2010/05/21

雲井雅人氏のコンチェルト・リサイタル

【雲井雅人サクソフォーンリサイタル2010】
出演:雲井雅人(sax)、藤井亜紀(pf)、クァルテット・グラーツィア(qt cord)、菅原潤(fl)、庄司知史(ob)
日時:2010年5月20日 19:00開演
会場:津田ホール(JR千駄ヶ谷駅前)
入場料:全席自由4500円(学生4000円)
プログラム:
J.S.バッハ/大野理津 - イタリア協奏曲
A.K.グラズノフ/伊藤康英 - サクソフォン協奏曲
L.E.ラーション/成本理香 - サクソフォン協奏曲
J.S.バッハ - ブランデンブルク協奏曲第2番

仕事を切り上げて伺った。渋谷で東横線から乗り換え→代々木で乗り換え→千駄ヶ谷というルートだったのだが、乗り換えを頑張ったところ、なんとか開演10分前に千駄ヶ谷に着いた。到着すると、お客さんは9割5部の入り、という印象。

最初、ピアノの独奏により、J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲より"アリア"」が演奏された。会場の空気が、一気に外界と断絶されて、いかにもリサイタル!という雰囲気に変化する。最初、このゴルトベルクが演奏されたとき、アンコールはサクソフォンを交えた「ゴルトベルク」かな?とも思ったのだが、違った…(苦笑)。

「イタリア協奏曲」は、ソプラノサクソフォン。最初の音が出た瞬間から、ステージ上に華が咲いた。丸くて、ホール中を満たす極上の音。第2楽章の、通奏低音の上に乗りながら、どこまでも広がってゆく旋律線には、おもわずホロリ。こういうフレーズを吹かせたら、右に出る演奏家はほとんどいないのではないかなあ。ピアニストの音色変化がかなり面白い。相当にソリスティックに弾くこともあれば、すっと役割を交代して後ろに回ることもある。かなりアンサンブル慣れしているピアニストなのだなあ、と感じた。この曲は特に、弦パートの音程が散り気味だったのが残念。

グラズノフは、トンでもない演奏だった。もしかしたら、ご本人も会心だったのではないかなあ。15分近くのなかに、曲の大構造から、極小部分のフレージングまで、一貫した方向性のようなものが感じられ、実に興味深く聴いた。果たしてそうやって作りこんでいったのか、それとも自然にこんな構造が生まれたのか…どちらにしてもすごいことだ。ぜひ、アドルフ・サックスの楽器での演奏や、ラッシャー版(原典版)での演奏も聴いてみたくなった。伊藤康英先生のアレンジは初めて聴いたが、さすがの格を感じさせるものだった。

20分の休憩を挟んで、ラーション。これも楽しみにしていた。第1楽章と第3楽章に置かれているカデンツァが、味わい深かったなあ。楽譜を見てみると、相当テクニカルな譜面なのに、そういう面をことさらに強調せず、「うた」を聴かせていた。そして、第2楽章の天上の音楽のような美しさについても、述べておかなければならないだろう。この演奏を聴けて良かった!

最後の「ブランデンブルク協奏曲」は、なんだかとてもフシギな演奏。雲井さんの演奏姿は、ソプラニーノを神妙に、禁欲的にコントロールしているようにも見えたのだが、出てくる音ははちきれんばかりの楽しさに充ち満ちていたのだ。第3楽章を聴きながら、この時間がずっと続いて欲しいと思った。

アンコールは、フルートとサクソフォンのパートをひっくり返した、ビゼー「アルルの女より"メヌエット"」。

雲井さんの近年の積極的な演奏活動には目をみはるものがある。ひとつひとつが新鮮で、機会ごとに驚きをもっている。次は何をやってくれるのだろうか…楽しみに待ちたい(mckenさんと同じ〆になってしまった笑)。

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