この絶妙な間合いやテンポ取りが実現できているのだろう。ブートリー時代のギャルドの録音にみられるような、適当に音楽を流していくような瞬間は皆無。各ソリストもそれは見事なもので、一級の管楽器奏者が多数在籍していた同時代のギャルドのポテンシャルの高さを思い知らされる。
朝日ソノラマのソノシート(ソノシートって知ってますか?こんなのです。)を復刻したという「ハンガリー狂詩曲第2番」と「ラ・マルセイエーズ」「君が代」「英雄行進曲」は、さすがにソノシートならではの音質の悪さがあるものの、しかし音楽が持つパワーは生半可なものではない。こういった演奏で「君が代」を聴けるというのも嬉しいものがあるなあ。また、放送用録音を復刻したというジョルジュ・ミゴの「教会交響曲」は、吹奏楽のオリジナル作品だそうだ。冒頭の得も言われぬコラールのサウンド。いったい、各楽器をどのようにブレンドすれば、こんな不思議な音が出るのだろう。作品としても実に良く出来ており(さすがにちょっと"渋い"響きだが)、現代であまり演奏されないのは疑問。
とにかく手にとって、聴いてみていただきたい。単なる懐古趣味ではない、1960年代に"吹奏楽"が到達した世界最高の音楽がここにある。
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