かつてクランポンが製造・販売していたプレスティージュサクソフォンについての備忘録。
私は、あまり楽器の情報には興味が無いのだが「クランポンのプレスティージュ」については少し特別な思いがある。そもそも、ダニエル・デファイエ氏が演奏/プロモーションしていた、という点や、かつて実際に一度吹いたときに出てきた驚くほど美しい音(しかも、たまたまアルトの小物が手元になく、部室に転がっていた古いヤマハか何かの超適当に選んだマウスピースで吹いた…)など、所有に至ったことはないが、決して手に入ることのない憧れのような存在として、心の奥底にずっと燻り続けている。
最終期にはアルトサクソフォンのみが製造され、中古市場でもかなり高額で取引されており、さらにソプラノ、テナー、バリトンは希少度がさらに高い。たまに、中古情報やオークションなどでふと目にすると、他の楽器には感じることのない羨望の感情が湧き上がってくる。
そのクランポンのプレスティージュだが、最終期に製造されていた「S3プレスティージュ」には2種類のバージョンが存在していたことを最近知った。もしかして界隈では常識なのかもしれないが、備忘録として残す次第。
1つ目が、1989-1994年に製造された純粋にクランポン製の楽器。キーワークなど、S1等を継承する特徴が見られる。製造数が700程度と非常に少ない。
2つ目が、1995-2008年に製造された、管体がクランポン製、キーワークがカイルヴェルト製の楽器。こちらの楽器が、現在中古市場等では数多く見られるもの。
音などにどういった違いがあるのかは良くわからないが、とりあえず事実としてそのような違いがあることを最近知ったのでブログに残しておく。うーん、書いていたら欲しくなってきたが、入手困難であるため、なかなか。
さて、ここまで書いて一つ疑問が出てくる。それは、最近、サクソフォン奏者の松井宏幸氏が入手したという、「巨匠ダニエル・デファイエがベルリンフィル日本公演で使用したプレスティージュ」のことである。どんな経緯で入手されたのかはほとんど語られていない(関係者が眠らせていたお宝です、とのこと)が、その写真を見ると、上記のいずれにも属さないキーワークが目を引く。C-D#のローラーは、クランポンのキーワークではないし、ではカイルヴェルトか?と思いきや、カイルヴェルトとは違う妙に丸い形状に違和感がある。また、Tf/C5のあたりは、クランポンのキーワークそのものである。これは一体どのようなモデルなのだろうか。
また、クランポンのシリアル番号リスト、というものを見つけた。非常に興味深い内容で、併せて掲載しておく。クランポン→クランポン&カイルヴェルト、の移行時期には、無印のS3の発売も重なっているのだ。また、S1の時期に突如として現れて消えていったS2の役割、というものも気になる。
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