2025/10/04

Ictusの「浜辺のアインシュタイン」録音

ベルギー・ブリュッセル市を拠点とする音楽団体"Ictus"の演奏する、フィリップ・グラス「浜辺のアインシュタイン」の録音。2018年11月2日のライヴ収録で、団体としての初演の模様。

フィリップ・グラス・アンサンブルの演奏とは違ったアプローチであるが、ライヴ全曲ならではの、有無を言わさず突き進むパワー、初演ならではの勢いがとても面白い。楽器編成や繰り返し、テンポもかなり違うので、(良く知られているように、自由度がかなり高い。グラス本人が参加した録音ですら、楽譜通りではない)その違いを楽しむのも面白い。

Act4からKnee Play5に向けての盛り上がり(時々破綻しそうになるほど)、そして最後の天上の音楽のような美しさは凄いですよ。奏者はとんでもないことになっていると思うが。

この録音では、現在ベルギーで活躍する日本人奏者である伊藤あさぎさんがサクソフォンを担当しており、いろいろと教えていただいた。ソロ・サクソフォン(ソプラノ&アルト)が伊藤あさぎさん、それ以外を同団体のクラリネット奏者の方が担当しているとのこと。なんと、冒頭の数を発言しているのもあさぎさんとのことで、驚き。

団体の公式ページにあるように、2026年にも再び同作品を携えてヨーロッパツアーを敢行するとのことだが、その時にはNele Tiebout氏も参加するそうだ。

2025/09/29

塙美里「ここは素晴らしい場所」

塙美里さんのアルバム「ここは素晴らしい場所(ADORA)」。

https://www.adoranewmusic.com/music/how-fair-this-spot

S.Rachmaninov - Daisies, Op.38 No.3
G.F.Handel - Recorder Sonata, Op.1 No.2 HWV 360: I. Larghetto
S. Rachmaninov - 12 Songs, Op. 21: How fair this spot
H.Wieniaski - Polonaise de Concert No.1
A.Scriabin - Prelude, Op.16 No.1
E.Bloch - Baal Shem: III. Simchas Torah
R.Schumann - Fantasiestücke, Op.12 No.3: Warum?
E.Kohler - Vals de fleurs, Op.87 (with F.C.Garcia)

スペインで録音・リリースされたCDで、一般的なサクソフォン向けではない歌曲、器楽曲を中心に構成された内容。

アルトサクソフォンによる演奏もいくつか収録されているが、やはり真骨頂はお得意のソプラノサクソフォンによる演奏だろう。歌心を持ちつつ、テクニカルな面をほとんど意識させない演奏。サクソフォンが本来持つ音色の不連続性を、逆にうまく使っている場所などもあり…ヴィエニャフスキの「ポロネーズ」など。

最近、デファイエ氏の世代の演奏と、ドゥラングル氏の世代の演奏を、交互に聴いているのだが、こういう演奏を聴くたびに、90年代以降のジャンプアップというか、方向転換というか、その影響力の大きさに驚かされる。

最終トラックは、スペインのサクソフォン奏者、Federico Coca Garcia氏との軽やかなデュエットで、アンコールのような一口菓子的雰囲気を楽しく聴いた。

水戸での初リサイタルの時を未だに覚えているのだが、全くその時とは違う活動方向性、確固たる個性といったものには、常々驚かされる。

2025/09/22

「浜辺のアインシュタイン」の演奏映像

最近、車の中でずっとフィリップ・グラス「浜辺のアインシュタイン」を聴いている。作品の存在を知ったのはだいぶ昔だが、繰り返し聴くのは初めて。オペラ作品におけるミニマル・ミュージックの金字塔ともいえる作品で、CD4枚に及ぶ大作(しかも、これでも一部カットが入っている)。数字・音階名を基調とする合唱、囁くようなナレーション、トランス状態に入っているかのような各楽器群、聴きどころは極めて多く、何度も聴いているうちに作品の面白さに気付かされる。

ライヴ演奏は一筋縄ではいかなさそうだが、数年前、日本で、バレエ、演奏会形式の両方で、ほぼ同時期に取り上げられたことがある。偶然にも双方の企画は全く別の方面から立ち上がったという。特に、あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホールで演奏された、演奏会形式のコンサートは、文化庁芸術祭大賞を受賞するなど、話題となった。

Knee Play1と、Trainの演奏動画をYouTubeで観ることができる。サクソフォンは、井上ハルカ氏と、大石将紀氏。



2025/08/11

Rising (Cabrillo Fest 2025 Final Concert) - Timothy McAllister

自宅で車で40分ほどのところにあるSanta Cruz Civic Auditoriumまで、ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏が客演するコンサートを聴きにいってきた。

Cabrillo Festival(カブリロ現代音楽祭)は、1963年に作曲家ルー・ハリソンらによってカブリロ大学で創設され、以来、現代作品に特化したオーケストラ音楽祭として高い評価を受けている。特に「存命中の作曲家による新作」に焦点を当てている点が特徴。創設者のルー・ハリソンが公にQIAとして生きた人物ということもあり、さらに今年は、サンタクルーズのLGBTQIAプライドの50周年を記念し、特にLGBTQIAに関連したプログラムが多かったようだ(プログラム最後のJake Heggie「Good Morning, Beauty」など)。

2025/8/10 7pm-
Santa Cruz Civic Auditorium
Adolphus Hailstork - Saxophone Concerto (Timothy McAllister, saxophone)
Jennifer Higdon - Cold Mountain Suite
Tyson Gholston Davis - As Juniper Storms
Jake Heggie - Good Morning, Beauty (Gabrielle Beteag, mezzo-sop)

