2024/06/16

ギャルド四重奏団のデジタル復刻盤

 最近のストリーミングサービスには、LP時代の復刻が取り上げられていることも多い。録音年・元レーベル、復刻環境も何もわからず、アーティスト名(グループ名のみ)と曲名くらいしか掲載されていないのだが、それでも過去の貴重な録音を耳にできるのは良いことだ。

BnF collectionとしてフランスで出版されていた過去の盤の復刻が頻繁にアップロードされている。そのなかに、ギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団のミニアルバムがある。ライト・ミュージックというか、とても軽快でわかりやすく楽しい作品を、軽妙な、しかし往年の輝かしい音色で堪能することができる。

Vendanges a Madeira
Hot Cappuchino
Rainfall
Java pavene

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mYiSVxDRBsVYRk-cCheLmw_1CvUQ2fBUE&si=XNDipdBWVDDiJt4S


2024/06/09

Wayne Siegel "Jackdaw"

Wayne Siegelは、アメリカ・カリフォルニア州に生まれ、デンマークで活躍する作曲家。管弦楽曲からエレクトロニクス音楽まで、極めて広い分野の作品を手掛けている。現在はデンマーク王立オーフス音楽院の電子音楽学の教授。

「Jackdaw」は1995年、バスクラリネットとエレクトロニクスのために書かれた作品。バリトンサクソフォンで演奏されることがある。以下、作曲者自身の手によるプログラムノートを翻訳・掲載しておく。

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バスクラリネットとコンピュータのための「Jackdaw」は、デンマーク芸術評議会の資金援助を受けてハリー・スパルナイ Harry Sparnaayの委嘱により作曲され、デンマークのMusiana 95 festivalで初演されました。Jackdawはヨーロッパに生息する小型のカラスで、楽曲の特徴や多くの音は、この大胆かつ賢い鳥にインスピレーションを得ています。私は飼い慣らしたペットのJackdawを飼っており、完璧な条件下で鳥の声を録音することができました。コンピュータで再生される音の多くは、これらの録音をコンピュータで処理したものです。たとえば、バスクラリネットのフォルマントでフィルタリングしたJackdawの鳴き声や、Phase Vocoderを使用して元の長さの 10 倍に引き伸ばした鳥の長い鳴き声などです。また、コンピュータでサンプリングおよび処理されたバスクラリネットの音や、演奏中に楽器の音を変えるコンピュータ制御のライブ処理も使用されています。作曲が進むにつれて、私の予感は確証に変わりました。Jackdawとバスクラリネットは関連があるのです。

Jackdawは、ヨーロッパや南米で Harry Sparnaay によって広く演奏されてきました。バスクラリネットと CD、バリトンサックスと CD、テナートロンボーンと CD のバージョンも入手可能です。

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微温的というか、不思議なテンションを湛えた作品で、もっと人気が出ても良いと思うのだが、日本で誰かが演奏した、という話は聞いたことがない。Stephen Cottrell氏のアルバムに収録されている演奏が、非常に安定かつ作品の雰囲気にマッチしており、決定盤といえる。



2024/05/13

Fearful Symmetriesの演奏映像

ジョン・アダムスの「Fairful Symmetries」は、オーケストラの中にSAAB編成のサクソフォンカルテットやサンプラー(打楽器のパートはすべてサンプラーから発せられる)を含む特殊編成の作品。その演奏映像がいくつかYouTubeにアップされている。

昨日の記事でもご紹介したMarin Alsop指揮の映像。オーケストラはNDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧名:ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)。サクソフォンもしっかり映っている。

こちらは、オランダのNederlands Blazers Ensembleによる演奏。アレンジが入り、かつ一部を抜粋した演奏。グルーヴ感があり、ほとんどポップスの装いである。


2024/05/12

ウィーン放送響の「City Noir」

今年リリースされたばかりの、Marin Alsop指揮ウィーン放送交響楽団演奏の「City Noir」。これまで、ジョン・アダムス「City Noir」商用録音としては初演のLAフィルライヴ盤、初セッション録音のセントルイス交響楽団のものがあり、どちらも素晴らしい内容であったが、そこにまた一つ素晴らしい録音が追加された。

サクソフォンについてはクレジット記載が無い。ティモシー・マカリスター氏とは若干解釈が違うようにも感じるが、誰が吹いているのかは調べがつかなかった。

「Fearful Symmetries」には、サクソフォン四重奏がフィーチャーされている。アダムス氏は様々な作品でサクソフォンを活用しているが、この作品は知らなかった(John Sampen氏が、「Postmark」というトラックタイトルでソロアルバムに抜粋を吹き込んでいる)。こちらの作品は、お膝元のNonesuchからも1989年時点で録音がリリースされており、そちらの演奏も気になり始めているところ。


2024/05/06

アメリカの奏者の「シャコンヌ」四重奏版映像

不思議と(?)アメリカで流行している伊藤康英氏編曲のバッハ「シャコンヌ」サクソフォン四重奏版。Spiro Nicolas氏がアップしたこの動画、奏者名のみで団体名も書かれていないが、このアメリカの奏者たちによる演奏は、数あるYouTube上の動画の中でも、かなりハイレベルなものであると感じた。



2024/04/29

Quatuor de saxophones contemporainのアルバム

昨日の記事で、ジャック・シャルル氏に関連して話題に出したQuatuor de saxophones contemporain(Sop:Jacques Charles、Alt:Pierric Leman、Ten:Ghislain Mathiot、Bar:Max Jezouin)のアルバムを、多くのサブスクリプションサービスで聴くことができる。

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mGVDS9610zscIgpyWSNrtfnxN4D8v1KGU&si=54gG4Cn_KZGp4mRD

サンジュレ「四重奏曲第一番」、スカルラッティ「3つの小品」、ワイルの「三文オペラ」抜粋(しかも、ジョン・ハール氏のアレンジを使っている!)、ルジェ「オーブ・マリーン」という、古から現代まで満遍なく取り上げた内容。サンジュレは時々大味な響きなどもあり、あまり落ち着いて聴いていられなかったのだが、ワイルやルジェの作品は、良い意味で遠慮のなく、体当たりな演奏が楽しい。

録音年・出版年について、どこにも記載が無いが、エディット・ルジェ氏のページによれば、どうやら1984年とのこと

以下は、Discogsのページから引用したオリジナルジャケット。


2024/04/28

ベルノーのデュオ(J.P.バラグリオリとJ.シャルル)

ジャン=ピエール・バラグリオリ Jean Pierre Baraglioli氏と、ジャック・シャルル Jacques Charles氏という、フランス・サクソフォン界の大御所二人によるアラン・ベルノー「デュオ・ソナタ」の映像。映像にエフェクトもかかっている。

バラグリオリ氏は日本の方にもおなじみだが、ジャック・シャルル氏はピンとこない方も多いと思うので、簡単に経歴を。1975年にパリ国立高等音楽院のダニエル・デファイエ氏のクラスを卒業。同年、Quatuor de saxophones contemporainを結成し、同時代の作曲家の作品を数多く取り上げた(アルトにピエリック・ルマンが参加していた)。1976年より、Rochelle音楽院教授。その後、パリ区立15区ショパン音楽院教授を務めた。As.Sa.Fraの会長としても活躍した。

激烈に難しいこの作品だが、飄々と(バラグリオリ氏は実演・録音とも多く触れたことがあるが、いつ聴いてもこの雰囲気は崩れない)吹きこなしてしまう。楽譜の捉え方、アンサンブルの捉え方について、何かの境地を垣間見るようで、実に面白い。