2015/07/27

TSQヨーロッパ演奏旅行2015(4日目:TSQ演奏の日)

7/13、この日はコングレスでのTsukubaSQ演奏の日である。

Tsukuba Saxophone Quartetが今回のコングレス参加した目的は2点、作曲家・旭井翔一による初のサクソフォン・カルテット作品を海外へ紹介すること(イコール、旭井翔一氏の海外への紹介)と、日本国外の奏者であるリチャード・インガム氏(当初はScottish Saxophone Ensembleだったが…いろいろとあって作曲家ご本人との共演になった)との共演を通じて文化国際交流を図ること、である。コングレス事務局に提出したプロジェクト企画書にもそういう文面を書き(英語の文面修正は、これもだいぶ妻にお世話になった)、それが受理されて演奏できることになったわけであり、もし今後なにかこういう機会があれば、こういったコングレスならではの企画を考えていきたいと考えている。

10:30からのステージに備え、9:00からリハーサル室を1時間利用し、10:00には会場のSalle 20入り。慌ただしくリハーサルを終えた。お客様もたくさん(普通の室内楽向け会場よりも大きかったが、ほぼ満席)、日本の方もいらっしゃったが、日本以外の方もかなり多い!1曲目はリチャードことRichard Ingham氏作曲の、「Mrs Malcolm, Her Reel (Funky Freuchie)」を8重奏で。これまで、TsukubaSQとしてこの曲を何度も演奏した…日本初演もやったし、その後の演奏会のアンコールでも演奏し、小品としてあちらこちらの演奏会で吹き…作曲家と演奏できるとは、なんとも得難い経験だ。ソロはリチャード氏ご本人と、フランスのブーローニュ音楽院でジャズを学んでいる小倉君がとった。小さい事故はあったのだが、1曲終わって盛り上がる!この曲はやっぱり本当にウケるんだなあ。

2曲目は、旭井翔一「Ctrl+Alt+Delete(制御・代用・削除)」。最初楽譜を見た時は、特殊奏法が多くとにかくびっくりしたのだが、奏法の調査・試行錯誤をしたり、松下洋くん(今回、バリトンを吹いてもらった)のアドバイス等もあり、なんとか演奏にこぎつけることができた。本番も、もちろん細かいミスはあるものの集中力の高い演奏ができたと思う。こちらの作品も、大盛り上がりで、大きな拍手を頂いた。

なんとか本番を終えて、記念撮影。このような場で演奏することができ、とても嬉しかったのと同時に、ここにたどり着くまでの様々な出来事をも思い出し、記憶に残る本番となった。

どたばたと片付け、聴くモードへ。音楽院のAuditoriumで開かれたストラスブールセルマー130周年記念のレクチャー・コンサートへと伺った。ジェローム・セルマー社長とセクション・マネージャーによる、セルマー製品の歴史紹介と、合間にセルマー・アーティストによる演奏が挟まれるという催し。貴重な写真とともに様々な歴史が紹介され、また、合間にはヴァンソン・ダヴィッド Vincent David氏とジャン=シャルル・リhサール Jean Charles Richard氏の即興デュオ、クロード・ドゥラングル Claude Delangle教授とティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏のデュオ、ジュリアン・プティ Julien Petit氏と弦楽トリオのアンサンブル(大盛り上がりのクレツマー音楽!)など、セルマー・アーティストの総力を結集したとも言えるすさまじい布陣が演奏を披露した。最後は、新製品の紹介(楽器&リード)ののち、前述のアーティストに加え、ハバネラ四重奏団や、モーフィン四重奏団、フィリップ・ガイス氏、バリー・コッククロフト氏、ジョン・ヘリウェル氏、日本からも原博巳氏、宗貞啓二氏などが乗る、超豪華ラージアンサンブルが演奏を披露。なんと指揮はヴァンサン・ダヴィッド氏で、ダヴィッド氏が作曲したナントカという曲(頭文字を取ると、"S""E""L""M""E""R"になる)を演奏して、幕となった。いやはや、サクソフォン界の王者たる、セルマーのすさまじい意地を感じた演奏だったなあ。

お昼ごはんは、皆で街中に出てパン屋さんで買い、広場で食べた。サンドウィッチと、りんごのミニッツメイド。美味しい。

再び音楽院に戻り、The ensemble.konsax.wienを聴く。ウィーン音楽院のラーシュ・ムレクシュ Lars Mleksch教授門下のラージアンサンブル。非常に珍しい、カールハインツ・シュトックハウゼン Karlheintz Stockhausenの大作オペラ「光 Licht」の"土曜日"の第3幕より、「左目の踊り Linker Augentanz」は、とにかくグロテスクだが、同時に神秘的、まさにシュトックハウゼンしか成し得ない音響で、とても興味深く聴いた。「左目の踊り」をライヴで聴くことができるなんて…しかも、シュトックハウゼンの片腕として永らく共同作業を行ってきたフルーティスト、カティンカ・パスフェーア女史からのレッスンを受けた演奏ということで、その貴重な機会を目の当たりにできたことが嬉しかった。続くArturo Fuentesの「Heavy」は、ラーシュ氏をバリトンソロに迎えて、バス・オスティナートが特徴的なおどろおどろしいロックな作品、最後のJorge Sanchez Chiong「Salt Water」は、もともとオーケストラとターンテーブルとビデオのための作品なのだそうで、響きはとてもクール、しかしビデオに使われた映像ともどもなかなかショックを受けたのだった。だが、実に面白い!ビデオはYouTube等にも上がっているので、気になる方はぜひ。

