2024/04/29

Quatuor de saxophones contemporainのアルバム

昨日の記事で、ジャック・シャルル氏に関連して話題に出したQuatuor de saxophones contemporain(Sop:Jacques Charles、Alt:Pierric Leman、Ten:Ghislain Mathiot、Bar:Max Jezouin)のアルバムを、多くのサブスクリプションサービスで聴くことができる。

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mGVDS9610zscIgpyWSNrtfnxN4D8v1KGU&si=54gG4Cn_KZGp4mRD

サンジュレ「四重奏曲第一番」、スカルラッティ「3つの小品」、ワイルの「三文オペラ」抜粋(しかも、ジョン・ハール氏のアレンジを使っている!)、ルジェ「オーブ・マリーン」という、古から現代まで満遍なく取り上げた内容。サンジュレは時々大味な響きなどもあり、あまり落ち着いて聴いていられなかったのだが、ワイルやルジェの作品は、良い意味で遠慮のなく、体当たりな演奏が楽しい。

録音年・出版年について、どこにも記載が無いが、エディット・ルジェ氏のページによれば、どうやら1984年とのこと

以下は、Discogsのページから引用したオリジナルジャケット。


2024/04/28

ベルノーのデュオ(J.P.バラグリオリとJ.シャルル)

ジャン=ピエール・バラグリオリ Jean Pierre Baraglioli氏と、ジャック・シャルル Jacques Charles氏という、フランス・サクソフォン界の大御所二人によるアラン・ベルノー「デュオ・ソナタ」の映像。映像にエフェクトもかかっている。

バラグリオリ氏は日本の方にもおなじみだが、ジャック・シャルル氏はピンとこない方も多いと思うので、簡単に経歴を。1975年にパリ国立高等音楽院のダニエル・デファイエ氏のクラスを卒業。同年、Quatuor de saxophones contemporainを結成し、同時代の作曲家の作品を数多く取り上げた(アルトにピエリック・ルマンが参加していた)。1976年より、Rochelle音楽院教授。その後、パリ区立15区ショパン音楽院教授を務めた。As.Sa.Fraの会長としても活躍した。

激烈に難しいこの作品だが、飄々と(バラグリオリ氏は実演・録音とも多く触れたことがあるが、いつ聴いてもこの雰囲気は崩れない)吹きこなしてしまう。楽譜の捉え方、アンサンブルの捉え方について、何かの境地を垣間見るようで、実に面白い。


2024/04/22

B.Marsalis plays "Hot Sonata"

アンドレイ・ボレイコ指揮ニューヨーク・フィルと、ブランフォード・マルサリス氏の共演による、エルヴィン・シュルホフ「ホット・ソナタ」の録音。

https://archive.org/details/cd_tuur-schulhoff-harbison-lutoslawski-hambre_bengt-hambreus-erkki-sven-tuur-ervin-schul/disc1/

デンヴァーポスト紙上にも、この演奏会のことが書いてあった。

https://www.denverpost.com/2010/07/29/branford-marsalis-hits-classic-note-in-vail/

これ見よがしに出てくるオールド・ジャズの雰囲気が、マルサリス氏の奏でる演奏の雰囲気とマッチしており、この作品の数ある演奏の中でも最高のものの一つだと感じた。

かなりレトロな音色を意識しているようにも思えるが、当時のセッティングが気になるところ。下記、おそらく演奏会に際して収録されたインタビューでは、バリバリのクラシック・セッティング(Vandoren)になっているが…。

Prism Quartetの2000年のライヴ録音

Internet Archive上にて、Prism Quartetの過去の演奏会のライヴ録音は見つけた。2000年6月24日、フィラデルフィアのFree Library of Philadelphia、Montgomery Auditoriumでの演奏とのこと。同月20日にもニューヨークにて同じプログラムで演奏している。

https://www.prismquartet.com/concerts/2000-new-york-philadelphia-recital-series-iii-new-sounds-worldwide/

プログラムは以下の通り。VieruとGriseyの各作品はソロ。イタリア、ルーマニア、アメリカ、フランス、オランダ、ギリシャと、多国籍な作品が並ぶ。ティケリ「Out of Blue」は、このニューヨーク~フィラデルフィアのコンサートシリーズにおいて初演されたとのこと。

F.Donatoni - Rasch
A.Vieru - Doux Polyson
F.Ticheli - Out of Blue
G.Grisey - Anubis et Nout
T.Keuris - Quartet
I.Xenakis - XAX

https://archive.org/details/cd_live-in-hall-recordings-vol-94_franco-donatoni-anatol-vieru-frank-ticheli/disc1/

2024/04/15

ワシントン・ポスト紙上のデファイエ四重奏団記事

ワシントン・ポストの1985年6月25日の記事に、ダニエル・デファイエ四重奏団のアメリカにおける演奏(世界サクソフォン・コングレス開催に伴う)の模様を伝える記事を見つけた(機械翻訳にかけてみた)。

https://www.washingtonpost.com/archive/style/1985/06/26/world-saxophone-congress/1de5ed58-adb7-41a5-904f-0eb57ae2673e/ 

