2008/03/31

録音機能

自分が持っている携帯音楽プレーヤー"iriver clix2"には、録音機能がついていることを最近知った。録音機能といってもごくごく簡易的なボイスレコーダーといった感じもので、スピーカーはモノラルで、バランス調整も効かないような代物なのだが、これが練習やレッスンのときに意外にも便利。

さらっと録ってさらっと聴ける。響きがない場所であればかなりクリアに録れる。バッテリーも半日くらいは余裕で持ち、録音時間もフラッシュメモリの空き容量がある限りは無制限に録り続けられる。…お気に入りのCDを取り込んで聴いている時間と同じくらい、録音機能のほうも利用しているかもしれない。個人でさらうときには、練習→録音→聴く→練習というサイクルを作ることができるし、他にも例えば以前、佐藤渉さんに四重奏のレッスンを受けたときの様子を記録したときなんかは、後々の復習にも使うことができた。

最近の音声や映像などのメディアを扱う機器の、機能性の向上っぷりは凄いですなあ。一昔前だったら、録音機能付のMDレコーダーとマイクを用意して…というものしか選択肢は無かったのに。ハイエンドではポータブルでSACDクオリティの録音が可能なものから、ローエンドでは携帯音楽プレーヤーの付属機能(しかもマイク内臓)のこんなにお手軽なものまで。便利な時代になったものだ。

2008/03/30

木下直人さんのお宅訪問

今日は、お世話になっている木下直人さんのお宅を訪問した。朝早くに実家を出発し、飯田線に揺られて目指すは飯田市。中央・南アルプスの景色を楽しみつつ、およそ2時間ほどの行程であった。東京の電車と比べて1/2くらいの速度で進むため、ゆったりで良いですなあ。カーブだらけ、橋だらけなのだが、そもそもこんな断層地帯の中腹に電車を通したことがすごい。

駅までは木下さんが迎えに来てくださった。ご挨拶ののち早速お宅へと向かい、オーディオルームにお邪魔すると目に飛び込んでくるのは巨大なスピーカー、アンプやターンテーブルを始めとする再生装置、おびただしい数のレコード!まずは、再生装置でいくつか写真に収めてきたものを紹介しましょう。

タンノイのスピーカー:オートグラフ。発売当時、家庭用では最高といわれた代物。1953年のモニターシルバー組み込み型を復刻したものであり、1950年代後期~1960年代のレッドとは違うものなのだそうだ。モニターシルバー独特のホコリ防止のカバーがかけられているのが見える。これが2本。定位置で聴くサウンドは、恐ろしいほどの空間的拡がりと密度を聴かせる。レッドにはレッドに合う木の材質が、シルバーにはシルバーに合う木の材質があり、その組み合わせを取り揃えるのに苦労されたそうだ。

右下に見えるユニット、ステレオでは世界を見渡しても最高の再生環境。当時の状態を目指すべく完璧にオーバーホールされたトーレンスのターンテーブルと、オルトフォンのカートリッジ。左上はマランツのFMチューナー10B(吹奏楽三昧でギャルドが放送されたときに、木下さんが録音を行ったのはこのチューナー)。その下はイコライザや電源部にも、こだわりがあるというマランツのアンプ"Model 1"。そしてCD-R録音装置が2台。周りを取り囲むLPやCDの数々。左側には"Model 7"の姿もあった。右上に切り取って載せたのは真空管。Telefunken EL34だが、左側が1950年代からあるベース端子がメタルのもの。右側が、後期のもの。ベースがメタルのものは、なかなかに手に入りづらいものであるようだ。

ピーエル・クレマン Pierre Clementのカートリッジ(SP用とLPモノラル用)。一部のフランス国立放送局ご用達のカートリッジで、フランスのギャルド関連やサクソフォン関連のLPやSPは、これらのカートリッジを使用しての復刻を行うべく準備を進めている段階だそうだ。木下さんがおっしゃることには、例えばヨーロッパでプレスされた盤とアメリカでプレスされた盤を比較したときに、当該地の機器で再生することにこそ意義があるということだ。なるほど…。フランス固有の音…もっと言えば、フランスの音楽性を再現するために、そういった再生環境が必要なのだということだ。

