2007/08/07

ヴァカンス

Vandoren.comで通販しようとウェブサイトに行ってみたら、これですよ。あらら。そういえば、ヴァンドレンのリードやセルマーそのほかフランス製のサックスも、ヴァカンス時期になると、とたんに入荷が鈍くなると聞く。

こちらからすればもちろん不便ではあるのだが、なんだか大らかでいいなあ。こういう土壌でなければ、ダマーズの「ヴァカンス」というタイトル(名付け親はフルモー氏)は生まれ得なかったのではないかな、と思う今日この頃。

2007/08/05

吹奏楽コンクールを聴きながら

今日は、後輩たちが出場している吹奏楽コンクール茨城県大会を聴きに行ってきた。途中で出てきてしまったが、結果はどうだったんだろう。各団体の評をザクザクと書いてもいいのだが(良くないって)、ちょっと視点を変えて、特に、課題曲・自由曲に関して思ったこと。

端的に言ってしまえば、変な作品の連続だなあ…と。課題曲は、うーん「マーチの年ならばこんなもんかなあ(--;」と感じた曲すら、一つしかなかった…。自由曲は「起承転結のドラマがあって」+「打楽がド派手で」+「最後がフォルテシモの伸ばしで終わる」という3つの条件を満たすワンパターンさに、途中から飽き飽き。どこがどう曲に結びついているのかわからない、タイトルの意味不明さも然り。

ところどころで聴けたアルフレッド・リード博士の作品は、混沌としたプログラムなかの、まさにオアシスのようだった。この上なく単純で、明晰、しかし深い音楽。中橋愛生氏の作品は、複雑な構造の中に才気が見られて、興味深い作品だと思った…一般的なバンドでは取り上げづらいほどの難易度の高さではあったが。

この吹奏楽分野における現代音楽(ここでは"同時代の作品"という意味で使う)は、吹奏楽連盟のコンクールのおかげで大変な隆盛を誇っている。演奏者・作曲者・聴衆の間で、強力な循環が生まれ、毎年の次々の新作の発表、初演・再演が繰り返されているのだ。クラシックにおける現代作品が商業的に成功しているのって、たとえばクラシックのほかの分野…オーケストラや室内楽では考えられないことではないか。

こういった正の側面だけを見ると、確かにある意味すべてが上手くいっているようにも見えるが、一方で功罪もあるということだ。音楽的に優れた内容の作品が無視されて、演奏効果が高くて内容の無い作品ばかりがプログラムに名を連ねるという状況…。コンクールという場で勝つためには、仕方のないことのなのか?

ここまで書いたことは、すでにコンクールに対する批判の一つとして一般的なものとなりつつある(たぶん)。

…自由曲を、選択性にしたらどうだろう。研究家・評論家が選ぶ音楽的に優れた作品を20~30作品収集して、そこから選ばせるというのは?その時点ですでに自由曲ではないが、実現したら面白そうだ。課題曲は、残念ながら「新作を課題曲とする」という現状を維持してもらうしかない。それがないと、吹奏楽連盟は運営していけないだろうから。ただ、もうちょっとマシな曲が提出されてきていると思うのだが…一体全体どんな選び方をしているんだろう。

と、めずらしく批判一直線で書いてみた。なんにせよ、今のまま中身が空っぽの音楽ばかりをやっていれば、演奏者たちにとってはつまらないし、聴くほうもつまらないし、クラシック界から見たとき吹奏楽というジャンルの地位が上がることはない…のだろう。

2007/08/04

サクソフォーン協会会報が到着

京青さんがブログでも触れられていたが、サクソフォーン協会会報「Saxophonist」第19号が到着。年末のサクソフォーンフェスティバルで、余りを手に入れることはあったが、(私が協会に加入したのは今年のことなので)最新の会報をリアルタイムで受け取るのは初めてのこと。

これでVol.17, 18, 19が手元にあることになるのだが…毎度のことながら、ものすごーく内容が濃いんですよ。「う~ん」と唸ってしまうくらい。目次を以下に挙げておこう(著者の敬称略)。

・大石将紀 - 研究論文「クリスチャン・ロバ」
・安井寛絵 - パリ留学日記
・ルマリエ千春 - パリからの情報便
・貝沼拓実 - 第4回アドルフ・サックス国際コンクール回想記
・石渡悠史 - 第14回ワールドサクソフォンコングレス
・林田祐和 - 2006年クロアチア・ザグレブ演奏会終了報告
・有村純親 - サクソフォーン特殊奏法講座(前編)

・滝上典彦 - 第26回サクソフォーンフェスティバル報告
・波多江史郎 - ジュニアサクソフォーンコンクールレポート
・板倉康明 - サクソフォーンと室内アンサンブルのための音楽的価値
・服部吉之 - 第4回サクソフォーン新人演奏会報告
・服部吉之 - 音大生によるサクソフォーン四重奏の夕べ2007報告
・大城正司 - 第4回アンサンブル・コンクール
・長瀬敏和 - 大阪支部第16回サクソフォーンフェスティバル報告
・コラム - 町工場から響くサックス
・コラム - カルテットが2つデビュー

