今日はマルセル・ミュール Marcel Mule氏の誕生日だ。
サクソフォンがどのような方向に発展しようとも、ミュールの偉大な功績は不動のものであり、現在のクラシック・サクソフォンの本流を築いたという点で忘れてはならない存在である。我々が四重奏に取り組んだりヴィブラートの研究をしたりするとき、間接的にミュールの影響を受けていることはいまさら説明の必要もない。また、サクソフォンのレパートリーがミュールによって押し広げられた点で受ける恩恵も計り知れない。
もしあなたがもう少しだけミュールに興味を持っているなら、おそらくSP&LP時代の録音を聴いたことがあるだろう。幸いなことに最近は復刻盤の整備も進み、ミュールのほぼすべての録音が「伝説(聴きたくても聴けないという意味)」とされていた90年代から比べると隔世の感がある。また、アメリカを中心に残されていた貴重なライブ録音の復刻も進んでおり、まだまだ私たちの知らない録音があるのではないかと、今後のさらなる発掘にも期待が高まっている。
音楽大学や専門学校などでサクソフォンを専門的に学ばれている方々にとって、ミュールの録音はどのような位置付けにあるのだろう。まさか「一度も聴いたことがない」はさすがにないだろうが、聴いたことがあったとしてもインスピレーションを受けずにしまいこんでしまったりと、やはりそんな事もあるのだろうか。それはとても残念なことであるので、ミュールの誕生日をきっかけにもう一度だけぜひ耳を傾けていただきたい。その録音から聴こえる美しい音色、甘いヴィブラート、唖然とするほどのテクニック、そして何より弦楽器奏者のような豊かな音楽性を感じ取っていただきたいのである。
以下、おススメの録音をいくつか挙げておく。これまでにもブログでご紹介したものだが、改めて…。
何よりもまず、木下直人さんの復刻であるという点。SPというものはは、生半可なCDの録音など問題にならないくらいリアルな音が収められているのだが、木下直人さんの長年の研究成果による、完璧な復刻がなされている。具体的には、20世紀中頃にフランスの国立放送局で使用されていたカートリッジ他の機材をオーバーホール、さらにSPを一枚一枚丹念に洗浄した上で盤起こしを実施したというもの。
http://greendoor.jp/products/products.php?pnum=GD-2036
ミュールが残した最後のソロ録音。シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団との共演によるイベール「コンチェルティーノ」と、トマジ「バラード」。聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ際限ないテクニックは、もしかしたら現代にあっても聴くことのできないものかもしれない。
http://www.geocities.jp/kuri_saxo/legendary_sax/#MULE(リンク先の二枚目)
0 件のコメント:
コメントを投稿