渡瀬センセの月一の奇聞屋ライヴも、いつの間にか40回を超えた。今回のゲストは、日本を代表する変態フルーティスト(褒め言葉です)の、斎藤和志氏である。
【わたせひでひこ 奇聞屋フルートライブVol.43】
出演:渡瀬英彦、斎藤和志、池田さく子、福田亜由美(以上fl)、寺田雅彦(pf)
日時:2016年2月3日(水曜)19:30開演
会場:奇聞屋
プログラム:
J.S.バッハ - 無伴奏パルティータよりアルマンド(オーレル・ニコレの1955年製ヘインズフルート使用)
武満徹 - 翼
斎藤和志 - 一人用ブルース
C.ドビュッシー - シランクス
C.ドビュッシー - "俺俺"牧神の午後への前奏曲
斎藤和志 - エレキ伽羅倶梨之平舞(本当のタイトルはすべて漢字)
H.マンシーニ - 小象の行進
冒頭、先日亡くなったオーレル・ニコレ氏への追悼として、氏が実際にベルリン・フィル時代に使用していたヘインズ銀製フルートを使い、斎藤氏がニコレ氏から直接レッスンを受けたというバッハを演奏した。それが殊の外素晴らしく、音色、解釈ともずっと耳に残り続けたのだった。さらに、ニコレと武満の関係性から「翼」を、渡瀬氏、寺田氏とともにトリオ編成で演奏(てっきり「ボイス」あたりが来ると思ったのだが)した。アドリブも大量に交えた演奏に、会場が一気に沸く。また、開発されたばかりの三響製バスフルートが休憩前には、自作の一人用ブルース。ループサンプラーRC-505を利用し、ベースライン、コードを重ね、さらに即興を加えた見事な"一人芸"。一聴したときに、「???」と思うのではなく、「カッコいい!」と感じられる内容であることも良いなあ。聴いたことのない方のために…こんな感じです。
休憩を挟んで、金製、銀製、木製、ピッコロを使ったブラインド音色クイズ(なんと全問正解できた!)。驚きは、「"俺俺"牧神の午後への前奏曲」という、全オーケストラパートを斎藤氏のフルート1本でこなしてプリ・レコーディングし、フルート独奏を重ねるという代物。プリ・レコーディングは、非常に凝った作りになっており、100時間近くに渡る作業だったというから驚きだ(ハープのグリッサンドをレコーディングするのも、わざわざ弦を模して音をすべて重ねたとのこと…気が遠くなりそうだ)。斎藤氏の生徒、福田氏を交えた、「エレキ伽羅倶梨之平舞」という、雅楽をモチーフにした作品。これもループサンプラーを活用し、聴いたことのない響きが創りだされていた。最後は、渡瀬先生をトップに、全員でBASUYAのレパートリーである「小象の行進」。アドリブ大会となり、大盛り上がりのなか幕となった。
いやはや、斎藤和志氏、一筋縄ではいかない存在だ。リーダーライブも聴いてみたいな。
2016/02/04
2016/01/28
準メルクル&リヨン管のドビュッシー作品集(A.ドワジー参加)
良く知られている盤だと思うが、改めて聴くとやはり良いな…ということで、紹介しておきたい。
準メルクルがフランス国立リヨン管弦楽団を振ったドビュッシー作品集の第7集「DEBUSSY: Orchestral Works Vol. 7(Naxos 8.572675)」。アレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏が参加した「ラプソディ」ほか、ポール・メイエ氏が「第一狂詩曲」を、ジャン=イヴ・ティボーデ氏が「ファンタジー」を演奏するという、なんとも贅沢なソリスト陣を迎えたCDとして、発売当時かなり話題となった。"現代風"と簡単に表現してしまうにはあまりにも勿体無い、聴き込みがいのあるCDである。
リヨン管といえば、エマヌエル・クリヴィヌ氏が振ったCD(Denon)も有名だが、そちらは聴いたことがないんだよなあ。早いこと聴かなきゃ。
準メルクルがフランス国立リヨン管弦楽団を振ったドビュッシー作品集の第7集「DEBUSSY: Orchestral Works Vol. 7(Naxos 8.572675)」。アレクサンドル・ドワジー Alexandre Doisy氏が参加した「ラプソディ」ほか、ポール・メイエ氏が「第一狂詩曲」を、ジャン=イヴ・ティボーデ氏が「ファンタジー」を演奏するという、なんとも贅沢なソリスト陣を迎えたCDとして、発売当時かなり話題となった。"現代風"と簡単に表現してしまうにはあまりにも勿体無い、聴き込みがいのあるCDである。
リヨン管といえば、エマヌエル・クリヴィヌ氏が振ったCD(Denon)も有名だが、そちらは聴いたことがないんだよなあ。早いこと聴かなきゃ。
