ナレーションとサクソフォンとピアノのためのPierre Jalbert作曲「The Invention of the Saxophone」という作品を知った。サクソフォンが発明されたまさにその瞬間を題材にした、小オペラというか、モノローグというか、そんな作品である。サクソフォンとナレーターが絡む作品は、よくよく数えてみると意外と多くて、有名所ではヒンデミットの「ソナタ」、ウォーレン・バーカー「オズの魔法使い」といったところがすぐ思い浮かぶ。
写実的というよりも、幻想的な内容で、全編を通して神秘的な雰囲気が漂う。冒頭の部分は、こんなナレーションから始まっている。
It was Adolphe Sax, remember,
not Saxo Grammaticus, who gets the ovation.
And by the time he had brought all the components
together — the serpentine shape, the single reed,
the fit of the fingers,
the upward tilt of the golden bell—
it was already 1842, and one gets the feeling
it was also very late at night.
静かで穏やかな部分から、徐々に濃密に、激しく変化していくさまが、聴き手をその世界に引きこむ。ナレーションの内容は、あくまでも音楽を補助する役割に徹しており、12分間の大きな音楽の流れのなかで「ここぞ!」という部分に出現する。
「The Billy Collins Suite(Cedille cdr90000-115)」に、Steve Robinson (ナレーター)、Susan Cook (サクソフォン)、Yoko Yamada-Selvaggio (ピアノ)という布陣での演奏が収録されている。各奏者の実力はさすがにこの短い曲一曲では推し量りかねるが、とても雰囲気の良い演奏であることは間違いない。他の収録曲も魅力的。
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