2011/12/07

Daniel Kientzy "L'Art du Saxophone"

雲井雅人さんがpercussions-de-tamponのことについて書いてらっしゃったので、久々に引っ張り出して聴いている。(ある意味)世界最強のサクソフォン奏者、ダニエル・ケンジー Daniel Kientzy氏によるCD「L'Art du Saxophone(Nova Musica NMCD 5101)」。サクソフォンの見本市、とでも言えるようなCDで、録音当時開発されていなかったソプリロサックスやチューバックスを除く、ソプラニーノからコントラバスサックスまでのサクソフォン7種のデモンストレーションと、譜例付き(厚さ5mmのブックレット!)100の特殊奏法が、ケンジー氏自身の演奏で収録されている。

ケンジー氏はサクソフォンの特殊奏法に関する600ページ近くに及ぶ論文「SAXOLOGIE」を執筆しており、このCDはその論文を音として参照できるようにしたもの。現代奏法を一気に俯瞰するには大変良い内容であり、まず持っていて損はないだろう(ネタにもなりますよ笑)。このCDを入り口として、さらに深い演奏法を学ぶために「SAXOLOGIE」を購入して掘り下げる…という過程を容易に想像することができる。また、サクソフォン奏者のみならず、作曲家にとってもサクソフォンによる音響の可能性を知る、という意味でおすすめできる。

1. G.クルターグ「ブカレストの叔父を訪ねて(snsax, synthesizer)」
2. D.テルッギ「Xatys(ssax, mix)」
3. A.ヴィエルゥ「メタクサクス(asax, electronics)」
4. S.ニクレスク「カントス(tsax, orch)」
5. M.マルベ「ダニエル・ケンジー協奏曲(bsax, orch)」
6. C.ミエロヌ「Aksax(bssax)」
7. L.d.パブロ「Une couleur...(cbssax, orch)」
8. サクソフォンによる100の特殊奏法~譜例を交えながら

演奏のクオリティも尋常ならざるもので、ケンジー氏の気合の入った演奏を堪能することができる。一発目から、ソプラニーノ・サックスとシンセサイザーののオリエンタルな響きが聴こえてきてびっくりするのだが、じつは全て即興でした、とか。オーケストラに乗って吠えるコントラバス・サックスとか(こちらの作品は有名なので、聴いたことがある方も多いだろう)。とにかく息つく暇のない内容だ。

やはり圧巻は特殊奏法のトラックであり、ブックレットの譜例を見ながら追っていけば面白さ倍増。サクソフォンからこんな響きが!という新たな境地にも出会えることだろう。vandorenscores等から購入できる。

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