2023/10上旬まで多忙につき更新を停止する。
2023/08/30
2023/07/24
木下直人さんより(Marcel MuleのSelmer盤復刻)
マルセル・ミュール氏の録音の中でも、特に高名なSelmer盤(かつて、フランス・サクソフォン協会からASAX98という型番でCD化もなされている)の復刻盤を、木下直人さんに送っていただいた(いつも、ありがとうございます)。
P.クレストン - ソナタP.モーリス - プロヴァンスの風景
P.M.デュボワ - ディヴェルティスマン
E.グラナドス - ゴイエスカス
P.ボノー - ワルツ形式のカプリス
H.トマジ - ジラシオン
E.ボザ - カプリス
様々な形態で復刻されているが、それぞれの復刻ポリシーによって、少しずつ違う演奏に聴こえてくるのが実に面白い。音色や音の輪郭そのものにはエッジの効いた、眼前に迫るようなリアルさを感じるのだが、そのおかげでより各場面における違いが際立つ。
かつて、クレストンの冒頭を初めて聴いたとき「問答無用に感じた畏怖」のようなものは、ASAX98の復刻ポリシーによるものも大きかったのかもしれない。もう少し違う印象を持つようになったのは、大きな発見であった。
2023/07/23
Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録:追記
徳祐一郎さんより、先日のブログ記事「Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録」について、貴重なコメントを頂戴した。
主に、後半部に記載した、松井宏幸氏が入手したというダニエル・デファイエ氏の使用モデルについてのコメント、また、ビュッフェ・クランポンのサクソフォン全体についての捉え方について、興味深い示唆をいくつもご提示いただいた(ありがとうございました)。私自身も全く知らない情報が多く、どこかに残しておきたいと考えてご相談したところ、掲載許可をいただいたので、一部、「噂レベルの話…」とコメントがあった部分を除き、そのまま掲載する。
他にコメントや情報があればお寄せいただきたい。
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松井先生が入手されたデファイエ氏使用のPrestigeのC-D#キイについて考えるにあたっては、S2というモデルの存在が鍵となります。
S2は、S1と同一の管体を持ちながらも一部設計を合理化したS1の廉価版です。具体的なS1との差異点には、C5キイとTfキイの機構の簡易化(主列との連絡を省略)、彫刻の省略(彫刻付き個体もあり)、そしてC-D#キイの一般的なローラーキイへの変更などがあります。
そしてデファイエ氏使用のPrestigeについてです。こちらの個体に搭載されたC-D#キイは、前述のS2と同様のローラーキイです 。同時期に製造された真鍮S1にも、同様にS2用のC-D#キイを搭載した個体が存在します。これらはカイルヴェルト製のキイとは全く異なるものです。
ともかく、この個体は「S2用C-D#キイを搭載したS1 Prestige」という解釈をすることができます。
ビュッフェの楽器はモデル名の定義が非常に曖昧で、それがより理解を難しくする一因となっています。そもそも「S3」という名称は正式なモデル名ではなく、通称に過ぎないのではないかともいわれています。一般に「S3 Prestige」と呼ばれるモデルの正式名は、「Prestige」 (S1 Prestigeも正式名称は「Prestige」)です。
また「無印S3」と呼ばれるモデルも、管体などに「S3」の刻印はなく、保証書ではのモデル名は「saxophone alto」とのみ記されているものや、「S1」と表示された個体すらあります。個人的にはS3製造当時のビュッフェ公式資料における「S3」という表記は確認しておりません (近年の資料にはS3という表記もみられますが)。何をもって「S3」と呼ぶか、という明確な基準が存在していないともいえると思います。個人的には純ビュッフェ製がS1シリーズ、カイル製キイ付きがS3シリーズという認識でしたが、何が正しいやら...といったところです。
他にも、1973-1975年の製造品の中にはSuper Dynactionの構造をもったS1が存在したり、S1の構造をもったSuper Dynactionが存在したり...
