2016/11/29

SWR Musicよりデファイエ氏の復刻録音

以前からFacebook等で話題になっている録音でおり、今更な感じもあるが、備忘録のためにここにも書いておく。

SWR Musicという南西ドイツ放送局が運営するレーベルより、ダニエル・デファイエ氏の1950年代~1960年代の復刻(放送用?)録音が、おそらくインターネット配信限定でリリースされている。SWR Musicは、"Classic Archive"というシリーズで、自社が保有する歴史的録音をリリースしまくっている。多くは南西ドイツ放送交響楽団の録音で、特にサクソフォン的な意味では着目していなかったのだが、突然のリリース。しかも、驚くべき内容、サクソフォン界にとって重要なものと言えるだろう。

すべてバーデンバーデンの放送局のスタジオで録音されたものであるとのこと。チェレプニン、パスカル、クレストンといった同じみのレパートリーに加え、トレビンスキー、マルテッリという珍しい作品も並ぶ。デファイエ氏が30代から40代だった頃、演奏家としてすでに評価は確立しており、ミュール氏の後継として飛ぶ鳥を落とす勢いであった、まさにその頃の録音ということになるだろうか。まず録音状態が非常に良い!そして、デファイエ氏独特の美しい節回しやヴィブラートを、どの曲においても堪能することができる…この頃にはすでに氏の演奏スタイルは完成されていたということだろう。

クレストンの録音は1980年代の日本での録音があるし、パスカルはCrestレーベルに収録されているし…と思ってはいけない。この感性というか、みずみずしさはこの録音ならではであろう。デファイエ氏のファンならずとも、必聴に値する内容だ。

20th Century Music for Saxophone and Piano(SWR Music SWR10331)

A.Tcherepnin - Sonatine sportive
C.Pascal - Sonatine
10 October 1958, Musikstudio, Baden-Baden, Germany

A.Trebinsky - Saxophone sonatine
15 September 1959, Musikstudio, Baden-Baden, Germany

H.Martelli - 3 Esquisses
20 April 1963, Studio 5, Hans-Rosbaud-Studio, Südwestfunk, Baden-Baden, Germany

P.Creston - Sonata
15 September 1959, Hans-Rosbaud-Studio, Musikstudio, Südwestfunk, Baden-Baden, Germany

ぱっと調べた限りだが、Naxos Music Library、Google Play Music、iTunesで聴くことができる。
http://ml.naxos.jp/album/SWR10331
https://play.google.com/music/m/Brmu3kvar6bivojfsp7opymmtvm?t=20th_Century_Music_for_Saxophone__Piano_-_
https://itunes.apple.com/jp/album/20th-century-music-for-saxophone/id1131279933

2016/11/28

ミュール四重奏SP復刻盤の準備

マルセル・ミュール氏がソプラノ奏者を務めた四重奏団…ギャルド・レピュブリケーヌ四重奏団、パリ四重奏団時代の、SP復刻盤の準備がようやく最終段階を迎えている。この盤は、木下直人さんが所有するSP盤を、ピエール・クレマンのターンテーブル、カートリッジを使って復刻したもの。先日独奏編がグリーンドア音楽出版より発売されたばかりだが、その四重奏編となる。

私は、解説書きと盤チェック等を担当した。諸事情により進捗がノロノロになってしまい、木下さんには迷惑をかけてしまったが、ようやく終えることができて一安心。

日曜日には、最終マスタのコピーが到着し、一通り聴くことができた。復刻の素晴らしさは筆舌に尽くしがたい。これまでの復刻において、ときには平面的にも聴こえていたモノラルSPが、驚くほどの立体感を持って迫ってくる。SPに真の実力を発揮させる復刻、ということだろう。発売は来年早々だと思う。乞うご期待。

2016/11/26

第8回サクソフォン交流会 in 長野 募集要項公開

2017年5月20日に、長野県長野市にて開催される「第8回サクソフォン交流会 in 長野」。アンサンブル団体の募集要項が公開された。参加条件等については、特に例年と大きな変化はない。

https://sites.google.com/site/saxkouryukai/


募集は12月11日の22:00から12月31日の22:00まで。多くの皆様の参加をお待ちしております。

2016/11/23

スマートフォンの機種変更

スマートフォンを機種変更。携帯を初めて持って以来、SANYO→SANYO→Sony Ericsson(re)→SHARP(IS05)→HTC(J One)と乗り換えてきたのだが、3年4ヶ月連れ添ったHTC製機種と別れ、Huaweiのhonor 8を購入した。