デファイエ四重奏団は、昨夜メリーランド大学で開催された第8回世界サクソフォンコングレスのオープニングコンサートに出演した。ソプラノ・サクソフォン奏者ダニエル・デファイエ率いるフランス人音楽教授のカルテットは、現代の作曲家によるカラフルで特異な3つの作品で、タウズ・シアターの満員の聴衆を喜ばせた。

アルト・サックス奏者のアンリ=ルネ・ポリンは、アレクサンドル・グラズノフの「四重奏曲」(5つの変奏曲が、豪快な冒頭楽章、激的なフィナーレに挟まれている)で、多くのエネルギーとリズミックなドライブを提供した。

今週アメリカで初演された12曲のうちの1曲目、イィンドジフ・フェルドの「四重奏曲」は素晴らしいアンサンブルだった。1982年に作曲されたこの5楽章の作品は、音楽スタイルの並置と音色の探求に成功しており、他のよく練られたアイデアの中でも特に優れている。

この夜の最後の四重奏作品、フローラン・シュミットの「四重奏曲」は、愛らしく官能的な4楽章からなる作品で、演奏家たちが優雅な名人芸を魅せた。


2024/04/12

Moscow Saxophone Quartetの演奏動画

ニキータ・ズィミン氏を筆頭に、ロシアの名手が集結したMoscow Saxophone Quartetの演奏動画。アルトはユーラシア・サクソフォン協会の副会長のタラス・グサロフ氏、テナーはアナスターシャ・コニャエワ氏、バリトンは2023年のディナンコンクール覇者のドミトリ・ピンチュク氏。

現代の美しいサウンドを持つ四重奏団、というだけで片付けられない、強い魅力を持つ団体だ。ミュージックビデオの雰囲気も良い。

とりあえずVKのページはフォローしてみた(内容はインスタグラムと近い)。

2024/04/07

細川俊夫サクソフォン作品集:Light and Darkness

KAIROSレーベルより、大石将紀氏をフィーチャーした、細川俊夫氏のサクソフォン作品集「Light an Darkness」が発売された。演奏者は他に、宮田まゆみ(笙)、イルゼ・イーレンス(ソプラノ)、吉野直子(ハープ)、大宅さおり(ピアノ)、葛西友子(打楽器)。武生国際音楽祭にゆかりの深い奏者による布陣。

私が細川俊夫氏のサクソフォン曲に初めて触れたのはクロード・ドゥラングル氏の演奏による「Vertical Time Study II」であり、その後もヨハネス・エルンスト氏演奏の「サクソフォン協奏曲」、ドゥラングル氏演奏の「3つの愛のうた」などを録音で聴いた。魅惑的な作品が多いが、氏のサクソフォン作品集は初めてだと思われる。

「Vertical Time Study II」など、聴き慣れた曲は、大石氏のしなやかなサクソフォンによって耳を洗い直され、ドゥラングル氏との解釈の差分を面白く聴くことができる。笙とサクソフォンのための「明暗」やハープとサクソフォンのための「弧の歌」など、初めて聴く細川氏の編成の作品では、音色のブレンドや楽器間のインタープレイに、じっと聴いていると「細川氏の独特の節まわし」のようなものが感じられてくるのが面白い。

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以前、「3つの恋のうた」の題材となった短歌について、自分なりに調べて解釈した現代語訳を載せておく。

【暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部】

歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。※ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っているそうだ。

【あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな - 和泉式部】

私は間もなく死ぬだろうが、せめてものこの世の最後の思い出に、あなたにもう一度だけ会っておきたい。

【物おもへば 沢の蛍も 我が身より あくがれいづる 魂(たま)かとぞみる - 和泉式部】

恋に悩めば、沢に飛び回るほたるも、私の身体から抜け出していくたましいではないかと思えてしまう。

石渡悠史氏の演奏:浦田健次郎「ソナタ」

最近Facebookにて雲井雅人氏が紹介し、ちょっと話題になっている録音。浦田健次郎氏の「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」を、石渡悠史氏が演奏した録音。


もの凄い集中力というか、鬼気迫るものがあり、かなり驚かされた。吉岡氏がアップしていたジャケ写真によれば、1980年の録音、つまり、石渡氏が40代の頃の録音ということになる。

作曲者の浦田氏は、もともとトロンボーン専攻だったが、のちに作曲を専門とし、東京藝術大学の作曲家教授をも務めた重鎮。この「アルトサクソフォンとピアノのためのソナタ」は、作曲家集団である「環」から1967年に発表された、浦田氏の作曲家としてのデビュー作品である。1974年にフランス・ブルドーで開かれた第4回世界サクソフォンコングレスでは、佐々木雄二氏により演奏された記録が残っている。


浦田氏の、サクソフォンの作品としては、他に、「サクソフォン四重奏のための3つの小品」がある。