ビュッフェのサクソフォンはマイナーチェンジがあまりに多く、個人的には厳密にモデル名を区別することは極めて困難であると考えています。
2023/07/09
Robert Planelのローマ大賞作品
作曲家ロベール・プラネルは、1933年にローマ大賞を受賞している。ローマ大賞は、コンクールの中で指定されたテキストをベースに、参加者が多声部・オーケストラを付与することによって作品を作り上げ、その出来を競う、という形で争われる。ちなみにこの年の次席は、ピアニストとしても有名なアンリット・ピュイグ=ロジェであった。
その、プラネルの作品について、おなじみMusica et Memoriaの中に興味深い記述があった。
http://www.musimem.com/prix-rome-1930-1939.htm#planel
カンタータ「イディル・ファンビュレスク Idylle funambulesque」によって、この若き音楽家は、芸術音楽にジャズを導入し、またサクソフォンの特殊な音色を取り入れた。
少し探してみたが、残念ながら、音を見つけることはできなかった。しかし、1908年生まれのプラネルがその音楽的キャリアの極めて初期からサクソフォンやジャズを知る…どころか存分に活用し、芸術作品の域へと昇華していたという事実を示すものだろう。
以下は、1941年に撮影されたプラネルの写真とのこと。
2023/07/08
Michael Colgrassの「Urban Requiem」
吹奏楽形態においてサクソフォン四重奏をフィーチャーした作品の一つ。
アメリカに生まれ、カナダで活動していた作曲家、マイケル・コルグラス氏の名前は、日本国内においては吹奏楽の世界で主に知られている。アルトサクソフォンと吹奏楽のための「Dream Dancer」なる作品も存在しているが、それよりもさらに規模が大きい作品で、コルグラス氏がサクソフォンのためにこのような大規模な作品を残していることを初めて知った。
作曲者のコメントを訳して載せておく:
レクイエムとは、死者の魂に捧げるものである。アーバンレクイエムは、様々な偶然の印象から着想を得た、都市の物語と言えるかもしれない。私は、サクソフォンが生まれた私たちの都市部や、このような環境で日々起こる悲劇や闘争を思い浮かべた。しかし、私はまた、この都市のエネルギーとパワー、そしてその対立に内在するユーモアにも触発された。サクソフォンは、このアイデアに必要なさまざまな感情を表現するのに特に適していると感じている。というのも、サクソフォンは非常に個人的で痛烈な性格を持つだけでなく、力強く、威厳があるからだ。バンシーのように吠えることもできるし、子猫のように鳴くこともできる。要するに、サクソフォンは他のどの楽器よりも人間の声に似ているのだ。私の脳裏には、4本のサクソフォンがヴォーカル・カルテットのように歌い、典礼的な音楽でありながらブルージーな倍音を持つ、一種の "アフター・アワー "レクイエムのように聴こえた。
演奏時間はおよそ30分。各ソロ楽器の見事な音運びと、バックバンドとソロの濃密なインタープレイが魅力的だ。
録音はいくつかあるが、サクソフォン奏者のJoseph Lulloffが参加しているGreat Lakes Saxophone Quartet(この作品のための臨時編成カルテットかもしれない)と、ノーステキサス・ウィンド・シンフォニー、ミシガン州立大学、各バンドと録音を行っているものがオススメ。技術的にはいずれも優れているが、どちらを取るかと言われればノーステキサス・ウィンド・シンフォニーの演奏が好みである。
2023/07/05
Crampon S3 Prestige Saxophoneの備忘録
かつてクランポンが製造・販売していたプレスティージュサクソフォンについての備忘録。
私は、あまり楽器の情報には興味が無いのだが「クランポンのプレスティージュ」については少し特別な思いがある。そもそも、ダニエル・デファイエ氏が演奏/プロモーションしていた、という点や、かつて実際に一度吹いたときに出てきた驚くほど美しい音(しかも、たまたまアルトの小物が手元になく、部室に転がっていた古いヤマハか何かの超適当に選んだマウスピースで吹いた…)など、所有に至ったことはないが、決して手に入ることのない憧れのような存在として、心の奥底にずっと燻り続けている。
最終期にはアルトサクソフォンのみが製造され、中古市場でもかなり高額で取引されており、さらにソプラノ、テナー、バリトンは希少度がさらに高い。たまに、中古情報やオークションなどでふと目にすると、他の楽器には感じることのない羨望の感情が湧き上がってくる。
そのクランポンのプレスティージュだが、最終期に製造されていた「S3プレスティージュ」には2種類のバージョンが存在していたことを最近知った。もしかして界隈では常識なのかもしれないが、備忘録として残す次第。
1つ目が、1989-1994年に製造された純粋にクランポン製の楽器。キーワークなど、S1等を継承する特徴が見られる。製造数が700程度と非常に少ない。
2つ目が、1995-2008年に製造された、管体がクランポン製、キーワークがカイルヴェルト製の楽器。こちらの楽器が、現在中古市場等では数多く見られるもの。
音などにどういった違いがあるのかは良くわからないが、とりあえず事実としてそのような違いがあることを最近知ったのでブログに残しておく。うーん、書いていたら欲しくなってきたが、入手困難であるため、なかなか。
さて、ここまで書いて一つ疑問が出てくる。それは、最近、サクソフォン奏者の松井宏幸氏が入手したという、「巨匠ダニエル・デファイエがベルリンフィル日本公演で使用したプレスティージュ」のことである。どんな経緯で入手されたのかはほとんど語られていない(関係者が眠らせていたお宝です、とのこと)が、その写真を見ると、上記のいずれにも属さないキーワークが目を引く。C-D#のローラーは、クランポンのキーワークではないし、ではカイルヴェルトか?と思いきや、カイルヴェルトとは違う妙に丸い形状に違和感がある。また、Tf/C5のあたりは、クランポンのキーワークそのものである。これは一体どのようなモデルなのだろうか。
また、クランポンのシリアル番号リスト、というものを見つけた。非常に興味深い内容で、併せて掲載しておく。クランポン→クランポン&カイルヴェルト、の移行時期には、無印のS3の発売も重なっているのだ。また、S1の時期に突如として現れて消えていったS2の役割、というものも気になる。
2023/06/25
ダニエル・ケンジーのYouTubeチャンネル
ひと月ほど前に、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のYouTubeアカウントが突如として開設され、同時に57本もの演奏録音(残念ながら映像は無いようだが)がアップロードされた。
特に現代作品の分野において、大量の録音を実施しているダニエル・ケンジー氏ならではの内容。作曲家の名前に馴染みが無い中、どのような音が飛び出すかは予測不可能。じっくり腰を据えて聴いてみて、新たな響きを発見することに楽しみが見いだせるだろう。
私も聴いたことがあるのは、ジェルジー・クルタグの「ブカレストの叔父を訪ねて」くらいで、ほかは初耳。とにかく分量が圧巻で、まだ全然聴けていないのだが、少しずつ聴いていこうと思う。
https://www.youtube.com/@daniel-KIENTZY