ざっくりとした仕様は、Kirin950 Octa-Core CPU、LPDDR4 4GB RAM、32GB eMMC、12MP dual cam、5.2inch 1920x1080 IPS disp、3000mAh Battery、145.5x71x7.45 Size、153g、Android 6.0といったところ。ゲームはほぼやらないので、ハイスペックは不要。Android機の中で、価格はソコソコ(30000円前後)で普段使い向けに手堅い性能を持つ機種…というところで絞り込み、決定した。国内では楽天モバイルSIMとの組み合わせ限定販売ということで、最安値のデータSIMとともに購入した。楽天モバイルSIMは解約する予定。実運用は、mineoのDプラン。

届いて手に取って驚いたのは、デザイン性の高さと作りの丁寧さ。一昔前の「中国製」という言葉が醸し出す印象を感じさせない、一流の"モノ"。そもそも、かのアップルだって、製造を請け負ってるのは鴻海の中国拠点なのだから、もはや中国だから云々というのは、品質が低い理由にはならない時代なのだなと感じた。このようなものを低コストで作られてしまうと、日本は大変だ…。

デザインも見事。同社の端末は、近年マチュー・ルアヌール氏(世界的な工業デザイナーのひとり)をチーフに迎えて以来一気に洗練されたが、特に背面の美しさは特筆すべきである。多層構造から生み出される光の綾が面白い。ブルー、ホワイト、ゴールドの3色展開からホワイトを選んだのだが、抑制の取れた美しさに、センスを感じる。

一週間ほど使ってみたが、使い心地も上々。EMUIというiOS風味ランチャーの上で、各種アプリがサクサク動く。特に、4GBというメモリの多さが効いていることだろう。Antutuベンチマークも90000点台と、非常に優秀だ。ゲーム等重いアプリの動作は…普段ゲームしないので分からないが、どうかなあ。3D性能はそれなり、というレビューは目にすることがあるのだが。

また、本機種ならではの機能として感心した事を2点ほど挙げておきたい。一つ目は指紋認証の素早さ。センサーをなぞる等の操作は要らず、指を触れた置いた瞬間に一瞬で解除される。他の端末の指紋認証センサーも使ったことがあるのだが、段違いの精度と速度だ。二つ目は、デュアルカメラの面白さ。カラーとモノクロ、2種のセンサーを積んでいるとのこと。これを使って、普段の写真ではモノクロセンサーの光量情報を上手く使って色彩感を補正した美しい写真が撮れるのだ。また、視差情報とコンピューテーショナル・イメージングを組み合わせ、撮影後に、擬似的にピント位置/写界深度調整できるというカメラ機能には、驚かされた。調整次第ではかなり自然な(大口径レンズで撮影した風の)画を得ることができる。

スピーカーに関しては、以前利用していた機種が良くできすぎていた(フロントステレオスピーカー搭載)ので、モノラルということでちょっと比べ物にならないかな。これは仕方がない。

総じて満足度の高い端末だ。Android 7.0へのアップデートも来年1月ころに予定されているとのこと。長く使っていきたい。

2016/11/06

Mirasol Quartet plays "Chaconne (伊藤康英編)"

Mirasol Quartetというアメリカのサクソフォン四重奏団が、伊藤康英先生編曲のバッハ「シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番より)」を演奏している動画を見つけた。同四重奏団は、テキサス工科大学出身のサクソフォン奏者によって結成された団体である。

日本ではこの編曲の素晴らしさが知られてきて、委嘱者である雲井雅人サックス四重奏団以外にも、少しずつプロフェッショナルの四重奏団が取り上げる機会が増えてきている。だいぶ前からこの編曲を推しまくっていた身としては、とても嬉しいことだ。しかし、アメリカでもこうやって演奏されているとは知らなかった。ずっと前に(誰だったか忘れたが)アメリカの奏者から「バロック系の良い編曲何か知っていない?」と訊かれたことがあって、そのときにこの編曲を勧めたことを思い出した。



