2007/03/11

ダニエル・ケンジーのミニアルバム

スーパーサックス吹き、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏のCD「Hot」と「Une couleur...」を2枚まとめてご紹介。ケンジー氏は自主レーベルNova Musicaを立ち上げており、これらのCDはそのレーベルからリリースされたオーケストラとの共演盤である。いずれも収録曲目は現代曲一曲のみの、ミニアルバムといった趣。

イタリアの作曲家、フランコ・ドナトーニ Franco Donatoniの傑作「Hot」の初演ライヴを収録したディスク。オーケストラ(というか、ほぼコンボバンド)は、ポール・メファノ Paul Mefano指揮のアンサンブル2e2m。

まず、曲が良い!どう聴いてもハイテンションなフリージャズに聴こえるのだ。ドナトーニいわく、「想像上のジャズ・ピース」だとのこと。編成からしてテナー/ソプラニーノサックス+Eb/Bbクラリネット+トランペット+テナーバストロンボーンに、ピアノ+コントラバス+パーカッションという編成で、そのままジャズのライヴハウスに行っても、何の違和感もないだろう。

序奏部分では、コントラバスとピアノのパルスにパーカッションが絡み、徐々に集中力の高い音空間が形成されていく。ブラスが薄くハモった上に、不安定に引き延ばされるテナーサクソフォン。続く中間部ではソプラニーノが使用され、技巧的なパッセージの応酬が聴かれる。最終部ではオーケストラが大炸裂!サクソフォンが導く上昇フレーズのリフは爽快そのもの。

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こちらは、スペインの作曲家、ルイ・デ=パブロ Luis de Pabloによる、オーケストラとソプラニーノ/ソプラノ/テナー/バリトン/コントラバス・サックスによる協奏曲が収録されたアルバム。バックを務めまするは、レムス・ジョルジェスク指揮ルーマニア国立オーケストラ。

Juan Larreaというスペインの詩人が書いた、フランス語の詩の一行一行からインスピレーションを受けて書かれた協奏曲だという。全部で楽章は5つに分かれており、コントラバス~テナー~ソプラノ~バリトン~ソプラニーノ他が順次楽章ごとに使用されていく。
1. une nuit encore plus triste que le papier buvard
2. le silence devient doucement festin d'oiseau
3. les fourmis trainent nos larmes de l'est a l'ouest
4. il s'en alla par transparence
5. ...sa tristesse assise au bord de siel comme un ange obse

これはもう、冒頭のオーケストラを従えたコントラバスサックスのソロから一気に飲み込まれてしまう。サックスで、ここまで圧倒的な音楽の「太さ」を表現することができるとは。第2楽章、疾走するテナーサックスのスラップと絡むオーケストラ、第3楽章の、「狂気」とでも表現したくなるような激しいソプラノサックス…など、普通では味わえない多彩な音世界が魅力的だ。

どちらのアルバムも、単純に「現代音楽」という範疇で捉えてしまうには惜しいほどの、有り余る内容の濃さを誇る。少々手に入れづらいが、これは手元に置いておいて損はないと思う。

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