すべて初めて聴く作品、あまり馴染みのない作曲家が並ぶが、T.G.Davis氏の作品を除いて聴きやすい作品ばかりだった。各曲の前には、作曲家が出てきて作品について解説を入れながら進む。アメリカだとおなじみのスタイルなのだろうか。

この中でも「Saxophone Concerto」は、マカリスター氏の好演と相まって、非常に強い印象を観客に与えたように思う。どんな難パッセージにおいても崩れないニュートラルで良く通る美しい、しかしパワーのある音色、作品の遊び心を存分に引き出した色付け、そして最終部に向けての盛り上がり…。技術的に吹ける人は他にも居るかもしれないが、このキャラクターで作品を自分のものとして吹ききってしまう人はマカリスター氏にちょっと想像できない。

Hailstork氏は、健康上の問題により臨席は叶わなかったが、演奏の前、代わりにマカリスター氏がコメントした。マカリスター氏にとっても、特別な作品とのコメントがあり…15歳の時に初めて現代に生きる作曲者として初めて触れた作曲家が、Hailstork氏だったとのことだ(確か、「American Guernica」という作品を演奏した、などとコメントがあった)。

その他の作品もなかなか面白く、Jennifer Higdon氏の、オペラ抜粋である「Cold Mountain Suite」は、ドラマチックな展開に感銘を受けたし、Jake Heggie「Good Morning, Beauty」も…これは詩の内容がもうちょっとリアルタイムで分かればより面白かったと思うのだが(わからない単語や言い回しが多くて…)、Gabrielle Beteagの好演に会場全体が大いに沸いていた。やっぱり歌って凄い。

演奏会後には、会場の外でAfterpartyが開かれ、ケーキや飲み物が振舞われた。写真は、LGBTカラーの虹色にライトアップされたSanta Cruz Civic Auditorium。


2025/07/21

シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭のAsya Fateyeva氏

アドルフ・サックス国際コンクールでの入賞以降、様々なオーケストラの協奏曲ソリストとして引っ張りだこのアーシャ・ファテエヴァ Asya Fateyeva氏であるが、2024年にドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭に独奏者として招かれた時の映像を以下のリンクから観ることができる。

https://www.ndr.de/fernsehen/sendungen/Asya-Fateyeva-beim-Schleswig-Holstein-Festival,klassik256.html

プログラムが、もはやAsya Fateyeva氏オンステージ、というようなもので:

ビゼー「カルメン第1組曲」
トマジ「サクソフォン協奏曲」
ボルヌ「カルメン・ファンタジー」
モーリス「プロヴァンスの風景」
ビゼー「カルメン第2組曲」
ラヴェル「ボレロ」

…という、ビゼーの「カルメン」を除いてサクソフォン尽くしの演奏会。ボルヌはサクソフォンとハープでの演奏、また、「ボレロ」においてAsya Fateyeva氏はソプラノサクソフォンで参加している。

臨時編成の若いオーケストラのようで、オーケストラにはムラがあるが総じてしっかり演奏されている。特にトマジは祝祭感溢れる素敵な演奏で、ライヴ感に満ち溢れ、推進力があり一聴の価値ある演奏だ。トマジだけは、YouTubeにて抜粋を観ることもできる。

2025/07/20

Tapiola Sinfonietta & Rascher SQ plays Glass

フィンランドのエスポーの市立オーケストラであるタピオラ・シンフォニエッタと、Rascher Saxophone Quartetの演奏によるフィリップ・グラス「サクソフォン四重奏のための協奏曲」の演奏映像。

Rascher SQの演奏は相変わらずのハマり具合である。世界で一番多く本作品を演奏しているのがRascher SQであろう。アルトサクソフォンはMorgan Webster氏ではなさそう。前任のHarry White氏だろうか?

2025/07/12

木山光「Hadewijch II」の録音

 木山光氏のサクソフォン四重奏曲「Hadewijch II(ハデヴィッヒ2)」の録音をSound Cloud上で見つけた。2014年11月の、なんとAmstel Quartetによる実況録音。

https://soundcloud.com/gaudeamusnl/hikari-kiyama-sax-quartet

本作品は、海老原恭平氏、松下洋氏、塩塚純氏、小川卓朗氏のカルテットによって、第1回洗足現代音楽作曲コンクール・サクソフォン作品部門にて演奏され、入選ならびに洗足賞を獲得している。木山氏は当時欧州で活躍しており(今も?)、Amstel Quartetが取り上げることは自然といえば自然だが、それでもかなりの意外性があった。

作曲者が求める響きは、楽譜の注釈にもあるとおり「This piece need noisy tone. And this piece is not so colled comtemporary musc, this is noise Jazz - Rock music.」「Composer wants to produce as fast as possible & as loud as possible like Free Jazz - Rock improvisation」というもの。一方で、作品を聴いてみると分かるが、リズム・音運びなど、相当細かい部分までギッシリと精緻に書かれており、そのアンバランスさをどのように演奏として表現するかがキーとなる。いずれにせよ、高い技術力と圧倒的なパワーが必要な、一筋縄ではいかぬ作品。オプションでPAの使用によって120dbへのアンプリファイが推奨されている。

中川俊郎氏は「音楽の枠組みの向こう側、ゾッとする「彼岸」を覗こうとする探求心を見る(第6回JFC作曲賞本選に選出された「ハデヴィッヒ」の評より)」と語った。

2014年に2度演奏したが、これまで取り組んだ作品の中で、技術的には一番難しかったかもしれない。

Dynamic Saxophoneと名付けられた、このAmstel Quartetの当該演奏会のプログラムはこちら。