2015/02/14

John Edward Kelly氏の訃報

サクソフォン奏者、シガード・ラッシャー Sigurd Rascherの高弟、John Edward Kelly氏。そのケリー氏の訃報が、Carica Rascher氏(Sigurd Rascher氏の娘)のFB情報に掲載されていた。がんとの闘病を経て、2月12日に亡くなったとのことだ。まだ56歳、早すぎる死である…。大変残念なことだ。

1958年生まれ。アメリカ出身で、サクソフォンをシガード・ラッシャー氏に師事。1981年にはラッシャー・サクソフォン四重奏団に参加。1994年にはAlloys Ensemble(サクソフォン、チェロ、ピアノ、パーカッションという編成)を創設。デュッセルドルフのシューマン・アカデミー、オスロのノルウェー・アカデミーで教鞭をとった。コンサートでの演奏、レコーディングも多い。後年には、ニューヨークのArcos Chamber Orchestraの指揮者として活躍していた。

私は、ケリー氏の音をライヴで聴いたことはない。しかし、幸いな事に多くの録音が存在している。最も有名なのは、イベール「室内小協奏曲」、マルタン「バラード」、ラーション「協奏曲」が収録されたこのArte Nova盤だろう。価格が安く、有名な作品が収録されていることもあって、よく出回っている盤のようだ。入手し、演奏を聴いてたまげた方も多いのではないだろうか。いや、決して演奏が悪いというわけではないのだが、いわゆる"華麗なフランス流派の演奏"を期待して聴き始めると、面食らうこと請け合いなのだ。

この理由はこれまでにも何度かこのブログで取り上げたとおり。例えば音色については、選択しているマウスピースに多くの要因がある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2007/12/blog-post_08.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2011/10/blog-post_27.html

ケリー氏を始めとするラッシャー派の演奏は、フレージング・センス(ここで"センス"という言葉を、"耳あたりの良い"という意味で使う)という点で言えば、残念ながらフレンチ・スタイルと比較し、受け入れられにくいと言えるだろう。音色に関しても、ヴィンテージ楽器、そしてチェンバーが広いマウスピースを使うことにより、ややこもり気味で落ち着いた(悪く言えば地味な)ものだ。しかし、聴きこんでいく中で不思議とその演奏に魅力を感じ始めるのだから、不思議である。一聴してこもり気味だと思われた音色は、様々な録音を収集する中で、とんでもなく純度の高い音色だということを気づく。無菌室で培養したような、ノイズを取り去った音色、そして、発音のクリアさや一音一音のとんでもない安定さに驚嘆する。バロック作品における見事な演奏、現代作品への積極的な取り組みなども、高く評価されるべきである。

マイケル・シーゲル著「サキソフォン物語」に、ケリー氏のインタビューが掲載されている。ケリー氏が、クラシック・サクソフォンというものをどのように捉えていたかがよく分かるコメントだ。

「わたしの上級セミナーに学生がはいると、楽句を演奏することも、その作品を自分の音楽体験にすることも、自分の体験を聴衆に伝えることも知らない。それで、どんな作曲家を知っているかときいてみる。『ブラームスは』『いいえ』『シューベルトは』『え、だれです』これが音楽院に通うサキソフォン奏者だ。サキソフォン奏者はほかのサキソフォン奏者に影響されたり、手本を求めたりするが、とんでもない間違いでね。だれかが演奏するとき聴きたいのは西洋音楽の曲の来歴であって、サキソフォン奏者の来歴ではない」

ラッシャー氏はもちろん、このたび鬼籍へと入ったケリー氏も、クラシック・サクソフォンを、真のクラシック楽器として世間に認めさせようとしていた。サクソフォンがサクソフォンの中で留まらず、外の世界へ飛び出し、認めてもらうための、彼らなりのアプローチを試行錯誤・理論構築し、演奏・指導に邁進していた。サクソフォン界はまたひとり、一流の奏者を失ってしまったのだ。

追悼の意味を込めて、YouTube上の映像をご紹介。ミヒャエル・デンホフ Michael Denhoffの「Gegen-Satze」である。ソプラノ:カリーナ・ラッシャー、アルト:ジョン=エドワルド・ケリー、テナー:ブルース・ワインバーガー、バリトン:リンダ・バングスという、超大御所メンバー(シガード・ラッシャーが抜けた後のメンバー構成)。


