こういうリサイタルをされてしまうと、やはりサクソフォンのリサイタルというのは(実験的であっても)このようなアプローチが必要な時代に来ているのではないか、という思いを強くする。こと、委嘱新作から受けた印象は、作品・演奏とも強かった!
【村松和樹サクソフォンリサイタル】
出演:村松和樹(sax)、大嶋千暁(pf)、旭井翔一、Saitone(comp)
日時:2015年2月28日(土曜)14:00開演
会場:ティアラこうとう・小ホール
プログラム:
J.ドゥメルスマン - オリジナルの主題による幻想曲
H.ヴィラ=ロボス - ファンタジア
J.M.ダマーズ - ヴァカンス
A.デザンクロ - PCF
M.ブンス - Waterwings
JacobTV - Grab It!
旭井翔一&Saitone - Concertino_for_524DCA1A.ksh
村松氏のこだわりが随所に見えるリサイタルだった。それは、プログラム構成であったり、演奏そのものであったり、プログラム冊子(入場には曲目だけ書かれたレターセットのようなものが配布され、リサイタル後に"After Book"という、解説文etcが入った冊子が渡される)であったり、照明であったり、音響であったり…。リサイタルというものを多角的に捉えようとする彼の意思を感じ取ることができた。
前半は、クラシカル・サクソフォンのために書かれたオリジナル作品のプログラム。ドゥメルスマン、ダマーズは、技術的な面でもかなりしっかりしていて、驚き。曲を通して、これだけの演奏をする、ということは、音大生でもなかなか出来る人は少ないのでは。ちなみにドゥメルスマンは、村松氏が横浜国際音楽コンクールの学生部門で1位を取った時の作品だそうな。それを裏付けるような、かなりアグレッシブな音楽運びには驚いたのだった。デザンクロは、さすがに難しい作品ということで、若干テクニカルに難儀している様子が窺えたが、とはいえやりたいことはしっかりとわかる演奏。千暁さんの(いつものことながら)アンサンブルピアニストとしての的確なサポートは、特にドゥメルスマンやデザンクロで映えた。カデンツのダイナミックさは、今まで千暁さんになかったような雰囲気のものだった(ピアノがベヒシュタインだったことも関係しているかな?)。
後半は、エレクトロニクス特集。ブンスとJacobTVの作品は、私も演奏したことがあって、楽譜をどうしてもそういう聴き方になってしまうのだが(苦笑)ここでも演奏や視覚的なものの作り方に村松氏のベクトルを感じた。そして、なんといっても本日の白眉は旭井翔一氏とSaitone氏共作となる「Concertino_for_524DCA1A.ksh」であろう。この不思議なタイトルは、Shoichi_Asaiという文字列をSHA256(ハッシュ関数)に突っ込んで出てきた文字列の最初の8文字なのだそうだ。サクソフォンのソロパート、そして"Chiptune"と呼ばれるジャンルのプリ・レコーディングパート、それぞれが実に魅力的だった。今まで、おそらくサクソフォンとエレクトロニクスの作品って100も200も聴いたことがあるはずなのだが、そのなかでも確実に5本の指には入るようなものの一つではないかと思ったのだった。これはぜひ、日本発の作品として世界に広めていきたい!再演を期待したいところだ。そしてまた、この作品での村松氏の演奏は、特に気合いの入ったもので、圧倒されてしまったのだった。
アンコールに、Chiptuneで演奏されるデュボワ「りす」。面白かった。
終演後は、打ち上げに参加させていただいた。なんだか異業種交流会みたいな感じだったのだが、いろいろな話題に花が咲き、楽しい時間を過ごしたのだった。
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