巻頭カラー写真付(貝沼さんのディナン写真とか、プロスト氏&ララン氏ソロのサックスラージ版のヴィヴァルディ"四季"演奏風景とか、いろいろ)、実に全80ページ。ありがたいと思うと同時に、私のようないちアマチュアにとっては、なんだか勿体無いとすら思ってしまうほどだ。なかなか消化に時間がかかるが、ゆっくり読み進めていこうと思う。

どの記事も面白いのだが、ちょっとしたケイロの違いを興味深く感じたのが板倉氏の記事。この方はサクソフォーン奏者ではなく、現代音楽専門集団:東京シンフォニエッタの指揮者であり、またクラリネット奏者としても著名な方。昨年のフェスティバルにおけるメインで演奏された作品(カプレ、コンスタン、ドナトーニ、ディアナ・ロタル、ミヨー)に関して言及しているのだが、外部からサックス界のレパートリーを俯瞰したときの、冷静な評が面白い。

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そういえば、今年のサクソフォーンフェスティバルの概観が決まりつつあるとの旨がお知らせとして入っていたが、目を遣ると…「23日(日)は、ライブエレクトロニクスとSaxのコラボレーション…」って、えー!!こ、これは本当に実現してしまうのであれば、個人的にとても楽しみですなあ(笑)。やはりU氏あたりが一枚噛んでいるのだろうか。フェスティバルはここ3年連続で聴いているが、毎回毎回の魅力的なプログラムが楽しい。

そのほか、「アドルフ・サックスが作ったヴィンテージ楽器の魅力に迫る企画」「フェスティバルオケとソロSaxのコンチェルト」等々。22日(土)は、アマチュアの演奏企画もあるそうで、こちらもぜひ参加してみたい。

2007/08/03

ブートリー「ディヴェルティメント」 オケ版 on YouTube

ロジェ・ブートリー Roger Boutry氏が作曲した「ディヴェルティメント Divertimento」オーケストラ版の演奏映像。演奏はDavid Matthies指揮ミシガン州立大学オーケストラ。サクソフォーンソリストは…誰だろう。

指揮者ご自身によるアップロードであるため、指揮者を映す形でカメラアングルが固定されているのがやや残念。演奏は、ちょっと苦しいところがあるもののまずまず(サックスを吹いているのも、学生なのだろうか)。

オーケストラ伴奏のバージョンって、実は初めて聴いたのだが(CDはたった一枚だけ出ているのだが、ずっと探し続けて見つからない)、なかなか魅力的。ふと飛び出す旋律が、ヴァイオリンのソロになっていたりして、とっても新鮮。アドルフ・サックス国際コンクールでアレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏が本選で演奏&優勝したという録音、聴いてみたいなあ。

2007/08/02

Daniel Kientzy「L'art du saxophone」

まだブログに移行する前のことだが、このCDについて触れたことが少しあったっけ。ダニエル・ケンジー氏の「L'art du saxophone(Nova Musica NMCD 5101)」。

ケンジー氏と言えば、このブログでも度々話題として取り上げる、フランス出身の現代音楽専門サクソフォーン奏者。サクソフォーン作品の新作の委嘱・初演にかける情熱は並々ならぬものがあり、世界中の作曲家から300作品以上の献呈を受け、これまでにレコーディングしたアルバムは72枚…等々、ある意味世界でもっともアクティブなサクソフォニストとも言えるだろう。

本アルバム「L'art du saxophone」は、ケンジー氏が主宰するNova Musicaから出版されたブックレット付のアルバム。見てのとおりの鮮烈な印象を残すジャケット(赤地に金文字!)だが、中身も外見に劣らず強烈。最初の7トラックには、それぞれソプラニーノからコントラバスまでの7種のサクソフォン・ソロ曲の抜粋録音が収録され、続いて、7種のサクソフォンを使いながら、100種類に及ぶサックスの特殊奏法(!)をレクチュアしたトラックが続く、というもの。さらに120ページに及ぶブックレットには、ソロ曲のソロパート譜と、特殊奏法の譜例+英語/フランス語による簡単な説明が書かれている。

1. クルターグ「ブカレストの叔父を訪ねて(snsax, synthesizer)」
2. テルッギ「Xatys(ssax, mix)」
3. ヴィエルゥ「メタクサクス(asax, electronics)」
4. ニクレスク「カントス(tsax, orch)」
5. マルベ「ダニエル・ケンジー協奏曲(bsax, orch)」
6. ミエレアヌ「Aksax(bssax)」
7. デ・パブロ「Une couleur...(cbssax, orch)」
8. サクソフォンによる100の特殊奏法~譜例を交えながら

ソプラニーノサックスやコントラバスサックスのソロ音を聴くことができるのも、実は結構珍しいのではないか?デ・パブロのコントラバスサックス協奏曲なんて、思わず笑っちゃうくらい凄い(ゴォーッと、とにかく凄い音がする!)。これらのサックスの音を、各楽器の標準的な音と捉えるのはどうかなあ、一歩間違えれば、ほとんどネタの世界だ。

