クリステル・ヨンソン Christer Johnssonと言えば、スウェーデンを代表するサクソフォン奏者の一人。史上最高のラーション「サクソフォン協奏曲」の録音(だと私は思っている)のひとつ、Capriceレーベルのラーション作品集への参加や、北欧を代表する現代音楽アンサンブルのひとつ、Ma Ensembleへの参加などが印象深い。また、ストックホルム王立音楽院で教鞭をとるなど、教育活動においても活躍している。
あまり録音がないのが残念なのだが、NMLを探索していたところ興味深い盤を発見した。ステファン・ウーデンハル Steffan Odenhallという作曲家の協奏曲作品集に、ヨンソン氏がクレジットされていたのだ。「Steffan Odenhall Two Concertos(Phono Suecia PS-CD156)」と題されたCDに、「The Fugitive: Concerto for Alto Saxophone」なるサクソフォン協奏曲が収録されている。
ウーデンハル氏もまた、スウェーデン出身の作曲家である。興味深いことに、キャリアの初期にはバンドでサクソフォンを吹いていたのだという。さらに、クラシック音楽のみならずジャズバンドなどのためにも曲を提供しており、きちんとしたジャズのバックグラウンドを持つ作曲家のようだ。
「…ということは、だいぶジャズ風の協奏曲なのかな?」という期待は、第1楽章で見事に裏切られる。ピアノの極小パルスから始まり、冒頭のテンポが楽章全体を支配する。点描的な印象は、いわゆる一般的な"現代音楽"に括られると言って良いだろう。ところが、第2楽章でまたまた予想を裏切られる。ほぼ全編にわたってまるきりジャズのバラード風の楽章なのだ。あまりベタベタではなく、クラシックの端正さを残したスッキリとした曲だ。第3楽章は、こちらはカデンツも挟みながら徐々に高揚していく現代的な響きの楽章。
クリステル・ヨンソン氏の演奏は、本当に素敵だ。なによりもまず、音色が良い。点描的な第1楽章でさえも、ひとつひとつの音が宝石のように輝くのである。第2楽章のメロディアスな響きも、第3楽章のテクニカルな旋律線も、その美しい響きのまま難なく吹きこなしている。現代のサクソフォンの中では、ある意味一番好きな音色…と言ってしまっても良いかもしれない。
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