2013/03/09

第32回サクソフォーン・フェスティバル(その2)

♪アドルフ・サックス工房からの枝分かれ:雲井雅人、宮崎真一
1. アドルフ・サックス製(1869年)
J.P.マルティーニ - 愛の喜び
G.ビゼー - アルルの女より前奏曲、間奏曲
2. ビュッフェ・クランポン社製(1875年頃)
G.ビゼー - アルルの女より間奏曲
3. エドゥアルド・サックス製(1915年頃)
M.ムソルグスキー - 展覧会の絵より古城
モンシー - ゴルコンデの王妃(?)
4. セルマー社製Model26(1926年)
C.サン=サーンス - 白鳥
C.サン=サーンス - 白鳥(ブッシャーのマウスピース使用)
5. コーン社製6M "Naked Lady"(1945年)
G.F.ヘンデル - オンブラ・マイ・フ
ドリー - セレナード(?)
再び、3. エドゥアルド・サックス製
F.フォレ - 牧人たち
F.コンベル - マールボロの主題による変奏曲

5つのサクソフォンを時代順に演奏しながら、合間に雲井氏と宮崎氏のトークが挟まれる。お二人の漫才のようなやり取りが面白く(悠々自適?といった雰囲気の雲井氏と、きっちり解説を挟み込んでくる宮崎氏、といった具合)、そのトークも面白かった。アドルフ・サックス工房制作の楽器(宮崎氏コレクション)による演奏は、現代のサクソフォンを知る向きからすれば想像すらできない、まるで金属製のおもちゃのような軽い音…しかし、まぎれもなくこの音こそがサクソフォンの原点なのであり、より肉声に近いという感覚も得ることができた。セルマーサクソフォンは、すでに現代のエッジの効いた大音量サウンドの片鱗を見せており、アンサンブルや吹奏楽の中に混ざっていても気づかないかもしれない。この日一番の衝撃は、"Naked Lady"と呼ばれるアメリカのサクソフォンである。音程や操作性に改良が加えられながら、原点とも言えるアドルフ・サックス工房の雰囲気を多分に残していることに驚いた。いつかGarage Sのブースで吹いたブッシャーのサクソフォン+ラッシャーのマウスピース、の組み合わせを思い出した。最後の「マールボロの主題による変奏曲」は、雲井氏がエドゥアルド・サックスを携えたときの十八番であるが、何度聴いてもまた新しい感動を得ることができる。大喝采!

♪フェスティバルコンサート:伊藤あさぎ
A.マルチェロ - 協奏曲
帰国後も活躍の伊藤あさぎさん、こういった機会で聴くことができたのは嬉しい。驚異的なほど響く美しいソプラノサクソフォンの音が印象的だ。音数の少ない作品で、ただ演奏するだけでは平凡になってしまうが、アタックやアクセントの取り扱いはバロック音楽の作法そのものだった。バックの弦楽四重奏は意外とフラットに音を扱っていたため、サクソフォンのほうがよほど古楽器らしくらしく聴こえた。ちなみに、ダグラス・オコナー氏も大絶賛。"So grace!!(優雅な・優美な)"と言っていた。3/17のリサイタルが楽しみだなあ!

♪フェスティバルコンサート:ジェローム・ララン
L.スタイン -
もう日本ではすっかりおなじみとなったジェローム。2006年の来日のときからすると、隔世の感がある。もしかして、フェスティバルコンサートでの外国人奏者が抜擢は初めてだろうか(間違っていたらごめんなさい)。
ジェロームの演奏は、技術的な安定性はもちろんのこと、時折熱さを交えてくるところに魅力があると思う。うねるような高速フレーズを駆け抜ける様子など、実にカッコよいことだ。演奏はとても良かったのだが、作品としては、演奏機会がなくなってしまった理由がわかるというか…それほど良い作品ではないように感じた。

♪フェスティバルコンサート:井上麻子
石毛里佳 - フラジャイル
井上麻子さんは、最近ちょくちょく関東で聴く機会が増えてきて嬉しい。井上さんの骨太な演奏がわりと好みで、いつかフルリサイタル(デニゾフやロベールなどの、ネオ・クラシカル作品がすごい演奏になりそう)を聴いてみたいなと思っている。不思議な温度を持つ作品で、サクソフォンも弦楽四重奏も熱演。ときどきゾクッとするような響きがあった。初演は田村真寛氏が行ったそうだ。