再生機器だけでも驚きっぱなしなのに、それに加えてレコードのコレクションである。とにかく、次から次へと紹介していただき、写真を撮る暇もないくらい&息つく暇もないくらいだ。例えばソシエテのラヴェル全集一つとってもイギリスの初版盤、ルボンの唯一と言われるフルートソロや室内楽、サクソフォン関連やギャルド関連のLondonやERATO発の超貴重なオリジナル盤、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のフランス国内盤・日本国内盤、パリ警視庁吹奏楽団のオリジナル盤、ロームがソプラノを吹くギャルド・レピュブリケーヌサクソフォン四重奏団のLP、フランスの放送用録音をLPで限定的に発売したもの…まだまだほかにもたくさん!管楽器のコレクションとして、これ以上ないというほどのものばかり。値段など、とうていつけられる代物ではない。

そんな中、オーディオルームの環境でかけていただいたのは、クリュイタンスが振り、ソシエテが吹くラヴェル「スペイン狂詩曲」。もちろん、イギリスのオリジナル盤ボックスセットのうちの一枚。当時の最高の状態の機器から再生される、えもいわれぬ音に酔いしれた幸福な時間。

そして、なんと3時間以上にわたって、時間も忘れていろいろにお話させていただいた。本当に、音楽に対して情熱・知識・経験のある方だ。私も今まで身につけてきたすべての知識と経験(といっても高が知れているが)の引き出しを開けて応じた。木下さんから発せられる言葉の一つ一つが、音楽を歴史の流れの一現象として捉える眼差しを感じる。例えば、この言葉は印象的だったなあ。「ブランとブートリーとブーランジェの何が違うか…なぜ、行進曲を振ったときにあんなに違うのか…戦争を経験しているか経験していないかの差だよ」と。

そうか、と妙に納得してしまった。コンサートマーチ云々ではなく、もっと根本的な差だったのか。環境こそが、指揮者を育て、演奏者を育て、機器を育て、音楽を育てるのだ。しかし、その中には確かに同時代の"糸"というものも存在することに間違いはないと。ブランとルボン、そしてリシャールが出会った奇跡、マランツ・トーレンス・オルトフォン・タンノイが同時期に存在していたという奇跡…。木下さんが行っている復刻は、単なる復刻ではない。その当時のATMOSPHERE(変な言い方だが、偶然と必然の産物とも言えるか?)を、現代に音という形で再提示しているのだということなのではないだろうか。

時間はあっという間に過ぎて、お昼前には失礼するつもりが、奥様も同行でお昼ごはんまでごちそうになってしまった。「かつ禅」という駅前のお店で食べたヒレカツ定食と角煮が、これまた美味。キャベツだけでご飯一杯食べられました(笑)。別れ際に再訪問を約束し、飯田線で一路北へ。午後から降り出した雨は、時間が経つにつれてますますその勢いを増していくのでした。

最後に、なんとお土産にと譲っていただいた、ロンデックスの室内楽曲集EMIフランス盤(パテ・マルコニ)、デファイエとデルモットが組みアンドレ・ジラールがORTFを振ったリヴィエのダブル・コンチェルト(RTF-Barclay)、マルセル・ミュールのSP4枚組(Selmer)の写真。そして、飯田名物の一二三まんじゅう…こちらも美味しくいただきました。

いやあ、凄かった。とても貴重な時間を、ありがとうございました。

進展

服部先生から電話でご連絡が!わ~い。何が「わ~い」かはまだ秘密だけれど、ラッシャー関連の研究で、少し進展があったのだ。さて、もう少し手直しをしないと…。

お礼に?と「Top Tones of the Saxophone」を贈ってくださった。ありがとうございます!

2008/03/29

mckenさんのお宅訪問

実家の新しいPCをセットアップするため、この土日は帰省。さきほど、アプリケーションのインストールを終えて、ようやく本格始動といったところ。あとは、メールのユーザ名とパスか…。それから、Windows XPを慣れた身には、Windows Vistaのユーザーインタフェースが使いづらくてしょうがない。

市販のアプリケーション以外の、デフォルトのオンラインソフトウェア環境は、Firefox+Lhaplus+TeraPad+FFFTP+IrfanView+VLC Media Player+ffdshow+ImgBurn+AVG Free Edition+Daemon Toolsといったところ。これだけあれば趣味の用途には不自由しないが、それどころかこれらのソフトウェアがすべてフリーというのも凄い。

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ところで今回は、帰省に際して、エスポワール&ロッソ&Ensemble TXのMJさんと一緒にmckenさんのお宅にお邪魔してきた。私の実家は長野県の中南信にあり、帰省の折には中央線(特急あずさ)もしくは中央道高速バスを利用するのが常…そしてmckenさんのお宅も、中央線&中央道のほぼ沿線に位置しており、こういった機会に立ち寄り易いのだ。

mcken(まっけん)さんは、クラシックサックスを吹いている方ならおなじみ、「Fantastic Classical Saxophone」を含むスーパーウェブサイト「mcken's wonderland」の管理人。数年前からお世話になっており、いつかご挨拶に伺いたいと思っていたのだが、この度ようやく実現した。MJさんとは某駅に10時に待ち合わせ、mckenさんに迎えに来ていただく。