ラベル:
CD
ふと思ったこと
ドゥダメル×シモン・ボリバル・ユース・オーケストラのコンビで有名な、アルトゥーロ・マルケスの「ダンソン第2番」をサクソフォン・オーケストラでやったら楽しいだろうなあ…とふと思った。どなたか編曲しませんかね。
2016/01/24
ロベール「カデンツァ」世界初演の録音(ヌオーsax&ロベールpf)
kuri出演情報:2016/2/14開催予定のコンサート、The Portrait of JacobTVの詳細は以下のリンクから。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
----------
ルーシー・ロベール=ディエゼル Lucie Robert Diessel「カデンツァ Cadenza」の世界初演録音が、YouTubeにアップロードされていた。サクソフォンは、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の名手、ミシェル・ヌオー Michel Nouaux氏、ピアノは作曲家自身。1974年7月6日、ボルドーで開かれた第4回世界サクソフォンコングレスにおける、実況録音だ。
ロベール氏がサクソフォンに興味を示したのは、ローマ留学仲間にジョルジュ・グールデ Georges Gourdet氏がいたことがキッカケだったようだが、その後もグールデ氏の紹介でロベール氏は数多くのサクソフォン奏者と知り合い、傑作を生み出した。ヌオーをロベールに紹介したのも、きっとグールデ氏だったのだろう。この録音、状態が良いとは言えないが、雰囲気はとても良く伝わってくる。細かく聴いていくと疵がないわけではないが、濃密で輝かしく、時に色艶を魅せる音色、全編を通して手を触れるとヤケドしそうなほどの集中力は、世界初演ならではであろうか。その気迫たるや、数多くのサクソフォンの録音の中でも、屈指のものだろう。
この録音をアップしたのは、おなじみAndre Bauchy氏。彼のアカウントには蔵出し超貴重録音が多くアップロードされており、とても興味深い。私も、時間を見つけてはめぼしい物がないかどうか漁っている。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
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ルーシー・ロベール=ディエゼル Lucie Robert Diessel「カデンツァ Cadenza」の世界初演録音が、YouTubeにアップロードされていた。サクソフォンは、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の名手、ミシェル・ヌオー Michel Nouaux氏、ピアノは作曲家自身。1974年7月6日、ボルドーで開かれた第4回世界サクソフォンコングレスにおける、実況録音だ。
ロベール氏がサクソフォンに興味を示したのは、ローマ留学仲間にジョルジュ・グールデ Georges Gourdet氏がいたことがキッカケだったようだが、その後もグールデ氏の紹介でロベール氏は数多くのサクソフォン奏者と知り合い、傑作を生み出した。ヌオーをロベールに紹介したのも、きっとグールデ氏だったのだろう。この録音、状態が良いとは言えないが、雰囲気はとても良く伝わってくる。細かく聴いていくと疵がないわけではないが、濃密で輝かしく、時に色艶を魅せる音色、全編を通して手を触れるとヤケドしそうなほどの集中力は、世界初演ならではであろうか。その気迫たるや、数多くのサクソフォンの録音の中でも、屈指のものだろう。
この録音をアップしたのは、おなじみAndre Bauchy氏。彼のアカウントには蔵出し超貴重録音が多くアップロードされており、とても興味深い。私も、時間を見つけてはめぼしい物がないかどうか漁っている。
Tokyo Rock'n Sax 4th Live
kuri出演情報:2016/2/14開催予定のコンサート、The Portrait of JacobTVの詳細は以下のリンクから。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
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今回もまた伺った。今のところ4回のライヴ全てコンプリート中(笑)。CDも発売となり、今後の活動がますます楽しみになってきた!