動画の説明には編曲者についての説明がなく、今まで検索等で引っかからず気付かなかったのだが、これは間違いなく伊藤康英先生の編曲である(偶然見つけた)。とてもレベルが高い演奏。各箇所の組み立て方のみならず、全体の構成もかなりしっかりしており、聴き手を惹きつける演奏だと思う。

プロフィールムービー作り

妹の結婚式に際して、プロフィールムービー(小さい頃から今までの写真を見せていくムービー)の制作を担当した。

某J-POPのBGMを、Audacityを使ってカット、前奏部分+1番or2番など希望部分を違和感のないように接続。写真は必要分をIrfanViewで色調補正。最後、Vegas Pro 13に素材を取り込んで、テロップやエフェクト等を組み込んだ。プロフェッショナル用途で使われることもある動画編集ソフト、Vegas Pro 13は、今回のために購入(セールで4000円くらいだった)したのだが、Windows標準のムービーメーカーよりも高機能、かつ自由度が高く、非常にサクサクした使い心地も相まって、快適に制作をすすめることができた。フレーミング、エフェクトやトランジションの豊富さは、さすがハイアマチュア~プロフェッショナル向けのソフトウェア、といったところ。

できあがったものは、まあ素人仕事なので見栄えがそんなに良いわけではないのだが、気持ちがこもったものにはなったかなあ。

妹の結婚式

妻とともに金曜から長野入りし、11/5は松本市にて妹の結婚式に参列。良い天気に恵まれ、とても良い式となった。

久々に親戚一同が集う久々の機会であったが、皆元気そうで良かった。

2016/11/03

Proxima Centauri - M.B.Charrier & H.Sakaguchi マスタークラス&ミニコンサート

11/5の演奏会は別件で伺えないのだが、本日こちらの演奏会を聴くことができた。今回の来日中、聴くことは叶わないと思っていただけに嬉しく、また期待以上の内容だった!

【Proxima Centauri - Marie Bernadette Charrier & Hiromi Sakaguchi マスタークラス&ミニコンサート】
出演:マリー=ベルナデット・シャリエ(sax)、坂口裕美(pf)
日時:2016年11月5日(土)マスタークラス13:00開演 ミニコンサート15:00開演
会場:洗足学園音楽大学シルバーマウンテン1F
プログラム:
Hans-Joachim Hespos - Ikas
Philippe Hurel - Bacasax
鈴木治行 - 隔世遺伝
François Rossé - Erde-Edo
小櫻秀樹 - 私はボルドーのサックス奏者だ!
François Rossé - Fuku Yama

マスタークラスは、デニゾフ「ソナタ」と増田悦郎「PAIN II(本日のマスタークラスのために準備された新作)」。デニゾフでの受講者は荒木真寛氏(asax)と中村真幸氏(pf)、増田作品での受講者は藏戸里沙氏(sax)と森嶋奏帆氏(pf)。マスタークラスの内容は別記事に譲るが、かなり細かい部分まで突っ込んだ、充実した内容のマスタークラスだった。デニゾフは、楽譜に書いている内容を丁寧に読み解き、その各箇所に適した演奏法を、様々なバックグラウンドにもとづいて指摘・改善させるというもの。増田作品は、作曲者臨席のもと、作品の意図する内容を引き出しながら、適切な表現を行うためのテクニックや表現法を中心にアドバイスする、というものだった。

いずれの受講者もかなりしっかりと準備してあり、最初の通し演奏もかなりレベルが高かったのだが、さらに突っ込んだ指摘が飛んでいた。本日のマスタークラスを聴いて、ボルドー音楽院で学んでみたい、と思った方も多いのではないかな。それだけ、濃くて充実した内容だった。シャリエ氏が模範で吹く短いフレーズも、無限のバリエーションの表現が聴こえてきて、かつ各箇所の楽想にピタリと当てはまるものであった。

ミニコンサートも凄かった。今回は、アルト、テナー、バリトンの3種類を繰っての演奏会。テアトル的な雰囲気を持つ「Ikas」、シェルシ作品か、スペクトル楽派の作品のような雰囲気を持つ「Bacasax」、ここまで2つほど短い作品で、一気に会場の度肝を抜いた。続く鈴木氏の作品では、テナーとピアノが12音的なリフをひたすらに繰り返す(ピアノも凄く良く弾く方で、キャスリーン・グッドソン氏の快刀乱舞っぷりを思い出した)。

ピアノソロで演奏されたロセ作品「Erde-Edo」や「私はボルドーのサックス奏者だ!」は、聴き手の頭がついていかないほどの響きやシーンの変化があり、しかし演奏者は高い集中力で見事に楽曲の持つパワーを表現していた。この2人のために書かれたという「Fuku Yama」での、驚異的なアンサンブルの然り。シャリエ氏、坂口氏の底知れぬ技術力、アンサンブル能力、ソルフェージュ能力を思い知らされたのだった。

いやあ、本当に聴けてよかったなあ!