ご自宅は、閑静な住宅地の一角。中に入ると居間のあちこちにレアなCDが!コーヒーを頂きながら、まだ紹介をアップしていないという、マ○○○○○の某協奏曲のピアノ連弾版なんてのも聴かせていただく。うおお。

そして地下室のCD棚!そもそも地下室があるというのも驚きだが、見てくださいこの写真!高さ2メートル、幅3メートルの一面のCD棚に整頓された、クラシックのCDの数々!MJさんと2人で、めちゃくちゃはしゃいでしまった。目測で3000枚くらい…すごい。「アレのソレがああでこうですよね」という話題で、小一時間盛り上がってしまった(笑)。廃盤となったCD、限定のCDなども多数手にとって見ることができ、ちょっと感動。

「an eye for a difference」「JacobTV Prism Quartet」「HOT」の3枚をピックアップして頂き、再び居間に戻って鑑賞。娘さんとのポケモン談義もしながら(最近は増えているのですねえ。最初の150匹しかわからなかった…)、楽しい時間を過ごさせていただきました。さらに、お昼ご飯に手打ちのうどん(とてもおいしい)まで振舞っていただき、感謝感謝。最後まで話は尽きなかったが、手塚治虫のアニメーション作品「展覧会の絵」を観たところで惜しくもタイムアップ。

いやあ、楽しかったです。どうもありがとうございました。今度は楽器を持って、ぜひ伺わせてください(笑)!

2008/03/28

動かない

ロベール・クレリスの「かくれんぼ」を練習しているのだが、なぜかどうしても苦手なポイントが出てきてしまった。問題の譜面は、ご覧の通りのクロマティックで、指定の速さは四分音符=84。最初の3拍は普通にできるし、4拍目単独も別に問題ないのだが、これを続けて演奏することができない。この場所だけ一時間ほどさらってみたものの、四分音符=60が限界。

私は、特に他の人と比べても格段に両手の薬指と小指が弱く、それら指が絡んでくる複雑な動きが苦手なのだ。薬指につられて、薬指以上に小指が動いてしまったり、なんてことはザラ。この楽譜はまさに、ドンピシャな難しさで、とにかく思い通りに動かない。それどころか、薬指と小指を動かした後の中指の反応の悪さもやっかい。「ミファ」と分かっているのに、中指が浮き上がってくれないのだ。

そんなこんなで、(記譜で)ファ⇔ミ、ミ⇔ミ♭、ミ♭⇔レのトリルをひたすら練習しながら、地道にさらい続けているところ。まだまださらう楽譜はたくさんあるのに、ここまでできないとは…先が思いやられる。ブエノスアイレスは、今のところ夏の中期。ここにもやっかいな指運びがあり、とりあえずすっ飛ばして、今日は秋をさらうのを楽しんでいた。4月上旬のうちには、ブエノスアイレスはなんとかさらい終えたいなあ。

そういえば、今日久々にアルトを持ち出して吹いてみた。タンギングの汚さはどうしようもないが、軽い抵抗に明るい音が出て、ちょっと楽しかった。

…なんて遊んでいる暇はなく、もうちょっとストイックにさらわなければダメですな。あー、集中集中。

2008/03/27

ミュールのアメリカツアー録音

The Legendary Saxophonists Collectionから。

マルセル・ミュールは、独奏者としてのキャリアの最終期(1958年)に、シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団のアメリカツアーに参加している。12の都市で公演を成功させ、例えばニューヨークのジャーナリスト、ルイ・ビアンコリは、ミュールの演奏を聴いて「サクソフォンのルービンシュタインだ!」と評したという。このときの公演プログラムは、以下の4曲。

ラヴェル「マ・メール・ロワ」
イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」
トマジ「バラード」
メンデルスゾーン「交響曲第4番"イタリア"」

演奏会を聴いた聴衆の反応は、如何ほどのものであっただろうか。今となっては知る由もないが、幸いなことに録音が残されており、我々はその演奏に触れることができる(Legendary Saxophonists Collection CD 14)。オーケストラのみの2曲がカットされている上に、マスタリング状態がひどいというオマケつきなのだが、PCで上手く操作すれば、聴けないほどではない。いろいろ言うとバチが当たりそうだ。

