2005年9月の雲井雅人サックス四重奏団第4回定期演奏会にて初演され(これが初演時の録音)、その後イトーミュージックより楽譜が出版された。ここ数年、国内外の団体に多く演奏されるようになってきた。
ヴァイオリンのための無伴奏パルティータ第2番の終曲「シャコンヌ」は、バッハの、いや、全てのヴァイオリンの無伴奏作品の中でも最高峰であり、過去から演奏され尽くしている作品。この作品を、サクソフォンで再現する試みは、直接的に無伴奏のサクソフォンで演奏するアプローチの他、四重奏では古くはGary Scudder編、最近では宮田麻美編なども知られるが、個人的に最も好んでいるのが、伊藤康英先生の編曲だ。
原曲の、朴訥としたモノローグが徐々に大伽藍のように立ち上がっていく、そういった変幻自在の趣とは少し異なり、起承転結のようなドラマティックな構成が魅力的で、それはそのままサクソフォンという楽器の個性に繋がっている、とも感じる。ブゾーニの編曲がベースになっているから、とも思ったが、それだけではなく、伊藤康英先生自身が盛り込んだ要素+構成感が、この編曲のオリジナリティの礎になり、価値を高めているのだと思っている。かつて、The SAXの企画で、「私が選ぶサクソフォン四重奏の名曲」をThunderさんとともに5つ選ぶ機会があったのだが、グラズノフ等は当然として、その中に変則と知りつつこの作品を入れたことを思い出す。
YouTubeを探せば、Quatuor B他、多くの演奏が見つかり、さらに、直近では日本の若手四重奏団である、Modetro Saxophone Quartetの商用録音(同曲初)もリリースされた。今後ますますこの作品の演奏が広まり、サクソフォンのスタンダード・レパートリーとなっていくことが期待される。
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個人的なこの作品にまつわる経緯は、以下。
初演を聴いて出版を切望し、伊藤康英先生に出版を掛け合い、初演翌年の2006年に出版された楽譜を入手。その後、あまりの難易度になかなか取り組めずにいたが、2011年5月のTsukuba Saxophone Quartetの自主公演においてようやく演奏することができた(本当は同年3月の日本サクソフォーン協会のコンクールにて演奏する予定だったが、東日本大震災により同コンクールは中止となった)。その後、2012年7月の第16回世界サクソフォンコングレス@スコットランド他、何度か取り上げた。
ちなみに、楽譜を取り扱っているブレーンミュージックのサイトの「参考音源」のバナーが、上記2011年のTsukubaSQの自主公演の動画にリンクされている。
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