演奏会情報:シャリエ氏、来日

上田卓さんよりご案内いただいた演奏会/レクチャーをご紹介。

ボルドー音楽院教授のマリー=ベルナデット・シャリエ Marie-Bernadette Charrier氏。多種多様なフランスの現代サクソフォン界の中にあって、ロンデックス氏が開拓した現代サクソフォン分野をさらに発展させ続けている奏者・教育者。独奏分野はもちろんのこと、プロクシマ・ケンタウリ(ソントリ)での、室内楽分野での活動実績も多い。ナント音楽院、ならびにボルドー音楽院で、サクソフォン、バソン、室内楽、音楽理論、アナリーゼ、音楽史、和声、対位法を学んだ。国際的に演奏活動を展開する他、室内楽団のプロクシマ・ケンタウリでは芸術監督を務めている。

上記のように凄まじい経歴を持つのだが、平たく言えば…バリトンサクソフォンを操って現代音楽をバリバリ吹きまくる女性奏者、といったイメージ。とにかくカッコイイと思う。アラやロセやアヴェルなど、ボルドー一派の作品は、なかなかクセのあるものが多いのだが、そんな難しさなど微塵も感じさせない、求道者のような演奏が魅力的である。

実際の演奏姿は、フランスのストラスブール開かれたコングレスにて拝見した。Bernhard Lang「DW 24(独奏:Lars Mlekusch)」という独奏サクソフォン+室内楽バックという作品の室内楽パートを、プロクシマ・ケンタウリが務めていたのだが、その中でソプラノ、テナー、バリトンを繰り、独奏とほぼ同じくらいの音符をガンガン並べていたのが、まさにシャリエ氏だったのだ。鬼気迫るという感じ…うっかり独奏よりも注目してしまったほどだったのだ。

そのシャリエ氏が来日する。北京での現代音楽フェスに合わせて、今回の来日が実現したそうだ。前回来日は(おそらく)2004年。静岡芸術文化大学で開催されたNIME(音楽・芸術表現のための新インタフェースの国際会議)のために来日したのを機に、アクタスにてマスタークラスと公演を行った。若き日の小山弦太郎さん(受講曲はロバ「Jungle」「Balafon」)や、大栗司麻さんと貝沼拓実さんのデュオ(受講曲はロバ「Adria」)が、シャリエ氏にマスタークラスを受けている様子、並びに楽曲解説とコンサートについて、サクソフォニストVol.17にて報告されている。この時も、上田卓さんが通訳と司会を務められていた。

今回は、ピアニストの坂口裕美氏との共演となる。作品としても面白そうなものが多く、注目の演奏会である。

コンサート後は、場所を変え、JMLの「現代音楽アンサンブルの運営、継続の作法~Proxima Centauriの活動について~」と題されたレクチャーも開かれるそうだ@JML音楽研究所。

【プロクシマ・センタウリ来日旋風2016】
出演:マリー=ベルナデット・シャリエ(sax)、坂口裕美(pf)
日時:2016年11月5日(土)14:00開演
会場:衎芸館(荻窪駅)
プログラム:
Hans Joachim Hespos - Ikas
Francois Rosse - EDO & Erde
鈴木治行 - 隔世遺伝(初演)
Thierry Alla - Parietal
小櫻秀樹 - 私はボルドーのサックス奏者だ!(初演)
渡辺俊哉 - 色彩配合(初演)
Francois Rosse - Fuku Yama

