サクソフォンが発明されてから160年。しかしいくら若い楽器だからって「クラシックっぽい」曲が少ないわけではなく、黎明期のサンジュレを始めとする古典的な作品、グラズノフの「協奏曲」や「四重奏曲」に代表されるロマン派、さらに続くネオ・ロマンティック、コンテンポラリーと、意外なほどに「クラシック作品」が多いことに気付かされる。
そしてさらに、サックスの特徴である音色の柔軟性や運動性能を生かした、クラシック×ジャズや、クラシック×ロックのような「ハイブリッド作品」が数多く生み出されている。
もちろんサックスの「クラシック作品」にも良い曲がいっぱいあるのだが、この「コラボレーション作品」の中に、目を剥くほどカッコいい作品を見つけることがあるのだ。今回はその中からフィル・ウッズ作曲の「ソナタ」の話。
フィル・ウッズと言ったらアメリカのジャズ界では大御所のジャズ・アルトサクソフォン奏者&作曲家。ヴィクター・モロスコに献呈されたこの四楽章からなる「ソナタ」は、ジャズのイディオムをそのまま譜面に落としてきました、という感じの曲で(クラシックな「ソナタ」を想像しながら聴き始めるとかなり面食らう)、「ハイブリッド作品」の中でもずば抜けたカッコよさと完成度を誇る名品である。
まず主題が良い!とてもメロディックな上にクールだし、その主題が全楽章に渡って聴かれ、さりげなく統一感を出している。そしてソロサックス、ピアノにアドリブ部分が用意されているあたりはジャズそのまま…コード進行が用意されたアドリブならまだしも、"freely, fast as possible"の副題を持つ最終楽章ではフリー・ジャズ的な要素までをも求められるという幅の広さ(けっこう凄い)。
1986年に発売されたジョン・ハールとジョン・レネハンのデュオによるアルバム「John Harle plays(Hyperion)」のトップを飾るのがこの曲。2004年にClarinet Classicsから再発売されて初めて耳にしたが、いやあ、衝撃的だった!。たしか献呈者であるヴィクター・モロスコ氏の演奏によるCDもあるはずで、こちらもぜひ聴いてみたい。
良い曲のわりに、日本ではコンサートのプログラムに入ることが稀。なんでだろう?確かに収録されたCDも少ないし、ガチガチのフランス産ソロ曲が好まれているので、広まる余地は無いのかもしれないなあ。…と思っていたら11月に筒井裕朗氏がリサイタルで取り上げるらしい!(→http://www.c-music.jp/index.php/top/friend/i/6809759610/)しかも一楽章の録音も聴ける(ファイルへの直接リンクは遠慮しました→http://www.geocities.jp/saxsonata/sound/etc/woods1.mp3)カッコいい!リサイタルは石川県とのことで、さすがにここからは無理だが…お近くの方はぜひ。
サクソフォンの世界には、まだまだ素敵な「ハイブリッド作品」がたくさんあるので、機会があれば紹介したいと思っている。
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