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ちょっとブーレーズが強烈すぎて…。あれは凄いや。スピタリゼイション?というのかな、空間を音が飛び回るようなマルチチャンネルの体験は初めてだったが、これほどの効果を生み出すとは!
【佐藤淳一 第2回博士リサイタル】
日時:2009年4月21日
会場:東京芸術大学第一ホール
プログラム:
K.シュトックハウゼン「友情に」
武満徹「ディスタンス」
P.ブーレーズ「二重の影の対話(サクソフォン版・日本初演)」
リサイタルのテーマはポリフォニー。バッハを起点とする西洋のポリフォニーに則りつつも、さらにその概念を視覚世界まで拡張したシュトックハウゼンの「友情に」、東と西の間に位置する大海を「鯨のように、自由に」泳ぎ回りながら他の何でもない自身のトーンを獲得した武満徹の「ディスタンス」、そしてIRCAMという世界最強の現代音楽研究所を興したブーレーズ。この3人を一直線に並べるプログラミングなんて、そうそう聴けるものではない。というか、まず思い付かない。
行書体で描き出されるシュトックハウゼンのフォーミュラ展開のゆるやかな繋がり、天から降ってくるような笙の響きと融合したサクソフォンの甘いサウンドが印象的な武満といったところだが、やはり肝はブーレーズだった。
鮮烈な体験。こればかりは聴いてみてくれ!と言うしかないのだ。7chのマルチチャンネルスピーカーから出力される「影」の空間移動を一度聴いてしまうと、もう2chには戻れませんぜ、という感じ。音がぐるんぐるん〜…というか、聴いているうち、まるで空間が歪んでいるような感覚にも陥りそうだった。音量のバランスも、こうして聴くと、かなりダイナミクスの幅が大きい。
また、数あるサクソフォン作品の中でも、独奏パートが最も難しい作品のひとつであるが、佐藤さんのアルトは実に流麗であった。特に、中間部から後半にかけては、圧巻。そういえば佐藤さんがアルトサックスを吹いているところ、初めて聴いたぞ。
帰りは、真っ暗な上野公園を、大雨の中歩く。靴がびしょびしょになってしまった。