ちなみに、11/3には洗足学園音楽大学にて、大学関係者向けのマスタークラスならびにミニコンサートも開かれるとのこと。




2016/11/01

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般後半の部の感想

昼~夕刻の、"後半の部"の感想。

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 14:00開演
会場:金沢歌劇座

・Pastorale Symphonic Band
課題曲は管楽アンサンブル的な響き。個々の奏者のハッキリした鳴りが印象深い。フルートパートがよく響いている。金管の音の処理が少し雑だったかと。自由曲は、和のテイストを感じるテクニカルな作品。フルートのトップ奏者が大活躍(演奏会だったら終わった瞬間に真っ先に立たされるだろう)。そして何より、瀬尾氏のタクトの、バンドの引っ張り上げが凄まじい。

・J.S.B.吹奏楽団
バンドの全体として響きやフレーズを捉えている印象がある。バンドとしての響きはかなり形作られているが、セクションワークやパートが時折聴こえてこず、やや焦点がぼやけるときがあった。自由曲のリスト作品のアレンジ(田村文生氏による)は初めて聴いたが、とても面白かった。やはり、全体の音作りを大切にしている、という印象を受けるサウンドだった。

・大津シンフォニックバンド
課題曲はそつなく丁寧に、という感じがした。ほとんど隙が見られない。自由曲として取り上げられていた作品、初めて聴いたがとても不思議な音世界を堪能した鉄塊?を打つ金槌、ソロ楽器が大見得を切ったり(各ソロ奏者ブラボーでした)、瞬間瞬間の面白さがありながら、演奏は全体の構成感の構築にも力を入れているように聴こえた。"計画性"という言葉が頭に思い浮かんだ。

・川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団
課題曲は、一見無意味な楽曲の各フレーズ間の連携を引き出すような演奏。全体の構成を持たせることにも成功している。自由曲では、パワーと繊細さの両面を持つバンドだ、ということが良く表現されていたと思う。指揮に対するバンドの反応の良さ、追従性が凄まじい。福本氏の指揮はこれまで様々な場面で何度も拝見しているが、やはり才気があるというか、この方は天才なのだなあと思う。

・鏡野吹奏楽団
私用により席を外していたため聴けず。

・横浜ブラスオルケスター
課題曲のテンポが速い。どうしたんだろう?後半部分との対比はそれなりに付いていたが、原曲の雰囲気を損ないかねないほどのスピードだった。自由曲は凄まじかった。指揮の近藤久敦氏自身の編曲によるマーラー。2台ティンパニ、ハープ、ハンマー、チェレスタ…等のフル装備。ダイナミクスとパワー、場面転換の鮮烈さで一気に聴かせてしまった。とにかく気合いの凝縮っぷりが恐ろしいくらい。

・百萬石ウィンドオーケストラ
課題曲は、きちんと全員で音を重ねているのが良いですね(笑)。少し粗さはあったが、素朴で良い演奏だった。自由曲のグランサムの作品は、吹奏楽のための音のショウピースみたいな感じ。コントラバスはピアノトリオのごとく中央でドラムス?と一緒に弾いているし、ビートが目まぐるしく変化しすぎてついていけないし、音列主体のおどろおどろしい感じで進むと思いきや突然フルートが甘いメロディを奏で始めるし、突然チューバが舞台前方でスタンドプレイしたと思いきや、ユーフォが加わり、さらにバリトンサクソフォンがという、人を喰ったようなソリ部分もあるし…etc。最後のコンバスくるくるはびっくりした。2回転くらいしたかなあ。

・ウィンドアンサンブル ドゥ・ノール
課題曲冒頭から、大きめのサウンドで推移。オブリガートもしっかり鳴らされているが、これを、立体感があると捉えるか、バランスをやや損なっていると捉えるか…。自由曲では、課題曲とはまるで別のバンドのような音が聴こえてきた。この位の人数のバンドのどこから、こんなパワフルな音が出て来るのか、という驚きがあった。

・大曲吹奏楽団
課題曲は、指揮者のアクションがずいぶんパリッとしているが、出て来る音はとても繊細。旋律・対旋律・他のバランス感覚が見事だった。自由曲は、バッハの「シャコンヌ」だったが、個人的に思い入れが強い曲だけに編曲が気になって仕方がなかった、というのが正直なところ(編曲が特段悪いといっているわけではない)。名曲ではあるが、やはりこういった場でのアピール度は少々厳しいのかも。

