島根県のF様より、セルジュ・ビション Serge BICHON氏のLP(1981年録音)を復刻したCD-Rをお送りいただいた。この場を借りて改めて御礼申し上げたい。
ビション氏は、長らくリヨン音楽院サクソフォン科の教授を務めたサクソフォン奏者である。現パリ国立高等音楽院教授のクロード・ドゥラングル氏を始めとする名奏者の輩出、リヨン・サクソフォンアンサンブルの結成などを行い、名教師として知られている。奏者としての活動は、現代にあっては、いくつかの録音や、Quatuor de saxophones Rhône-Alpesの活動が有名だ。この録音には、四重奏、独奏、室内楽が収録されている。
Serge Bichon, saxophone
Roger Muraro, pf
Florent Schmitt - Quatuor (Quatuor de saxophones Rhône-Alpes)
Ida Gotkovsky - Brillance
Alfred Desenclos - Prelude, cadence et finale
Lucie Robert - supplications (Trio Evolution)
丸く、澄んだ音色である。1981年という時代にあって、最近(2015年)のフランスの主流派に通じる部分が散見される。ヴィブラートは深くかかっているのだが、どこか無機質というか、あれ?これはドゥラングル教授のCD「Jardin Secret」あたりで聴かれるタイプの演奏にも似ているなあ、などと感じた。技術的には不安要素はなく、丁寧で落ち着いた演奏である。
作品としては、シュミット、ゴトコフスキー、デザンクロの作品は当たり前のように存じていたが、ロベールの「Supplications」という作品(サクソフォン、オーボエ、チェロ)をとても楽しく聴いた。この3本から生まれる響きは、聴く前は想像できなかったのだが、とにかく美しいのだ!こんな作品があったとは知らなかった。
今日のサクソフォンのトレンドにつながる、その萌芽を垣間見るようで、興味深く全編を聴いた。録音に聴かれるスタイルから、サクソフォンの系譜をたどってまとめていったら、楽しいだろうなあ。ある意味では「出発点」とでも言ってしまおうか、貴重な記録の一つであることには、間違いないだろう。
ピアノは、ロジェ・ムラロ Roger Muraro氏。1977年にパリ国立高等音楽院のピアノ科を卒業し、メシアン弾きとして高名な奏者である。のみならず、1978年にはパリ国立高等音楽院のサクソフォン科(ダニエル・デファイエ氏のクラス)をも卒業している、というスーパーマン。ピアノ科とサクソフォン科を両方卒業するって、どんなやねん!とツッコミを入れたくなるが、そんなこともあって録音のピアノとして招聘されたのではないかな。
Quatuor de saxophones Rhône-Alpesのメンバーは、下記の通り。
Serge Bichon, ssax
Daniel Gaudet, asax
Daniel Cochet, tsax
Roger Michel Frederique, bsax
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