ここ2、3日は論文書きで研究室にこもっていたため、更新できなかった。草稿は一応完成したので、久々に自宅でゆっくりしている。
さて、浜松市楽器博物館に先週注文したCDが到着。楽器博物館のコレクションの中から、アドルフ・サックスご本人の手によって作成されたサクソフォーンを使用して、四重奏とソロを録音してしまったというCD。「オリジナル・サクソフォーン 浜松市楽器博物館コレクションシリーズ12(LMCD-1836)」。先日井上麻子さんのブログ記事にて存在を知り、早速注文していたのだ。
・ピエルネ「昔の歌」(四重奏)
・マリー「金婚式」(ソプラノ)
・イタリア民謡「シチリアーナ」(アルト)
・シューベルト「アヴェ・マリア」(Cメロディ)
・クープラン「子守唄、またはゆりかごの中の愛」(テナー)
・フォーレ「夢のあとで」(バリトン)
・バッハ「G線上のアリア」(ソプラノ)
・ムソルグスキー/ラヴェル編「古城」(アルト)
・ドビュッシー「亜麻色の髪の乙女」(Cメロディ)
・サン=サーンス「白鳥」(テナー)
・グノー「アヴェ・マリア」(バリトン)
・サティ「ジムノペディ第一番」(ソプラノ)
・サティ「ジュ・トゥ・ヴ」(アルト)
・フロリオ「アレグロ・ドゥ・コンセール」(四重奏)
・グラズノフ「『カンツォーナ・ヴァリエ』より主題、第一変奏、第二変奏」(四重奏)
・ドビュッシー「小さな羊飼い」(四重奏)
・サンジュレ「四重奏曲第一番 全楽章」(四重奏)
・ドビュッシー「リトル・ニグロ」(四重奏)
井上麻子(1860年製ssax)、篠原康浩(1859年製asax)、中谷龍也(1859年製tsax)、飯森伸二(1860年製bsax, 1855年製Csax)、中野聡子(1874年製pf)
各楽器のソロ、そして四重奏。Cメロディというのは、テナー(B管)より一回り小さなC管サックスのこと。そこら辺に落ちているメロディの楽譜をそのまま読んで吹けるということで、昔は積極的に生産されていたが、今ではほとんど見られなくなってしまったものだ。
ピリオド楽器による録音と言えば、オランダのアルノ・ボーンカンプ Arno BORNKAMP氏によるCD「Adolphe Sax Revesited(Ottavo C50178)」が有名だが、四重奏を含むアルバムというのは、初めてじゃないだろうか。さすがにソプラノからバリトンまでを、オリジナルのサクソフォーンで揃えられるのは、楽器博物館の独壇場と言ったところか。
聴いてみると、実に素敵な響きだ!クラリネットの細い音色に、金属製の倍音を付加したような、現代のサクソフォンの大音量・豊かな音色とは明らかに一線を画すものだ。アンティーク調の家具のように、聴いて(見て)いるだけで、現代人の心を癒すような不思議な音色。表面上は古ぼけているけれど、アドルフ自身が目をキラキラさせながら、工房で一人サックスをいじっている様子すら思い起こさせる。
ところで、アドルフ・サックス自身が構想した、「木管楽器と金管楽器の音色を融合する」というサクソフォーン発明の本来の目的は、このピリオド楽器の響きでこそ成し得られるものではないのだろうか。
これ聴いてしまうと、サクソフォンの進化方向に疑問すら感じてしまいますな。ソロ楽器として確立されてきたのは良いけど、現代の楽器って本来の目的からは到底縁のない代物じゃないかな。アドルフ・サックスが、今のソロサックスの響きを聴いたら、どう思うのだろうか?「オー、そんなに"立つ"音を出したら、軍楽隊の中で目立ってしまうじゃないデスカ。ワタシはそんなつもりでサクソフォーンを作った訳ではアリマセーン」とか言うのかな。
かといって、サックスの音色がこのオリジナルのままだったら、と仮定した時、果たして世界中でここまでのポピュラリティを得ることが出来たか、と言われれば、それも違う気がする。時代が望む方向に楽器も変化しているのだ。
…と、話が逸れてしまった。今回のこの企画、演奏に関しては、かなり難儀があったようだが:前述の井上さんブログの記事や、CDの解説を見てみても、苦労話が多く書かれている…って、あれ?井上さんの記事、ちょっと書き換わっているなあ(^^;、大曲サンジュレやフロリオもかなり聴き応えのあるレベルで演奏されている。ヴィブラートを控えめにしているのは、意図的なものなのだろう(?)。
何はともあれ、幾多の苦難を乗り越えて、リリースに尽力した演奏者&企画者の皆様には拍手を送りたいところだ。ぜひ次は、グラズノフやムラエールト、サヴァリ全曲お願いします、なんて。
4月末からは一般発売もされるようだが、浜松市楽器博物館ミュージックショップ「アンダンテ(andante@itoshin.co.jp)」ではすでに発売中。しかも、少し安く買える。送料込みで、2360円也。
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