・NTT西日本中国吹奏楽クラブ
課題曲はIII、メンバーの皆さんきっと好きなんだろうなあ(私もけっこう好きです笑)。自由曲はほっとする演奏だった。おそらく「ガイーヌ」はバンドの能力からすれば、持て余し感があったのかもしれないが、名曲を丁寧に作り込んで、肩の力を抜いて、ストレスフリーな音色や音楽を心がけているような印象を受けた。だから、聴いていてとても心地よい。「剣の舞」等がない意表をついた選曲もなかなか。

・ヤマハ吹奏楽団浜松
須川展也氏の指揮を久々に見た。交代直後の指揮を見たことがあるが、差は歴然というか、とても板についてきたなあというか。サクソフォンの演奏もそうだが、とにかく凄い努力をされて、今の指揮があるのだろう。自由曲は、ダイナミクス重視、パワーで押す系ではあるが、奏者一人ひとりがしっかりしているので、とにかく隙(うっかり割れるとか、音程がぶれるとか、ずれるとか)が全く見当たらない。大編成の楽団が、ここまでピタリと合うのは、聴いていて爽快だ。

・宝塚市吹奏楽団
課題曲から、良く子音が立つサウンド。実際鳴っている音量よりも、大きく聴こえる。後半にかけてもその傾向は続き、聴こえが衰えない。自由曲も同様。大変な作品だが、最終部の大ファンファーレもなんのその、疲れ知らずに聴こえた。奏者一人ひとりの地音が、全体の響きに埋もれず存在感を保っている、というのも特徴的。

・デアクライス・ブラスオルケスター
ちょっと冷静に聴くことができなかったのだが、それを差し引いても素晴らしい演奏だったと思う。特に自由曲への、演奏者の思い入れは強かったのではないだろうか。それを引き出す佐川氏の指揮。第一のクライマックスを迎えたのち、テンポがいったん落ち着いた再現部で、佐川氏によってあそこまでフレーズの持続(聴いているこちらの息ができなくなるほど)を強いられて、それについていくバンドが凄いなと思いながら聴いていた。

第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部の感想

午前~昼の、"前半の部"の感想を。

【第64回全日本吹奏楽コンクール 職場・一般前半の部】
日時:2016/10/30(日曜) 9:30開演
会場:金沢歌劇座

・ソノーレ・ウィンドアンサンブル
課題曲では、木管の自由闊達な歌い方(歌わせ方)が印象的。朝イチを感じさせない爽やかなサウンドで、これが全国クラスの演奏かと感じ入る。金管は大人しめに進行すると思いきや、自由曲では一転、パリッとしたサウンド。細かい音符が連続し、さらに奏者単独の技巧(フルート、クラリネット等)を魅せる箇所もあった。高い緊張感を持ったまま、見事に演奏を終えた。

・光ウィンドオーケストラ
課題曲Vを聴くのは初めて。技術的に作り込んだとしても、聞かせどころを作るのがとても難しい印象を受けた。自由曲では、鍵盤系が大活躍し、魅了された。また、数名によるアンサンブル箇所がとても安定している。ホルンを始めとする金管系の仕事がとても丁寧に聴こえた。トランペットのアタックが美しい。

・名取交響吹奏楽団
クラリネットの人数が少ないように思えたが、課題曲では少ないなりに全体の構成でカバーする、という戦略が効いているように思えた。指揮者の作戦勝ちだろう。自由曲は、とにかく作品が面白い。ジョン・コリリアーノのクラリネット協奏曲か、ジョン・マッキーのサクソフォン協奏曲か、てなもんで、ハイハット、シェイカー、ウッドベースにサクソフォンとクラが絡む前半部、おどろおどろしく、濁ったサウンドもフル活用の中間部(コントラファゴットやコントラバスクラが超低音を奏でる)、スピード感のあるシンコペーション風コラールに走句が絡み、最後は大絶叫の最終部(後から調べてみたのだが、どうやら30分近くある作品の一部を取り上げていたようだ)という具合、技術的にも高難易度だが、見事に曲のグルーヴまでも表現しており、演奏が終わった瞬間に大盛り上がりとなった。

・倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニー
打楽器のみひな壇、あとの奏者はステージに平置きという珍しい配置。フレーズそれぞれの内部でそこまで統制を取っている感じを受けない(若干の凹凸が見られる)が、とてもリラックスした響きと雰囲気。なんだか緊張感のある演奏が続いていたせいか、優しい演奏に涙ぐんでしまった。自由曲は、柔らかいサウンドを前面に押し出している感じがする。オーボエはとにかく大変だったと思う。