出演:松下洋(satc)、山下友教(sa)、東秀樹(at)、加藤里志(t)、丸場慶人(t)、塩塚純(b)、川地立真(b)、田中拓也(bs)、山本真央樹(drs)
日時:2016年1月22日 20:00 start
会場:カラオケラウンジKahoo
プログラム:
Yes - Siberian Khatru
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
Uriah Heep - Traveller in Time
Queen - Who Wants to Live Forever
King Crimson - Red
Led Zeppelin - Heartbreaker
Deep Purple - Speed King
Rush - YYZ
Yes - Heart of the Sunrise
TOTO - Child's Anthem (encore)
UK - Time to Kill (encore)
最初の頃は、ヘヴィな(サクソフォンらしからぬ)サウンドに圧倒されていたのだが、何度も聴いているせいか、聴こえてくる音を分離して、各個人のプレイを楽しむことができるようになってきた。原曲でXXXという響きだった箇所が、Tokyo Rock'n Saxの演奏ではどのように表現されているのかな、という興味とともに聴き進めていくと、新たな発見があり面白い。ちなみに、ライヴを繰り返していると、十八番的な曲と新曲での、なんとなく慣れ具合の差分が気になってくるのだが(笑)贅沢な注文というものだろう。
音作りについては、かなりベクトルが揃ってきて安定し、しかし、決して予定調和な箇所には収まろうとせず、常に全力でロックの音を表現しようとしているところに好感が持てる(「何となくこの位」といって奏でられるほどつまらない演奏はない)。今後もどのようにサウンドが進化/深化していくのか、ますます楽しみだ!
また、なんといっても選曲の妙!新曲となったイエスの「シベリアン・カートゥル」や、キング・クリムゾン「Red」など、もう涙なしには聴けないというものだ。1970年代の名曲の持つパワーに、改めて感銘を受けたのだった。最後がRushからの「燃える朝焼け」とかね、もう興奮しないわけないじゃないか。いやはや。
サインを貰いたかったのだが、せっかく買ったCDを忘れてしまった…次回レコ発ライヴには忘れないようにしないと!
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
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今回もまた伺った。今のところ4回のライヴ全てコンプリート中(笑)。CDも発売となり、今後の活動がますます楽しみになってきた!
出演:松下洋(satc)、山下友教(sa)、東秀樹(at)、加藤里志(t)、丸場慶人(t)、塩塚純(b)、川地立真(b)、田中拓也(bs)、山本真央樹(drs)
日時:2016年1月22日 20:00 start
会場:カラオケラウンジKahoo
プログラム:
Yes - Siberian Khatru
King Crimson - 21st Century Schizoid Man
Uriah Heep - Traveller in Time
Queen - Who Wants to Live Forever
King Crimson - Red
Led Zeppelin - Heartbreaker
Deep Purple - Speed King
Rush - YYZ
Yes - Heart of the Sunrise
TOTO - Child's Anthem (encore)
UK - Time to Kill (encore)
最初の頃は、ヘヴィな(サクソフォンらしからぬ)サウンドに圧倒されていたのだが、何度も聴いているせいか、聴こえてくる音を分離して、各個人のプレイを楽しむことができるようになってきた。原曲でXXXという響きだった箇所が、Tokyo Rock'n Saxの演奏ではどのように表現されているのかな、という興味とともに聴き進めていくと、新たな発見があり面白い。ちなみに、ライヴを繰り返していると、十八番的な曲と新曲での、なんとなく慣れ具合の差分が気になってくるのだが(笑)贅沢な注文というものだろう。
音作りについては、かなりベクトルが揃ってきて安定し、しかし、決して予定調和な箇所には収まろうとせず、常に全力でロックの音を表現しようとしているところに好感が持てる(「何となくこの位」といって奏でられるほどつまらない演奏はない)。今後もどのようにサウンドが進化/深化していくのか、ますます楽しみだ!
また、なんといっても選曲の妙!新曲となったイエスの「シベリアン・カートゥル」や、キング・クリムゾン「Red」など、もう涙なしには聴けないというものだ。1970年代の名曲の持つパワーに、改めて感銘を受けたのだった。最後がRushからの「燃える朝焼け」とかね、もう興奮しないわけないじゃないか。いやはや。
サインを貰いたかったのだが、せっかく買ったCDを忘れてしまった…次回レコ発ライヴには忘れないようにしないと!
