フランスの四重奏団、Quatuor Arcanesのアルバム"[R+D]"を購入した。ヴァンサン・ダヴィッド氏を筆頭に、フランスの中堅どころの名手で結成された四重奏団が奏でる、ラヴェル「弦楽四重奏曲」とドビュッシー「弦楽四重奏曲」。演奏は、とにかく凄まじいの一言。各所で循環呼吸やらフラジオ音域やらダブルタンギングやらを使いまくり、無限のアーティキュレーションとダイナミクスで、サクソフォンの限界を全く感じさせず演奏している。ラヴェルだとトルヴェールQ、ドビュッシーだとアルモSQあたりが、日本国内でのスタンダード盤となっていると思うが、技術的にはそれらのはるか上空を飛んでいることに間違いない。
オリジナルの弦楽四重奏曲を聴いた時に感じられるワクワク感が感じられないのは、それはもちろん一度に一つの音しか出せない管楽器の制約から来るものであろう。サクソフォンを使って弦楽四重奏の表現にいくら近づけようとも、越えることのできない壁は存在するようだ。なかなか健闘しているとは思うのだが。
…と、ここでトルヴェールQやアルモSQのトランスクリプションを聴いてみると、どうも私の耳にはアルカンSQの演奏よりもTQやHSQの演奏のほうが魅力的に感じてしまうのだ。TQやHSQは、そもそものアプローチがアルカンSQのものとは違う。それは、各曲の冒頭部分を聴き比べても明らかである。TQやHSQは、アレンジも演奏も、弦楽四重奏曲に近付けることを放棄して、全く別の(サクソフォンに適した)アプローチで曲に取り組んでいるように思える。結果として生み出されるのは、それぞれの団体が持つ個性が存分に反映された演奏だ。ここでは、アレンジや演奏のなかに大きな芯が通っていて、実に耳に心地良く響くのである。
どちらが良いか、という議論はできないと思うのだが、気になる方はまず聴き比べていただきたい。もちろん、どの団体も単独で捉えれば素晴らしい演奏を繰り広げており、どれも素晴らしいことに間違いはないのだ。
トルヴェールQ「デューク・エリントンの時代から」(ラヴェル所収)
アルモSQ「フランスのエスプリ」(ドビュッシー所収)
Quatuor Arcanesのアルバムは、彼らの公式サイトから。
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