・浜松交響吹奏楽団
課題曲で、"パートの上手さ"が聴こえる。個々の技量がそこまでクローズアップされるわけではないが、どのパート、どのセクションを取り出しても、納得の上手さ。ホルンとユーフォニアムがひな壇最上段という珍しい配置だったが、おそらく自由曲対策だろう(大活躍だった)。自由曲でも、パートごと、セクションごと、そして全体、という、3階層の美しさやダイナミックレンジを突き詰めているような印象を受ける。主題がとても難しく、若干処理に差があったかな。

・春日市民吹奏楽団
課題曲では、クラリネットを中心に、弱音~中音系の美しさが聴こえてきた。ときに「こんなに伸ばすのか」というほどの、長めのフレーズも特徴的。自由曲でも、クラリネットの美しさがバンド全体のサウンドの豊潤さを牽引しているように思えた。時折、バンド全体の中で、少しタイムラグがあるように思えたのだが、このくらいの大人数だとやむを得ないのかなあ。

・秋田吹奏楽団
課題曲は、少し遅めの設定で、じっくりと聴かせるような演奏だった。自由曲はネリベル!やはり良い作品だ。人数は全体的に若干少なめだが、縦のアンサンブルや、和音の精度でパワーを補っている。ネリベル独特の和声を、これでもかと美しく見せ付けていた。アルトサクソフォンとテナーサクソフォンは、ダイナミクスの処理が難しいフレーズを、よくまとめていたと思う。

・創価学会関西吹奏楽団
課題曲、冒頭のフルート、ピッコロのデュエットから見事な空気感。全体を通して、一見意味のないフレーズ間に、有機的なつながりを見出し、意味を与えていくような演奏だった。とてつもない大編成だが、アンサンブルのようにフレーズ内での統制は完璧。自由曲では、冒頭のファンファーレはこの日一番の貫禄と安定性だった。まるでスペクタクル映画の冒頭のファンファーレのよう。曲全体を通し、規範的そのもの。全体の構成方法、旋律のみならず、後ろで鳴っている和声にも隙がない。

・ブリヂストン吹奏楽団久留米
人気なんですね。演奏開始前、会場から期待の大きな拍手が印象的。課題曲IVはなかなかチグハグな作品だが、まったくそう聞こえない。団体が自らの強みを"わかっている"感がすごかった。中程度の人数ながら、鳴りは一級品。精度ももちろん高い。自由曲はおなじみの「ローマの祭」のスタンダード・カット(チルチェンセス途中までやって、主顕祭)だが、こうして聴くといかにトランペットが大変か、というのがよく分かる。トランペットは皆エース級で、バンダも全員鳴る、トップも相当鳴る。トロンボーンのソロは、今まで聞いた中でもっとも酔っぱらいを的確に表現しているソロ内容だったと思う。きっとあのトロンボーン奏者は酒呑みに違いない(笑)。

・上磯吹奏楽団
特別力を入れて吹いているわけではないのに、とても良く音が飛んでくる。大きい会場で鳴らすセオリーが、自然と身についているのかな(例えば練習会場が広いとか?)。美しく、良く鳴るバンドだった。個々の響きよりも、全体としての一体感や響きに重点を置き、音楽づくりをしているような印象。バンドのカラーがあるなあ。

・藤原大征とゆかいな音楽仲間たち
大人数だが、とてもスッキリした響き。見た目よりも落ち着いた音量。奏者は若い方が中心だが、指揮者の音楽作りだろうか。自由曲も同様に、とてもスッキリまとめてある。指揮者の意向が隅々まで行き渡っているような印象を受けた。

・東京隆生吹奏楽団
課題曲では、人数の多さに比して少し線は細いが、アインザッツの精度などでパワーを上手に補っている。自由曲では、瞬間瞬間の緊張と弛緩の切り替えが実に見事だ。特に、中間部から最終部にかけての、聴衆を座席に縛り付けるかのように緊張を強いる、音楽作り、オーラは見事だった。

・伊奈学園OB吹奏楽団
とにかく明るいサウンド。課題曲の再現部での明るい音は、本日前半の部の中でもピカイチ。最終部のトランペット・ソロがとても安定していて驚いた。自由曲も、やはり明るい音が印象的。瞬間瞬間の作り込みは相当なものだった。