サクソフォンの特殊奏法は、次々現れる奇抜な音に、爆笑の連続間違いなし。普通の音から、いくつもの繊細なアーティキュレーション(スタッカート一つとっても、さまざまな種類があるのだ!)、リードを打楽器的に鳴らすもの、マウスピースのみでの発音、声を使った発音、マウスピースを外した状態での発音~トランペット的な鳴らし方と、フルート的な鳴らし方に分別される~、2本同時に吹く、等々。まあ、実際手にとって見ていただくのが良いだろう。

サクソフォンの楽器の特性・特殊奏法を体系的に解説したメディアって、意外と存在しないため、現代作品の演奏・作曲には欠かせない資料だと思う。やや手に入れづらいのが難点だが、現代音楽におけるサクソフォンに興味がある向きには、ぜひ探してみることをオススメ。

2007/08/01

編曲譜の音出し

夏休み最後の四重奏練習。週末にサクソフォーン四重奏用に編曲したモーリス・ラヴェルの「弦楽四重奏曲ヘ長調」から第1楽章、第2楽章、第4楽章を音だし。第3楽章は、時間がなくて編曲には着手していない。

ちなみに、第1楽章のスコアは、こんな感じ(ド素人の仕事なので、やや公開は恥ずかしい)。アーティキュレーションとダイナミクスに関して不完全であるため、しばらくしたら消します。楽譜をきちんと整備して、いつか全楽章公開できたら良いなあ。
http://www.geocities.jp/kuri_saxo/notes/ravel.html

第1楽章の冒頭は、ソプラノサクソフォン=第1ヴァイオリンの牧歌的なテーマと伴奏の上昇音形が交錯する、単旋律の美しいフレーズ。意外にも!管楽器で吹いても違和感がないのが面白かった。むしろ、より素朴さが強調されて魅力が増しているようにも感じる。さすがに16分音符で動く部分は、弦楽器のほうが良さそうだ。サックスだと指使いがかなり難しくなってしまう上、音質も繋がらない。

原調で編曲してしまったので、全ての楽器がフラジオ連発になってしまう。調は変えたくないので、適宜オクターブ下げよう…どこぞのCDみたいに、全てフラジオなんて、無理。

第2楽章、第4楽章は、初見ではほとんど無理だった。拍子がコロコロ変わって取り辛いので、無理もない。

高橋悠治作品の楽譜

高橋悠治氏は、いわずと知れた日本を代表するピアニスト・作曲家。ベルリンでクセナキスに協力し、帰国後はやや音楽集団「水牛集団」を結成するなど話題を呼んだ。現代音楽への(演奏・作曲両面からの)積極的アプローチ、数々の著作の発表(特に政治に絡んだものが多い)、など、ほかの日本の作曲家とは一線を画すユニークな活動を続けている。右的発言をまったく厭わないその姿は、ちょっと驚くほどのものもあり。

その高橋氏、2006年にサクソフォン奏者の栃尾克樹との作曲・ピアノでの共演をしている。シューマンやフォーレの作品でピアノを弾いたほか、シューベルトの歌曲「民衆に訴える」のバリトンサックス+ピアノ版への編曲、そして栃尾氏からの委嘱作品「影の庭」の作曲も行った。私自身は聴きに行けず悔しい思いをしたのだが、大学の知人から話を聞くに、なかなかすばらしいリサイタルだったようだ。

最近では、マイスター・ミュージックから「影の庭」としてアルバムが発売され、その2006年のリサイタルを思い起こさせるようなプログラムをCDで聴くことができるようになったのがうれしいところ。…買わなきゃ!

で、本題。高橋悠治氏の作品、自身のサイトでほとんどの作品の楽譜が公開されているのだが、バリトンサックスのための「民衆に訴える」「影の庭」も、ご多分に漏れずしっかりとリストにあがっているのだ。下記URLから、[japanese]→[作品・楽譜]と辿ることで、PDFファイルをダウンロードできるサイトに飛ぶことができる。

http://www.suigyu.com/yuji/

ここでは「影の庭」楽譜に記された序文を引用しておこう:

旋律素材はマーラーの「少年の不思議な角笛」より
「この世の暮らし」そのほかの
飢えた子供、政治犯、死んだ兵士の歌

沈黙を聴く
周りの音を意識する
区切り、強弱、音色のしなやかな変化

栃尾克樹の委嘱による

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というように、テーマとしてはかなりに民衆寄りな意味合いをもつ作品だが、音楽として純粋に見ると、大変に面白いものとなっている。楽譜が公開されていることもあって、これから演奏機会が増えれば良いなあ、と。

ちなみにピアニストとしての高橋悠治氏は、以下のYouTubeのムービーを観ていただくのが良いかと。クセナキス「ヘルマ」の演奏映像(強烈!!)。実はまだ生で聴いたことがないので、いつかコンサートに行ってみたいと思いつつ、先延ばしになっている。

http://www.youtube.com/watch?v=fKu4MJNbsfI