2016/01/23
ヴァンサン・ダヴィッド サクソフォンリサイタル
kuri出演情報:2016/2/14開催予定のコンサート、The Portrait of JacobTVの詳細は以下のリンクから。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
----------
月曜日のことになるが、昭和音楽大学までヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏のリサイタルを聴きに伺った。現代最高のヴィルトゥオーゾの一人といって差し支えなく、だがしかしあまり来日の機会は多くなく、独奏でまるまる一本のリサイタルに接するのは初めて。
【ヴァンサン・ダヴィッド サクソフォンリサイタル】
出演:ヴァンサン・ダヴィッド(sax)、松浦真沙(pf)
日時:2016年1月18日 19:00開演
会場:昭和音楽大学ユリホール
プログラム:
C.Debussy - Rapsodie
V.David - Sillage
M.Ravel - Tzigane
P.Boulez - Dialogue de l'ombre double
L.Berio - Sequenza VIIb
V.David - Pulse
J.Massenet - "Meditation" from Thais(アンコール)
R.Noda - Mai(アンコール)
技巧レベルは想像を絶する。新幹線に乗りながら「最高時速って320km/hだよねー、速いなー」などと言っていたら、隣を600km/hのリニアモーターカーが追い抜かしていった、みたいな。一緒にトラック競技のレースをスタートして、スタートの瞬間に見えなくなったと思ったら、もう周回リードしていた、みたいな。インテルのオクタコアプロセッサ入ってますけど何か、みたいな。時代の最先端というより、時代を一歩先取りし続けているような、そんな印象を受ける。
圧倒的なダイナミクス…特に、上方向が凄い。無理な鳴らし方はせず、ごく自然に響きだけが増大していき、広いホールいっぱいに音が満たされる。「音量は控えめであることが、最近のフレンチ・サクソフォンの傾向である」などと思い込みがあったが、ダヴィッド氏の演奏を聴いて耳がすっかり洗い直されてしまった。大げさとも言えるダイナミクスの変化は、ちょっとテアトル的な要素を感じさせるものであり、
ドビュッシーは「シランクス」を吹きながら客席後方から入場し、間断なく「ラプソディ」への演奏へとなだれ込む演出。オクターブキイに水が溜まっていたのか、冒頭ちょっとヒヤリとする音も聴こえたのだが、すぐ復活。フレーズはあくまでもしなやかで、楽器が"アナログ"だということを再認識した。何百種類ものダイナミクスやアタックを使い分け、吹きつくされた「ラプソディ」に新たな生命を吹き込んだ。「シラージュ」は、自作のソプラノサクソフォンのための無伴奏曲。耳が追いつかないほどの怒涛の音並びや特殊奏法に、開いた口がふさがらない。どこをどうすりゃあんなの吹けるんじゃいな、というフレーズ、そして完璧なコントロールの連続で、サクソフォンの基準値をどこに設定すれば良いのかわからなくなってしまうほど。前半最後には、さらにパワーアップしての「ツィガーヌ」。通常音域を超えても、音楽が停滞せず、ごく自然に流れていく。
後半は、つい最近鬼籍に入ったばかりのブーレーズ氏の作品。ダヴィッド氏は、サクソフォン版の「二重の影の対話」の初演者であるが、このタイミングで、氏の演奏を聴くことができるとは思わなかった。激烈に難しい作品であるが、もはやこの流れの中では"古典"として聴こえ、また、ブーレーズの筆致の高尚さにも改めて思いを馳せることとなった。「セクエンツァVIIb」は、いつだかダヴィッド氏が来日したときにも吹いていたなあ…と思い出した。作品の構造は横の流れを観客に見せてこそ見えてくるのだ、と言わんばかりの、スポーツカーのような速さの演奏であった。最後は映像を交えたアルトサクソフォンの無伴奏曲「パルス」。かなりポップでリズミックな曲調で、聴きやすいが、技巧的には相当突っ込んだことを、安定してやってのけるものだから恐ろしい。楽譜見てみたいな…(笑)
