レスリー・バセット Leslie Bassett(1923 - )は、アメリカの作曲家。カリフォルニア州に生まれ、幼少の頃よりピアノ、トロンボーン、チェロを学んだ。まもなく、第2次世界大戦の開戦により、第13機甲師団の音楽隊で、トロンボーン奏者、作曲家、アレンジャーとして、アメリカはもとよりヨーロッパ戦線でも活躍した。ミシガン州立大学でRoss Lee Finneyに学び、フルブライト奨学金を得てパリへ遊学、エコール・ノルマル音楽院でアルテュール・オネゲルに、また、名教師ナディア・ブーランジェに個人レッスンを受けた。フランス留学中の1961年には、作曲家の登竜門であるローマ大賞を受賞している。ローマ大賞受賞後、イタリアのメディチ荘へ短期留学を行い、課題制作で「Variations for Orchestra」を作曲し、RAI国立交響楽団によって初演されている。
アメリカ合衆国への帰国後は、ますますその活躍の幅を広げた。1965年にはユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団によって「Variations for Orchestra」がアメリカ初演、1966年にはピューリッツァー賞を受賞した。1976年には、アメリカ建国200周年を記念して、国家芸術財団とフィラデルフィア管弦楽団より、「Echoes from an Invisible World」が委嘱され、これまでに60回以上も演奏されている。1991年には、クーセヴィツキー音楽財団とデトロイト交響楽団から「Concerto for Orchestra」が委嘱され、ネーメ・ヤルヴィ指揮デトロイト交響楽団によって初演されている。
管弦楽のみならず、他の編成への作品提供も多く、協奏曲、吹奏楽、室内楽、独奏曲等、手がけた作品は多岐に渡る。サクソフォン関連の作品では、2000年にアメリカ音楽協会より「Concerto for Alto Saxophone」が委嘱され、サウスカロライナ州立大学教授のクリフォード・リーマンにより初演された。また、Chestnut Brass Co.からサクソフォンとピアノのための「Duo Concertante」が委嘱され、ローレンス大学教授のスティーヴン・ジョードハイムにより初演されている。
教育者としては、1952年から1991年までミシガン州立大学作曲科で教鞭をとっており、1970年から1988年までは、教授職にあった。また、ミシガン州立大学の電子音楽スタジオの創設にも関わるなど、特に現代音楽分野への功績が大きい。
アルトサクソフォンとピアノのための"Music for Saxophone and Piano"は、1967年の所産。2年後の1969年には改訂版が制作され、Christian Petersから出版されている。4つの楽章「Fast」「Slow」「Moderato」「Fast」からなる、およそ10分ほどの作品である。アメリカのサクソフォン界において、現代音楽演奏のパイオニアと評される、ミシガン州立大学サクソフォン科教授のドナルド・シンタに献呈されている。
ピアノの内部奏法に続いて、サクソフォンが大見得を切り、その後全編に渡って技巧的なフレーズが奏でられる。アルティシモ音域も駆使されたサクソフォンの華やかな旋律に耳が引き寄せられるが、むしろ聴きどころは緩徐楽章に現れる叙情的なメロディだろう。ピアノの高音域の打鍵と融合するサクソフォンの艶やかな響きは、バセットが管楽器大国のフランスで作曲を学んだことをよく示している。
0 件のコメント:
コメントを投稿