あるあるですが

最近買った、ノートPCに関する記事(→http://kurisaxo.blogspot.jp/2015/02/pc.html)を書いた次の日に、eMMCの容量倍増モデル(32Gbytes→64Gbytes)が同一価格で発表されるとは…。まあ、ガジェット好きの宿命というか何というか。しかし、たった2ヶ月でモデルチェンジとは驚かされるなあ。

詳細は下記リンクより。eMMCの容量が増え、カラバリが追加。他のスペックは同一とのこと。
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1502/13/news101.html

軽くてスタイリッシュ。なんと、重量はMacBook Air 11インチモデルを下回るのだ。このようなPCを求めている方で、コストパフォーマンスを重視される方(なんと30000円台!)には非常におすすめできる。さっそく、Amazonも取り扱いを開始した。

2015/02/12

Green Ray Saxophone Quartetのバレンタインコンサート

オーケストラ・ルゼルの演奏会後、半蔵門線に乗って表参道へ。写真家・井村重人さんのフォトスタジオ、「アーニーズスタジオ」で開かれるコンサートに伺った。今回は、Green Ray Saxophone Quartetが出演。

【Green Ray Saxophone Quartet: Valentine Studio Concert】
出演:Green Ray Saxophone Quartet(猪俣明日美、内田しおり、川﨑有記、池原亜紀)
日時:2015年2月11日 18:00開演
会場:アーニーズスタジオ
プログラム:
M.トーク - July
J.M.ルクレール - ソナタト調
C.コリア/旭井翔一 - アルマンド・ルンバ S&B版
伊藤康英 - サクソフォン・ドルチェ
キャロル・フロリオ - 四重奏曲
F.メンデルスゾーン=バルトルディ - 前奏曲とフーガ, op.35-5
R.ロジャース/Yuppi - マイ・ファニー・ヴァレンタイン

Green Ray Saxophone Quartetの演奏会は、これまでリサイタルを2回聴いたことがある。
http://kurisaxo.blogspot.jp/2012/03/green-ray-saxophone-quartet-1st-concert.html
http://kurisaxo.blogspot.jp/2014/11/green-ray-saxophone-quartet-3rd-concert.html
選曲/演奏、いずれも魅力的なカルテットだ。第1回コンサートでの「ランプリュヴ」や「July(今回の演奏会でも取り上げられていた)」、また第3回コンサートでの「倖せヲ呼ぶ嶌」など、音楽的に優れた作品を(誰の嗅覚なのかわからないが)探し出し、見事に提示してみせる様は、このくらいの世代のカルテットでは稀なことである。

今回も、バレンタイン・コンサートと銘打ちながら、まさかの1曲目からの「July」!そして、チック・コリア「アルマンド・ルンバ」のS&B二重奏版、さらにはフロリオやメンデルスゾーンの純クラシック等々と、驚きの選曲だった。デュオやトリオも演奏されたが(一番"面白かった"演奏は、なんとルクレール)、やはりキャロル・フロリオ以降の四重奏の響きが耳に残る。フロリオ~メンデルスゾーンの流れは、とても感動的。時代が近いこともあり、なんだか一曲のつながりのように聴こえた。

「サクソフォン・ドルチェ」は、アルトサクソフォン3本の作品で、これは「ジェラート・コン・カフェ」と「チョコレート・ダモーレ」のメドレー。初めて聴いたが、3重奏、そして同音域を活かした作品で、味わい深く、これはちょっと演奏してみたいとも思った。伊藤康英先生の、一口菓子のような作品の魅力って何物にも代えがたいものがあるなあ。

最後の、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」では、粋な演出とプチ・プレゼントも。選曲、演奏、その他まで、メンバーのこだわりが随所に感じられるコンサートであった。演奏会後は、そのまま会場で打ち上げ。なんだかんだ3時間くらい続いて、盛り上がったのだった。

楽しかったなあ。次の定期演奏会も期待!