アンコールは、まさかの「タイスの瞑想曲」、そしてまさかの野田燎「舞」(静止映像付だが、このような映像があるとは知らなかった)。いやー、最後の最後まで凄まじかった。
全曲暗譜、常識を覆す技巧や音楽の連続で、今後何を基準としてクラシック・サクソフォンを捉えていくべきなのか、困ってしまうほどだ。この驚異的な演奏を具現化する源泉は、もちろん練習にもあるのだろうが、それだけでは無いような気すらしてしまう…。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2016/01/the-portrait-of-jacobtv.html
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月曜日のことになるが、昭和音楽大学までヴァンサン・ダヴィッド Vincent David氏のリサイタルを聴きに伺った。現代最高のヴィルトゥオーゾの一人といって差し支えなく、だがしかしあまり来日の機会は多くなく、独奏でまるまる一本のリサイタルに接するのは初めて。
【ヴァンサン・ダヴィッド サクソフォンリサイタル】
出演:ヴァンサン・ダヴィッド(sax)、松浦真沙(pf)
日時:2016年1月18日 19:00開演
会場:昭和音楽大学ユリホール
プログラム:
C.Debussy - Rapsodie
V.David - Sillage
M.Ravel - Tzigane
P.Boulez - Dialogue de l'ombre double
L.Berio - Sequenza VIIb
V.David - Pulse
J.Massenet - "Meditation" from Thais(アンコール)
R.Noda - Mai(アンコール)
技巧レベルは想像を絶する。新幹線に乗りながら「最高時速って320km/hだよねー、速いなー」などと言っていたら、隣を600km/hのリニアモーターカーが追い抜かしていった、みたいな。一緒にトラック競技のレースをスタートして、スタートの瞬間に見えなくなったと思ったら、もう周回リードしていた、みたいな。インテルのオクタコアプロセッサ入ってますけど何か、みたいな。時代の最先端というより、時代を一歩先取りし続けているような、そんな印象を受ける。
圧倒的なダイナミクス…特に、上方向が凄い。無理な鳴らし方はせず、ごく自然に響きだけが増大していき、広いホールいっぱいに音が満たされる。「音量は控えめであることが、最近のフレンチ・サクソフォンの傾向である」などと思い込みがあったが、ダヴィッド氏の演奏を聴いて耳がすっかり洗い直されてしまった。大げさとも言えるダイナミクスの変化は、ちょっとテアトル的な要素を感じさせるものであり、
ドビュッシーは「シランクス」を吹きながら客席後方から入場し、間断なく「ラプソディ」への演奏へとなだれ込む演出。オクターブキイに水が溜まっていたのか、冒頭ちょっとヒヤリとする音も聴こえたのだが、すぐ復活。フレーズはあくまでもしなやかで、楽器が"アナログ"だということを再認識した。何百種類ものダイナミクスやアタックを使い分け、吹きつくされた「ラプソディ」に新たな生命を吹き込んだ。「シラージュ」は、自作のソプラノサクソフォンのための無伴奏曲。耳が追いつかないほどの怒涛の音並びや特殊奏法に、開いた口がふさがらない。どこをどうすりゃあんなの吹けるんじゃいな、というフレーズ、そして完璧なコントロールの連続で、サクソフォンの基準値をどこに設定すれば良いのかわからなくなってしまうほど。前半最後には、さらにパワーアップしての「ツィガーヌ」。通常音域を超えても、音楽が停滞せず、ごく自然に流れていく。
後半は、つい最近鬼籍に入ったばかりのブーレーズ氏の作品。ダヴィッド氏は、サクソフォン版の「二重の影の対話」の初演者であるが、このタイミングで、氏の演奏を聴くことができるとは思わなかった。激烈に難しい作品であるが、もはやこの流れの中では"古典"として聴こえ、また、ブーレーズの筆致の高尚さにも改めて思いを馳せることとなった。「セクエンツァVIIb」は、いつだかダヴィッド氏が来日したときにも吹いていたなあ…と思い出した。作品の構造は横の流れを観客に見せてこそ見えてくるのだ、と言わんばかりの、スポーツカーのような速さの演奏であった。最後は映像を交えたアルトサクソフォンの無伴奏曲「パルス」。かなりポップでリズミックな曲調で、聴きやすいが、技巧的には相当突っ込んだことを、安定してやってのけるものだから恐ろしい。楽譜見てみたいな…(笑)