この後、Salle 20でちょっとだけDonald Sinta Quartetの演奏を聴くことができた。Roger Zare「Z4430」という、実質的なアンコールピースだけではあったが、近年のアメリカの四重奏団の驚異的な発展は、目覚ましいものがある。そして、Salle 30で、バリー・コッククロフト Barry Cockcroft氏の自作コンサートを聴いた。Nagila Variationsというポスト・ミニマル風の独奏作品をバババっと吹きこなしたかと思えば、続いてジェローム・ララン Jerome Laran氏とともに、やはり音符だらけの鮮烈なE2udesなる作品を演奏。「ジェローム氏いわく、音符がたくさんで難しかった」とのこと…笑。

Salle 21へと移動し、ケネス・チェ Kenneth Tse氏の演奏によるピート・スウェルツ Piet Swerts氏の新作他の演奏会を、スウェルツ氏のピアノとともに聴く。チェ氏の作品を聴くのは2回目だが、相変わらずの美音で聴衆を魅了する。スウェルツ氏の新作は、「パガニーニ・ヴァリエーション Paganini Variations」というタイトルで、もちろんあの有名な旋律を使った作品。これはとても人気が出そうだ。そういった、魅力的な出来たての作品をたくさん聴くことができるのは、コングレスの大きな魅力であろう。

この頃になると、楽器・出版社ブースも片付けに入っており、その片付け直前のブースをうろうろして「A History of the Saxophone - Through the Methods Published in France: 1846-1942」なる、新発売の書籍を発見。気になるなーどうしようかなーでも25ユーロかー、などと迷っていると、もうブースも片付けるし、展示品ならばということで、なんと15ユーロで売ってくれたのだった。ラッキー!これは嬉しいな。

ブースを離れてAuditoriumに向かい、Orchestre Symphonique de Mulhouseという地方オーケストラと、サクソフォン独奏の演奏会を聴いた。近くに陣取っていた、オーストラリアのパース出身、マイケル(前回のコングレスで仲良くなったのだ)とその友達と並んで聴く。裏番組でアウレリア四重奏団が演奏していたのだが、迷った末にこちらを選択。さすがにストラスブール管弦楽団ほどの演奏精度や迫力はないものの、なかなかノリの良いオーケストラで、また、聴きやすい作品が多く、楽しく聴いた。前半、Christoph Wunschの協奏曲を吹いたドイツのLutz Koppetsch氏の集中力は、かなりのもの。後半には、ウェイン・ショーター「Teru」を編曲したジャズ奏者の Gary Keller氏が登場、他と一線を画した響きには会場が沸いた。トリは、日本からなんと須川展也氏が登場。ピアソラ「エスクヮロ」「オブリビオン」、そしてジミー・ドーシー「ウードルズ・オブ・ヌードルズ」を演奏した。須川氏の人気、そして、ぐっと聴衆をつかむセンス、テクニック、音色は、世界共通のものなんだなあと感じ入った。隣で聴いていた、おそらくサクソフォンを知らない地元の一般のお客さんと話した所、「曲やサックスのことはよくわからないが、最後の演奏が一番楽しかった」と言っていたので、それは間違いないことなのだと思う。

トラムに乗って移動し、3回目となるPalais de la Musique et des CongresのSalle Erasmeへ。Spok Frevo Orchestra & International GuestsによるCrossover Jazz Special Concertを聴いた。会場はスモークが焚かれ、照明も派手な色が付き、いかにもという雰囲気。ヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏とピアノのJean Francois Zygel氏の完全即興、Jerry Bergonzi氏(だったかな?)とミヤザキ・ミエコ氏の、テナーと琴のデュオ、カルテットで、トップをヴァンサン・ダヴィッド氏、バリトンをジャン=シャルル・リシャール Jean Charles Richard氏が吹くという、超豪華なQuatuor Callistoが演奏するいくつかの作品(ヴァンサン・ダヴィッド氏の、ジャズ方面の即興も、クラシック奏者の余興を超えた、専門的なもので、氏の守備範囲の広さを思い知った)は、いずれもブラヴォーものだ!後半は、ブラジルから来仏したSpok Frevoというビッグバンドと独奏者の共演。なんだかものすごくコンテンポラリーなビッグバンドで、テクニック的にすごいのだが、ダンサブルか…?と言われるとそうでもなく、ちょっと自分には難しかったかなあ(苦笑)ということで、ソロはすごいのだが、さすがに後半(というか、終演予定時刻を1時間回っていた…)には、聴き疲れしてしまったのだった(^^;いろいろな意味ですごいコンサートだった。

終演後は、やはりバスでアパルトマンへと戻った。いやはや、ストラスブールの交通、そして宿泊先の交通事情の便利なこと。

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