めずらしく、クラリネットの曲の話題。
フローラン・シュミット Florent Schmitt(1870 - 1958)と言えば、近代フランス音楽界の重鎮の一人。ネオ・ロマンティックを核とした伝統的な書法に傾倒しつつ、オリジナリティ溢れる作品を多数生み出した作曲家。サクソフォーン好き&カルテット好きな人にとっては、何と言っても「サクソフォーン四重奏曲作品102」が有名だが、室内楽にはそのほかにもたくさんの名曲を残しているのですね。
彼がクラリネット六重奏の分野に珠玉の名品を残していることをご存知だろうか。ものすごくマイナーな作品なので、知っている人はほとんどいないのかもしれない。というより、そもそもクラリネット六重奏の分野自体がマイナーなのか?クラリネットのアンサンブルというと、どうも四重奏や八重奏ばかりで、Es, Bb, Bb, Alto, Bass, Contraltoの六重奏編成ってあまり聞いたことがないな。
そんな分野ではあるけれど、シュミットの「クラリネット六重奏曲作品128(Sextuor pour clarinettes, op.128)」は、自分自身が今まで聴いたことのあるクラリネット・アンサンブルの曲の中では、疑いなく最高の傑作の一つだと思っている。フランス音楽界の重鎮の作品にふさわしい風格と密度…しかしだからといって、取り付く島の無い、単に巨匠を気取った作品ではなく、とてもクールでカッコいい作品なのだから面白い。
初めて聴いたのは、高校2年のときの吹奏楽連盟アンサンブルコンテスト。しかも他校が云々…といった話ではなく、自分の高校のクラリネットチームが第1楽章と第4楽章を練習していた(笑)。なーーんか、難しそうな曲だなあと思っていたが、楽譜を見せてもらったところ、本当に難しい譜面だった。
「サクソフォーン四重奏曲」を思わせる超高密度の黒々とした楽譜、複雑なリズム、和声、そして何より、技巧を感じさせないフランス風のエレガントさ…。部活内のお披露目会で初めて音を聴くことができたが、エレガントなだけじゃなくて、実は全編に渡ってモダンジャズの影響を受けている(このあたり、「サクソフォーン四重奏曲」と似ている)部分が随所に聴かれて、カッコいい曲だなあと思った記憶がある。
当時の先輩から、クラリネットチームが参考にしていたと言う音源(演奏者不明)をMDでもらえて、今でも大切に持っている。けっこう上手い。今でも時々聴くけれど、うーんやはりカッコいい。クラシックの曲じゃなくて、ジャズ枠の曲として聴いてしまうほど(第4楽章途中のバスクラ…!)。
いくら文で書いたところで、実際の曲がどんななのかはCDなどで聴いていただくしかないのだけれど、そのCDがほとんどない!のだ。ジャンルもマイナーなら曲もマイナーということで、レコーディングしている団体はごく僅か。「Sextuor de clarinettes francais」という、シュミット以外にジャン=ジャック・ヴェルナー(?)とジャン=ルイ・プティ(?)の六重奏曲を集めたCDが一番入手しやすいか…?
生でも聴いてみたいな。クラリネットやっている向きには、ぜひ取り組んでいただきたい。というか、誰か演奏してくれー。音源は手に入りづらいので、言ってくれれば持っているMDをお聴かせしますよ(誰に対して言ってるんだ)。
2 件のコメント:
はじめまして。この曲の楽譜を持っているのですが、いかんせん音源がなくどんな曲かと思っていました。
コメントありがとうございます。そうですね、なかなか録音は少ないようですが、もっと演奏されるべき作品だと思います。
サクソフォン畑から見ると、クラリネットにこのような素晴らしい作品があることが羨ましいです。
コメントを投稿