アンコールは、まさかの「タイスの瞑想曲」、そしてまさかの野田燎「舞」(静止映像付だが、このような映像があるとは知らなかった)。いやー、最後の最後まで凄まじかった。
全曲暗譜、常識を覆す技巧や音楽の連続で、今後何を基準としてクラシック・サクソフォンを捉えていくべきなのか、困ってしまうほどだ。この驚異的な演奏を具現化する源泉は、もちろん練習にもあるのだろうが、それだけでは無いような気すらしてしまう…。
2016/01/20
第2回横浜サクソフォンアンサンブル演奏会
横浜サクソフォンアンサンブル(YSA)の第二回演奏会を聴きに伺った。昨年に引き続き、とても楽しい時間を過ごすことができたのだった。
最近は、仕事が忙しかったり、その他諸々で精神的に荒んでおり、おまけに金曜から体調を崩すなど散々だったのだが、今日の演奏を聴いてずいぶんと音楽に救われる思いがしたのだった。普段は気付かないけれど、やっぱり、楽しい音楽は周りに無くてはならないものなのだと、感じ入った次第。
【第1回横浜サクソフォンアンサンブル演奏会】
出演:神奈川にゆかりのあるサクソフォン奏者、宗貞啓二、田口雄太(指揮)
日時:2016年1月16日 18:00開演
会場:都筑公会堂
プログラム:
M.ラヴェル/山田悠人 - 道化師の朝
H.マンシーニ/名田綾子 - ムーンリバー
M.ルグラン/名田綾子 - 双子姉妹の歌
長生淳 - 八重奏曲
真島俊夫 - ラ・セーヌ
真島俊夫 - シーガル
J.ヴァン=デル・ロースト/柏原卓之 - アルセナール
C.M.シェーンベルク/金井宏光 - レ・ミゼラブル
J.ヴァン=デル・ロースト/柏原卓之 - カンタベリー・コラール
W.R.ワーグナー - ワルキューレの騎行
小椋佳&見岳章 - 美空ひばりメドレー
和泉宏隆 - 宝島
岡野貞一/旭井翔一 - 浜辺の歌(アンコール)
和泉宏隆 - オーメンズ・オブ・ラブ(アンコール)
音大生・プロフェッショナルのステージは、プログラムとしてはかなりオーソドックスながら、各団体が「YSA」というブランドを一段階上へとステップアップさせるような、そんな気概を感じた。音大生のアンサンブル、木村有沙さんフィーチャー、男性八重奏、女性八重奏、原博巳さんをフィーチャーした「シーガル」等、どれも個性的な演奏を楽しんだ。見た目にも変化があり、編成は一曲ごとに違い、また曲のスタイルも様々。時間は少々長かったが、まったく飽きることなく楽しく聴くことができた。
ざっと感想を述べていくと…アンサンブルとして練りこまれていると感じたのは、「ラ・セーヌ」かなあ。女性らしい繊細なニュアンスの変化を楽しんだ。長生「八重奏曲」は、現代風のスタイルで吹くとあんなに軽やかになるのか、と驚いた。個人的にはもっとガツガツした感じが好きなのだが…。木村さんの、このステージの中で独自とも言える世界観は聴衆をずいぶんと魅了していたようだ。音大生チームは、一発目、かつ作品としても聴かせるのが難しいということもあって少々堅さがみられたかな、でもあの会場の雰囲気の中でかなり健闘していた。原さんは、もうさすがとしか言いようがなく、格の違いがここまで出てしまうのかと、改めて驚かされたのだった。進行は松下くんのMCによる。脱力系(褒め言葉です)の和やかな口上に、もしかしたら驚いた方もおられるかもしれないのだが、私自身はそれを彼の一つの魅力だと思っている…とは買いかぶりすぎかな。
後半、宗貞先生、そして田口雄太氏の指揮により、プロアマ混合、総勢130名ほどのラージアンサンブル演奏が披露された。耳馴染みのある曲を中心に演奏されたが、特に「ワルキューレの騎行」の集中力(山田氏の編曲は、実に手の混んだものであった)や、「カンタベリー・コラール」の集中力と、分厚い響きには感銘を受けたのだった。体調を崩していたこともあって、「美空ひばりメドレー」あたりから音が分離して聴こえなくなってしまったのだが、それでも最後までしっかりと、祝祭的な雰囲気を楽しむことができた。「宝島」のお祭り騒ぎも、サクソフォンならでは、サクソフォンだからこその楽しさを存分に感じさせるものであった。
