2025/03/20

ブランフォード・マルサリス演奏のグラズノフ

ジャズサクソフォン奏者として有名な、ブランフォード・マルサリス氏が演奏するアレクサンドル・グラズノフ「サクソフォン協奏曲」の録音。私自身は昔インターネットラジオ配信された録音を持っていたが、Internet Archiveに置かれているのを見つけた。アンドレイ・ボレイコ指揮ニューヨーク・フィルハーモニックとの共演である。2010年もしくは2011年の演奏会の模様。

https://archive.org/details/cd_schuller-berry-glazunov-menotti-compositio_gunther-schuller-wallace-berry-alexander-g

フレージングの作り方が、普段大多数耳にする演奏とだいぶ違う。カデンツァはさすがのマルサリス氏の独壇場、といったところだが、「Creation」のイベールで魅せた縦横無尽なカデンツァと比較すると、かなり抑制された印象を受ける。音はかなりクラシックに寄せてあるが、どのようなセッティングなのか、少し気になるところ。

ちなみに、ニューヨークフィルにおいて本作品を共演したことがあるのは、ブランフォード・マルサリス氏と、シガード・ラッシャー氏、の2名のみである。

写真は、2011年演奏会のプログラム冊子の一部。



2025/03/18

立花ハジメ「H」に…

音楽家、グラフィックデザイナーとして、1980年代から活躍する立花ハジメ氏のファーストアルバム「H」について。昨年末あたりの、お知り合いMさんのFacebook投稿を見て、備忘録的に書いておく。

冒頭のトラック「IF」は、デザンクロ「四重奏曲」第1楽章の、第2主題。最終トラック「MEMORIAL」は、グラズノフ「四重奏曲」第2楽章"カンツォーナ・ヴァリエ"の主題である。

ある程度サクソフォン四重奏に取り組まなければ、これらの主題を取り上げることは無いであろうから、どういった経緯でこれらの作品を引用したのか、非常に気になっている。



2025/03/17

John Harle plays Johnstone

Internet Archiveを探索していたところ、ジョン・ハール氏の演奏を見つけた。イギリスのMaurice Johnstoneという作曲家の「バラッド」という曲である。

込み入ったクラシック作品、というよりは、どちらかというとライト・ミュージック的な装いがあり、演奏時間も10分を切る程度。ハールの真価を聴く、というようなものではないが、鼻歌のように軽やかなサクソフォンは、曲の雰囲気に非常にマッチしている。バックのアルスター管弦楽団の演奏も、鮮やかで非常に良い。

https://archive.org/details/cd_english-composers_julius-harrison-ruth-gipps-maurice-johnsto

Maurice Johnstoneの簡単な経歴は次の通り:1919年10月から1922年4月まで王立マンチェスター音楽大学(後に王立北部音楽院)で学ぶ。1921年夏にマンチェスター・シティ・ニュース紙に音楽批評を寄稿。1922年5月から1923年3月まで、ジョンストンはロンドンのキングス・カレッジで作曲と指揮を学んだ。1935年からBBCの音楽部門に勤務し、最初はロンドンで、その後1938年から1953年まではマンチェスターでBBC北地域音楽部長を務めた。1953年、新設された音楽部門の音楽番組責任者としてロンドンに出向、その後ハーペンデンに戻った。1959年にBBCを退職し、1976年4月に亡くなるまでハーペンデンに住み続けた。

写真は、Maurice Johnstoneの近影。



2025/03/16

ジャン=マリー・ロンデックスの訃報

2025年3月3日、ジャン=マリー・ロンデックス氏の訃報を知る。サクソフォン奏者、教育者、研究者など様々な側面を持ち、フランス・ボルドーに拠点を構えながら、現代クラシック・サクソフォン界における"トレンド"の多くの部分を担った、唯一無二の存在であった。

数々の教則本や著書、ソロ・室内楽・アンサンブルの録音、ロンデックス氏に献呈された作品や、ボルドーから生まれた作品、ロンデックスから直接的ないし間接的に薫陶を受けた奏者、ロンデックスの名を冠したコンクール…1970年代以降、現代に至るまで、そしてこれからも、クラシック・サクソフォン界において、ロンデックス氏の影響を避けて通ることはできない。

思いつくままに個人的なロンデックス氏についての思い出や、関わりを書いていく。

いちばん最初にロンデックス氏の名前を知ったのは、高校3年生の時に修学旅行先の長崎で買った「サクソフォンの芸術 (東芝EMI)」だった。このアルバムの2枚目は、まるまるロンデックス氏の室内楽アルバム「Musique de chambre avec saxophone(EMI France)」の復刻となっており、1曲目、ヴィラ=ロボス「神秘的六重奏曲」の、揺蕩うような雰囲気に惹かれ、何度も何度も聴いたものだ。このトラックを聴くと、未だにその頃の思い出が蘇ってくる。そして、ジャン・マルティノン指揮フランス国立放送管弦楽団の、ドビュッシーの「ラプソディ」。これも何度も聴いた。後年、デファイエ氏が参加したマリウス・コンスタン指揮の盤も聴いたが、結局マルティノン盤に戻ってしまう。

木下直人さんにも、Vendome盤(アンドレ・シャルランが関わっている!)、SNE盤、Crest盤など、貴重な録音を数多くお送りいただき、ますますロンデックス氏の才気に触れることになった。特に若い時期の録音は瑞々しさに溢れていて、聴くのがとても楽しい。最近は、宗貞先生に来日リサイタルの模様などを聴かせていただく機会などもあった。MD+Gから出版された復刻4枚組はもちろん持っている。復刻ポリシーにやや難ありだが、ロンデックス氏の様々な時代における演奏をまとめて耳にできる、非常に良いアルバムだ。ボルドーの門下生が参加した、ロンデックス氏指揮Ensemble International de Saxophonesの録音「Sunthesis(Quantum)」も、耳にしておくべき内容だ。

ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールについても、タイ開催となってからは良く経過を追ったり、データをまとめたりしていたものだ。その中での、センセーショナルな松下洋くんの1位入賞、入賞記念のフランソワ・ロセの新作初演の経緯など、ロンデックス氏の邸宅に泊まりながら練習した話など、洋くんから面白く聞かせていただいた。

初めてクリスチャン・ロバ作品を聴いたときの衝撃も忘れられない。平野公崇氏によるライヴ演奏だったが、これも、クリスチャン・ロバ氏がロンデックス氏とのコラボレーションとして生み出したものだと知って、驚かされた。

著作「サクソフォン音楽の125年」(の改訂版)も、2冊持っているが、何度引いたことか。曲目解説を書くときに、必ず手元に置いておかなかればならない本である。

直接的な共同作業も2度あった。1つ目は、ロンデックス氏の最後の著作となった「Pour une histoire du saxophone et des saxophonistes Livre1,2,3」について、日本の歴史において重要な様々なサクソフォン奏者の情報を提供した(宗貞先生にご紹介いただいた)。2015年頃に何十通もメールをやり取りし、著作内にはきちんと名前もクレジットいただいている。2つ目は2023年、第9回世界サクソフォン・コングレスの録音復刻作業の時、シャリエ氏、ロンデックス氏と、やり取りしながらマスタリングを行った。テープスピードが異常な録音ソースからの復刻となったため、ピッチを非常に気にされていて、442Hzで進めようとしていたところ、440Hzをリクエストされて何度も調整をしたことを思い出す。出来上がった復刻盤はロンデックス氏に送った。

2015年、2018年のコングレスでお会いしたこともある。著作への情報提供の話は出したものの、さすがに大多数のうちの1名であり、名前は覚えていてくれなかったが(^^;

ロンデックス氏の功績を体系的にまとめた最も有名な著作として、「Jean-Marie Londeix - Master of the Modern Saxophone(Roncorp)」があるが、インターネットでアクセス可能な部分には残念ながらそういったものはない。特に日本語のものは皆無と言ってよく、どこかできちんとまとめねばならないと思っている。

2015年、ストラスブールにて、ジャン=マリー・ロンデックス氏の講演後に撮らせてもらった、ロンデックス氏とウイリアム・ストリート氏の写真。


2025/03/11

展示が無事終了

多くの方に協力いただきながら、先週のサクソフォーン・フェスティバルにおける展示は、無事完了。一昨年に引き続き、多くの方に見ていただけたようで、良かった。

いつか、世界のサクソフォン史についても、似たような発表を作ってみたい、という構想はある。また、日本のサクソフォンについても、90年代のような比較的最近の情報も、インターネットからは引くことができなくなっているため、体系的にまとめていきたい、という思いもある。



2025/02/23

「日本のサクソフォーン史」展示@第41回フェスティバル

昨年7月から年末まで、本業超多忙につき、更新することができていなかった。今は少し落ち着いて、書きたい内容も溜まっているので、再開していくつもり。

…2025年の明けからは、以下の準備に時間を割いていた。フェスティバル来られる方々、よろしければスキマ時間にお立ち寄りください。

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3/1,2にわたって小金井宮地楽器ホールにて開催される第41回ジャパン・サクソフォーン・フェスティバルにおいて「日本のサクソフォーン史~日本から世界へ、世界から日本へ」と題した展示を行う。基本的に第39回の展示を加筆訂正、さらに新規展示を3枚制作、合計17ページの内容を掲示する予定。

https://saxfest.jp/program/bothdays1/

・阪口新と大室勇一
・第9回世界サクソフォンコングレス(川崎/横浜)の舞台裏
・アカデミアSQ ~日本初のプロ・カルテット~
・アカデミアに続くカルテット ~キャトルロゾー、東京SE、ファインアーツSQ~
・アメリカの風 ~ヘムケ、シンタ、ホーリック来日~
・現代サクソフォン演奏スタイルへの潮流
・国内クラシックサクソフォンの系譜 試作版 ←2025年新レイアウト版
・コングレスへの参加の歴史 ←2025年新規展示
・主要国際コンクール入賞の歴史 ←2025年新規展示

私は現在US在住のため、フェスには伺うことができない。現地準備は日本の方に依頼している。


2024/06/16

ギャルド四重奏団のデジタル復刻盤

 最近のストリーミングサービスには、LP時代の復刻が取り上げられていることも多い。録音年・元レーベル、復刻環境も何もわからず、アーティスト名(グループ名のみ)と曲名くらいしか掲載されていないのだが、それでも過去の貴重な録音を耳にできるのは良いことだ。

BnF collectionとしてフランスで出版されていた過去の盤の復刻が頻繁にアップロードされている。そのなかに、ギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団のミニアルバムがある。ライト・ミュージックというか、とても軽快でわかりやすく楽しい作品を、軽妙な、しかし往年の輝かしい音色で堪能することができる。

Vendanges a Madeira
Hot Cappuchino
Rainfall
Java pavene

https://music.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mYiSVxDRBsVYRk-cCheLmw_1CvUQ2fBUE&si=XNDipdBWVDDiJt4S