兵庫県のTさんよりお送りいただいた。1982年の日本音楽コンクールの本選会がラジオで放送され、それをエアチェック→デジタルデータ化したものである。お送りいただいたTさんには感謝申し上げる。
第51回日本音楽コンクール:サクソフォン本選会
課題曲:イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」
第1位なし
第2位:須川展也
第3位:雲井雅人
入選:下地啓二
須川展也氏の経歴をたどると必ず出てくるコンクールの名前。話には聞いたことがあっても、まさか2011年にもなってその録音を聴くことができるなんて、夢にも思わなかった。なんとなく、夕食の準備でもしながら聴こうと思ったのだが、流れてくる下地啓二氏のイベールにはたと手が止まった。そして、スピーカーの前に正座して、もう一度最初から流してみた。
実は、私はピアノとサックスで演奏されるイベールが苦手だ。ピアノで生み出される音色は限界があるし、サックスパートもなんだか妙にのっぺりしていて、この曲がもつ"軽妙酒脱"の精神を体現した演奏に出会ったことがないからだ。唯一の例外は、マルセル・ミュールがアメリカツアーで吹いたときの録音で、ピアノは空中分解気味なのだけれど、サックスは"ミュールのイベール"そのものであり、非常に素晴らしい物なのだが、ほかはどうも…。
オーケストラとの録音だと、ミュール、デファイエ、ヌオー、ドゥラングルと、良いものがたくさんあるのだが。
…という先入観を持って聴き始めたのだが、その期待を見事に裏切られた。これはとんでもない録音だ。現代のサックスで演奏されると痛々しくなってしまうイベールだが、ここでは3者とも見事な演奏が展開されている。ある点では、ジュネーヴのミシェル・ヌオーの録音などにも負けないほどかもしれない。これは日本のコンクールなのだが、なぜかイベールの時代からのリンクを感じる。不思議。
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