アンコールで、まさかの旭井翔一編の「浜辺の歌」。オリジナリティある"響き"を追求したアレンジが印象的。最後は手拍子まで入っての「オーメンズ・オブ・ラヴ」。大盛り上がりの中終演となった。
運営の大変さはきっとあるだろうが、ぜひこれからも続けていってほしいなと思う次第。
最近は、仕事が忙しかったり、その他諸々で精神的に荒んでおり、おまけに金曜から体調を崩すなど散々だったのだが、今日の演奏を聴いてずいぶんと音楽に救われる思いがしたのだった。普段は気付かないけれど、やっぱり、楽しい音楽は周りに無くてはならないものなのだと、感じ入った次第。
【第1回横浜サクソフォンアンサンブル演奏会】
出演:神奈川にゆかりのあるサクソフォン奏者、宗貞啓二、田口雄太(指揮)
日時:2016年1月16日 18:00開演
会場:都筑公会堂
プログラム:
M.ラヴェル/山田悠人 - 道化師の朝
H.マンシーニ/名田綾子 - ムーンリバー
M.ルグラン/名田綾子 - 双子姉妹の歌
長生淳 - 八重奏曲
真島俊夫 - ラ・セーヌ
真島俊夫 - シーガル
J.ヴァン=デル・ロースト/柏原卓之 - アルセナール
C.M.シェーンベルク/金井宏光 - レ・ミゼラブル
J.ヴァン=デル・ロースト/柏原卓之 - カンタベリー・コラール
W.R.ワーグナー - ワルキューレの騎行
小椋佳&見岳章 - 美空ひばりメドレー
和泉宏隆 - 宝島
岡野貞一/旭井翔一 - 浜辺の歌(アンコール)
和泉宏隆 - オーメンズ・オブ・ラブ(アンコール)
音大生・プロフェッショナルのステージは、プログラムとしてはかなりオーソドックスながら、各団体が「YSA」というブランドを一段階上へとステップアップさせるような、そんな気概を感じた。音大生のアンサンブル、木村有沙さんフィーチャー、男性八重奏、女性八重奏、原博巳さんをフィーチャーした「シーガル」等、どれも個性的な演奏を楽しんだ。見た目にも変化があり、編成は一曲ごとに違い、また曲のスタイルも様々。時間は少々長かったが、まったく飽きることなく楽しく聴くことができた。
ざっと感想を述べていくと…アンサンブルとして練りこまれていると感じたのは、「ラ・セーヌ」かなあ。女性らしい繊細なニュアンスの変化を楽しんだ。長生「八重奏曲」は、現代風のスタイルで吹くとあんなに軽やかになるのか、と驚いた。個人的にはもっとガツガツした感じが好きなのだが…。木村さんの、このステージの中で独自とも言える世界観は聴衆をずいぶんと魅了していたようだ。音大生チームは、一発目、かつ作品としても聴かせるのが難しいということもあって少々堅さがみられたかな、でもあの会場の雰囲気の中でかなり健闘していた。原さんは、もうさすがとしか言いようがなく、格の違いがここまで出てしまうのかと、改めて驚かされたのだった。進行は松下くんのMCによる。脱力系(褒め言葉です)の和やかな口上に、もしかしたら驚いた方もおられるかもしれないのだが、私自身はそれを彼の一つの魅力だと思っている…とは買いかぶりすぎかな。
後半、宗貞先生、そして田口雄太氏の指揮により、プロアマ混合、総勢130名ほどのラージアンサンブル演奏が披露された。耳馴染みのある曲を中心に演奏されたが、特に「ワルキューレの騎行」の集中力(山田氏の編曲は、実に手の混んだものであった)や、「カンタベリー・コラール」の集中力と、分厚い響きには感銘を受けたのだった。体調を崩していたこともあって、「美空ひばりメドレー」あたりから音が分離して聴こえなくなってしまったのだが、それでも最後までしっかりと、祝祭的な雰囲気を楽しむことができた。「宝島」のお祭り騒ぎも、サクソフォンならでは、サクソフォンだからこその楽しさを存分に感じさせるものであった。
アンコールで、まさかの旭井翔一編の「浜辺の歌」。オリジナリティある"響き"を追求したアレンジが印象的。最後は手拍子まで入っての「オーメンズ・オブ・ラヴ」。大盛り上がりの中終演となった。
運営の大変さはきっとあるだろうが、ぜひこれからも続けていってほしいなと思う次第。
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