イベールの神懸り的な演奏は、1930年代のパリ音楽院管との録音、そして1950年代のパリ・フィルハーモニー管弦楽団との録音、どちらをも上回るものではないかなと思う。ミュールが、フラジオの「ラ」に挑戦している様子を聴き取ることができる。爆速のトマジも、隅々まで躍動感に満ち溢れた、実に生き生きとした演奏で、これを聴くと他が聴けなくなってしまうぞ、と言う感じ。

ミュール自身も、インタビューでセッション録音の苦手さを語っており、ミュールの演奏の真価は、こういったライヴ録音にこそ、現れているのではないかなとも思った。長きにわたって、そもそも存在しないと思われていたこの録音を、21世紀という時代に聴くことができることを、心から嬉しく思う。

2008/03/26

冨岡先生のソロ録音(安部幸明作品集)

サクソフォン奏者、冨岡和男氏のことを、私はなぜかいつも冨岡"先生"と呼んでしまう。もちろん、レッスンについたことがあるわけでもなく、面識すらほとんどないのであるが、時々耳&目にする冨岡先生の外見・内面からは不思議とそう呼ばせてしまうオーラが漂っている。かつては奏者として、そして現在は教育者として、日本のサクソフォン界を引っ張っている(と書くと、少々語弊があるか?)存在であることに間違いはなかろう。

冨岡先生の録音や実演には、私はアンサンブルでしか触れたことがなかった。キャトゥル・ロゾー、そしてサクスケルツェットや、フェスティバル・オーケストラにおいて、ソプラノやアルトを吹いている姿を何度か拝見したことがある。が、そういえば独奏って聴いたことないよなあと、ふと思った。ドビュッシーを演奏した、2007年の「Saxophone Day」には伺えなかったしな。

じゃあ「冨岡先生のソロを聴けるCDはないのか?」と探したところで発見したのが、今回ご紹介するCDである。「安部幸明 室内楽作品集~音色と旋律の魅力~(LEKINE RLMT-0401)」。珍品。

安部幸明(1911 - 2006)は、戦後日本のクラシック音楽界を代表する作曲家の一人。京都芸術大学で教鞭をとりながら、オーケストラ曲、室内楽曲をいくつか手がけた。特に、自身がチェロを専攻していた経験から、15曲もの弦楽四重奏曲を作曲している。その安部氏の作品が2003年に「流亜風 日本の作曲家による室内楽連鎖演奏会」というコンサートシリーズで演奏されたときの、ライヴ録音をCD化したものだ。

・弦楽四重奏曲第8番(1952)
・アルトサクソフォンとピアノのための嬉遊曲(1951)
・弦楽四重奏曲第14番(1990)

この中の「嬉遊曲(ディヴェルティメント)」において、サクソフォンを冨岡先生が、ピアノを冨岡英子さんが担当している。「嬉遊曲」についての詳しい情報は、こちらのサイトをご覧いただければと思うが、鼻歌のごとき美しいメロディがシンプルに並べられた佳曲。初演は、阪口新氏であったそうだが、阪口氏の甘い音色を意識せずにとのことはあるまい。フランス産のサクソフォンのオリジナル作品などと比較すると、音の数はずっと少ないのだが、そのひとつひとつがとても洗練されているような感じも受ける。

そもそも、冨岡先生がこの時に独奏を務めることになった理由が気になるが、先生のソロ演奏がCDというメディアに記録されたことは、まずは幸いである。冨岡先生の演奏は、深いヴィブラートに柔和な音色、そしてよく繋がるレガートといったところが印象深い…やはりクランポン、って感じですな。中音域の輪郭が丸いこのタイプの音色って、どこかで聴いたことがあるんだがなあ、誰に似ているのかなあ。まあ、さすがに言葉で表すのは限界がありますので、この見事な演奏をぜひ聴いてみてください。あと、隅々までとても愛着をもって演奏しているな、ということがわかる。

「弦楽四重奏曲」も、なかなか面白かった。演奏は、Quartet Canoro。二つの作品の間には、40年近くの作曲時期の差があるが、根底に流れているポリシーみたいなものは、同じなのではないかなと感じた。でも、やっぱり1950年代の作品のほうが、若々しくて、溌剌としていて、聴いていて楽しいな。

※購入の際は以下の連絡先に注文してみてください(CDショップには出回っていない)。価格は2400円。電話注文だと、その日のうちか次の日には発送してくれると思います。

Email: ruah@music.nifty.jp
Tel: 042-391-8134
(櫟音/LEKINE くぬぎの会)

…そういえば、冨岡先生の日本音楽コンクールの、イベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」の録音(CDではなくて)があるという噂を聞いたことがあるのだが、もしどなたか情報お持ちでしたら教えてください。