2014/09/02

ジャズin藝大の録画を観た

某所で、下記演奏会の録画を観る機会があった。

http://arcmusic.geidai.ac.jp/1916

東京藝術大学演奏藝術センターの松下功氏(作曲家)プロデュースによる、"ジャズ in 藝大"という2012年のコンサートである。

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A列車でいこう(B.ストレイホーン)

語りとジャズ《江戸城最後の日》 ~勝 海舟が語る幕末の群像~(台本:堀口茉純)
お江戸日本橋(江戸古謡/編曲:山本 清香)
二人でお茶を(V.ユーマンス/編曲:角田 健一)
チンドン(松下 功)
葬送行進曲(F.ショパン/編曲:山本 清香)
ムーンライト・セレナーデ(G.ミラー)

朗読と即興演奏のための《霹靂神》(夢枕獏「陰陽師 天鼓ノ巻」より)
前田憲男:“春の海”の主題によるコンチェルト
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松下功氏の司会進行のもと、ヴィーヴォ・ドリーム・バンド(藝大OB&OGジャズ・バンド)というビッグバンドが主体となって演奏を進める。サクソフォンは、バンマスの角口圭都を筆頭に、杉田久子、細川紘希、田中拓也、竹田歌穂(以上、敬称略)という布陣。どえらく洗練されたセクションワークの巧さは、さすがである(当たり前か笑)。

さて、全体を通して非常に感銘を受けた。もちろん、ビシッと決まり、邦楽器まで組み入れたビッグバンドの演奏はさすがなのだが、その土台の上で繰り広げられる世界が楽しすぎた。これはライヴで観てみたかったと思わせるものであった。

「江戸城最後の日」は、勝海舟を題材に、生い立ちから、江戸城無血開城までを、語りと音楽で演じるというもの。台本・語り(勝海舟として演じる)は、"お江戸ル"こと堀口茉純氏で、ダイナミックかつ粋な口上に、すっかり惚れ込んでしまった。これを自身で台本で書いて、演じてしまうというのも凄いものだなと…。また、邦楽~海外の曲のビッグバンド・アレンジが、口上とピタリとハマり、素晴らしい世界観を構築していた。これ、CDかDVDで発売されたら買ってしまうぞ。

また、「朗読と即興演奏のための《霹靂神》」は、夢枕獏「陰陽師 天鼓ノ巻」のテキストを、氏自身が朗読し、山本邦山の尺八、松原勝也のヴァイオリン、山下洋輔のピアノが即興で合わせていくという、なんだかものすごいコンセプトの演奏である。「霹靂神」のストーリーは、以下の様なものである。

舞台は安倍晴明の屋敷。秋の日差しと菊の香の中で、屋敷に逗留する蝉丸の琵琶が響くなか、安倍晴明と源博雅が屋敷の軒先で酒を酌み交わしている。博雅が笛を蝉丸の琵琶に合わせてゆく。気がつくと、次第に雲が覆い始め、大粒の雨が降り、稲妻が光る。突如として、ひときわ明るい稲妻が光った。南の方角、羅城門のあたりに落雷したようだ。…雨風が止み、星と月が見える頃には、すっかり夜もふけ、晴明と博雅は再び酒を酌み交わしはじめた。再び蝉丸の琵琶が響き始め、博雅がそれに笛を重ねる。不意に、どこからか羯鼓(かっこ)の音が響く。どうやら晴明の屋敷の屋根の上から聴こえてくるようである。琵琶と笛と羯鼓の音色が調子を合わせて響く。屋根を踏む音が軒先に近づいていたかと思うと、屋根の上から裸に腰に布を巻いただけの童子がくるりと飛び降りてきた。童子は庭先で笑いながら楽しそうに羯鼓を叩き、それに合わせて蝉丸は琵琶を弾き、博雅が笛を吹く。3つの音色が秋の夜に響き、天へと上ってゆく。…(以下略)

演奏の素晴らしさも然ることながら、ストーリーの神秘性も相まって、捉えどころのない大きな感動を憶えた。そして夢枕獏氏の素晴らしい朗読である!なんと良い声であろう…驚かされた。

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