モバイルノートPCを買った

ノートPC、Asus X205TAを数週間前に購入した。30200円くらいだった。タブレットにはあまり興味がなくて(その昔、格安の某タブレットを買ったのだが、使わなくなってしまった)、キーボードが付いている、リーズナブルな端末があればと思っていたのだ。

30000円程度でWindowsが載った軽いノートPCは、その要望にぴったりだった。メール書きや楽譜書き等々に、すでに3回ほど外での長時間作業に使っているが、処理速度は相応ながら、軽くて(なんと1kgを切る)、スリムで、またバッテリーも持つ…良いことずくめ。テザリングでインターネットにも接続して使っている。これは活用の機会が増えそうだ。

2015/02/11

オーケストラ・ルゼル 第15回演奏会

すみだトリフォニーホールの大ホールに入るのはいつ以来だろう。何年も前に、N響のミュージック・トゥモローを聴きに来たことがあるのだが、それ以来かもしれない。本日は、見た目満席、というほどの入り。開演10分前くらいに飛び込んだのだが、なかなか座る場所を見つけられないほどだった。

【オーケストラ・ルゼル 第15回演奏会】
出演:オーケストラ・ルゼル、佐々木新平(指揮)、千田寧子(オルガン)
日時:2015年2月11日 13:30開演
会場:すみだトリフォニーホール・大ホール
プログラム:
C.サン=サーンス - 歌劇「サムソンとデリラ」よりバッカナール
M.ラヴェル - ラ・ヴァルス
C.サン=サーンス - 交響曲第3番(オルガン:千田寧子)

なんというプログラム!オール・フレンチで、フランス後期ロマン~近代派の名曲を取り揃えた、アマチュアのオーケストラながら意欲的なものである。超難曲「ラ・ヴァルス」を始め、練習はなかなかに大変だったことだろうと推察するが、演奏そのものも、演奏会としても、とても満足するものであった。

時折アンサンブルの精度としては甘い箇所があるものの、盛り上がりの作り方はなかなかのもの。もちろん指揮者の旗振りによるところもあるだろうが、メンバーが比較的若いところも、その一因となっているはずだ。そういえば、アマチュアのオーケストラって東京に、関東に、いくつくらいあるのだろうか。私も昨年から今回を含めて3団体ほど聴いているが、おそらく他にもたくさんあるのだろう。

「バッカナール」での後半への煽りは、演奏者の"ノリ"と指揮者の引っ張りが見事に結実した結果である。客席も盛り上がった!「ラ・ヴァルス」は、普段私自身が聴いている演奏(バーンスタインxフランス国立管とか、クリュイタンスxパリ音楽院管とか)にはさすがに追いつけない部分があるが、全体の響きの作り方などはぐっとくるものがあった。何よりその旺盛なチャレンジ精神に大拍手である。「交響曲第3番」は、これはもう否応なしに盛り上がりますね。オルガンとオーケストラが、徐々に濃密な絡み合いを見せ、後半に向けて見事に融合していく様を楽しんだ。アンコールはなかった。たしかに「交響曲第3番」のあとに持ってくるもの…といっても、想像がつかないな(笑)。

いやはや。それにしても、オーケストラって良いですね。チューニングの音ですら、上質なアペリティフのよう。弦が弾いたときの、ふわっとした空気感(録音では楽しめない)。各管楽器の、まるでソリストのような扱い。視覚的にも聴覚的にも、管楽アンサンブルにはなかなか真似できない瞬間を、各所で楽しんだ。何よりも「これこれ!」と膝を打つような名曲の数々!である。サクソフォンは定席がないからなあ(苦笑)。

2015/02/09

浜松アカデミーの「ボレロ」 on YouTube

第20回浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバル「オープニングコンサート」で演奏された、モーリス・ラヴェル「ボレロ」の動画が公式にYouTubeにアップロードされている。

サクソフォンはテナーがオーティス・マーフィ氏、ソプラノがジャン=イヴ・フルモー氏だ!なんと豪華な!実際の演奏は、想像していた内容からすると個人的には「あれれ?」となってしまったが…。

"City Noir (Nonesuch)"がグラミー賞"Best Orchestral Performance"受賞!

ティモシー・マカリスター Timothy McAllister氏が参加したアルバム「John Adams - City Noir (Nonesuch)」は、グラミー賞の"Best Orchestral Performance"と"Best Engineered (Classical) Album"にノミネートされていた。

先ほど賞の発表が行われたのだが、なんと"Best Orchestral Performance"を受賞したとのこと!素晴らしい!公式発表は、このリンクから参照することができる。いろんなジャンルがあるのだなあ。

たしかに素晴らしいアルバムなので、まだ聴いていない方はぜひ耳にしていただきたいところ(以前書いたレビューはこちら)。

過去の受賞者リストは、こちらから(2015年の結果がもう追記されている)。サクソフォン協奏曲を含むアルバムの受賞は初めて!