一作日に引き続いて、スーザン・ファンチャー Susan Fancher氏のアルバムを紹介する。先に、ファンチャー氏の経歴について簡単に書いておきたい。女流サクソフォン奏者で、ボルドー音楽院でジャン=マリー・ロンデックス氏に、ノースウェスタン大学でフレデリック・ヘムケ氏に、それぞれサクソフォンを学んだ。ノースウェスタン大学では、ジャチント・シェルシ Giacinto Scelsiのサクソフォン音楽について論文を書き、博士号を取得している。現在は、デューク大学で後進の指導にあたりつつ、演奏家としてのキャリアも広げているそうだ。
作曲家とのコラボレーションも多く、テリー・ライリーや、フィリップ・グラスなどとも一緒に仕事をしたことがあるそうだ。へええ。例えば、Boosey & Hawkesから出版されているスティーヴ・ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」のサクソフォン版は、彼女が編曲を行ったものである。
「Ponder Nothing(Innova 564)」は、彼女の実質的なデビューアルバム。テープとのデュエット、多重録音、ピアノとのデュエット、独奏曲など、様々な領域へ踏み込んでおり、守備範囲の広さを伺わせる。
Steve Reich - New York Counterpoint
Giacinto Scelsi - Tre pezzi
Mark Engebretson - She Sings, She Screams
Ben Johnston - Ponder Nothing
Wolfram Wagner - Sonata
Alexander Wagendristel - Saxoscope
まず、選曲についてだが、最初の3曲は個人的にどの曲も大好きな作品であり、取り上げられていることが嬉しい。後半の三曲は、どれも初めて聴く作品で、興味深く聴いた。「Ponder Nothing」は、アルトサクソフォンのために書かれた変奏曲形式の無伴奏作品だが、とても自然に身体に染み入ってくるメロディで、10分以上の長い作品にも関わらず、楽に聴き通せてしまった。ワグナーの「ソナタ」は、第1楽章から順に、変奏曲、スケルツォ、ノットゥルノ、プレストというスタイルで書かれたもの。「Saxoscope」は、特殊奏法も交えた無伴奏作品。
そんなわけで、最初の4曲を繰り返し聴いている。「New York Counterpoint」と「Tre Pezzi」は、他にもかなり良い演奏があるためやや分が悪いかもしれないが、なかなか健闘していると思う。「New York Counterpoint」は、第3楽章のリズムがやや滑って、グルーヴ感が失われてしまっているのがやや残念だった。やはりこの曲は、指定テンポ&リズム通りに、クールかつ精緻に演奏されるのが好きだな。
「She Sings, She Screams」は、紛れも無い名演!後半の"叫び"のパートが素晴らしい。リチャード・ディーラム氏の演奏盤では、キレずに終わってしまった感があったが、この演奏はその不足部分を補うものだ。前半のしなやかな音色も、ぞくぞくしてしまう。「Ponder Nothing」も、特別なことをやっているわけではないのに、魅力があるなあ。
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