♪フェスティバルコンサート:上野耕平
G.ガーシュウィン - "ポーギーとベス"メドレー
このガーシュウィンのアレンジは、フレデリック・ヘムケ氏がCDに吹き込んでいるものと同じなのだそうだ。ガーシュウィンのメドレーと聞いてかなりテクニカルな譜面を想像していたのだが、意外にも音数はずっと少なく、ガーシュウィンのメロディメーカーとしての側面を見せつけるようなアレンジ。中間部に一瞬だけ走句が出てくるが、あとはほとんどゆったり。上野耕平氏、なんだか舞台に出てくるときから貫禄がありすぎだ(笑)。上記のようなアレンジのためか、特に全編にわたって、上野氏の「うた」の扱い方を聴けたのは、とても嬉しかった。音やヴィブラート、フレージングが丸裸になるが、隅から隅までセンスよく完成されており、恐れ入る。

♪フェスティバルコンサート:林田和之
L.E.ラーション - サクソフォン協奏曲
成本理香氏によるこの弦楽四重奏とピアノのためのアレンジは、雲井雅人氏のリサイタルのために書かれたもの。まさか再び聴くことができるとは思わなかった。曲についてはいまさら説明するまでもないだろう。新古典主義ともいうべき作風(まるでモーツァルトみたい)に、ヒロイックなサクソフォンの独奏フレーズを乗せた名曲だ。林田氏のサクソフォン・ソロを初めて聴いたのは、やはりフェスティバルでの石井眞木「オルタネーションI」の演奏だった。その時の名演をう再び思い出すような、やはり素晴らしい演奏で、終始興奮しっぱなしだった。その音色は、直前までの4人と比較して、より小ホールで聴いたアドルフ・サックスの音色からの強いリンクを感じた。

♪フェスティバルオーケストラ:池上政人指揮フェスティバルオーケストラ
A.ドヴォルザーク - 交響曲第9番より第4楽章
毎年恒例のフェスオケ。細かいアンサンブルなどなんのその、その場の何もかもをかなぐり捨ててフィナーレに向けて突っ走る様は、とても楽しい。なんて言ったって「祝祭」オーケストラですからねえ。この曲は超個人的に思い出の曲であるので、なんだか感慨深いものもあるのだった。コントラバスサクソフォンは、実行委員長の原博巳氏だった。

♪SAX大合奏
伊藤康英 - サクソフォンのためのファンファーレ(アルルの女)
L.v.ベートーヴェン - 歓喜の歌
J.P.スーザ - 星条旗よ永遠なれ
演奏はしなかったのだが、客席後ろのほうでフェスを反芻しつつ聴いていた。巨大なパイプオルガンの機械の中にいるような、不思議な体験ができるのだ。スーザのピッコロアンサンブル、ならぬソプラニーノアンサンブルにはシビレた(笑)。

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以上。非常に充実した一日を過ごすことができ、大満足。実行委員長をはじめとするスタッフの皆様には感謝申し上げたい。

2013/03/08

2013年協会誌編集委員会キックオフ

フェスの感想は、そろそろフェスティバルコンサートが書き終わるあたり。最後まで書いたらアップする予定。

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おなじみ、渋谷の串八珍にて、日本サクソフォーン協会機関誌"サクソフォニスト"の、Vol.24反省会兼Vol.25ネタ出し会。一週間に3回、串八珍に来るというのもなかなかレアかもしれない。

服部先生を筆頭に、中村先生、栃尾先生、上田先生、冨岡祐子さん、貝沼さん、大川千都さん、佐藤淳一さん、野村さんが集結し、次回に向けての摺り合わせを実施した。次回も面白くなりそうだ。個人的に、木下直人さんとそのコレクションに関する記事をぜひ準備したいと思っている(服部先生が切望している)。なんと4時間にわたっていろいろとお話できて楽しかった。特に佐藤さんとは、近々のマニアックな話や中長期的展望まで話せたのだった。

最後に佐藤淳一さん&野村亮太さんとともに横井氏オススメの春日亭の油そばで〆。美味しかった(そろろそふとるかも…)。

2013/03/07

ご案内:関東サクソフォンアカデミー

おなじみtfm氏が主催する千葉大学サクソフォンプロジェクトの第2弾となる"関東サクソフォンアカデミー"が今週末に迫っている。ちなみに私は「はじめての即興演奏」「全員合奏ラージアンサンブル」に参加予定。けっこうギリギリまで参加者は募集しているようなので、ご興味ある方はこちらのページからコンタクトを。

こういう企画、いいなあと思う。本当に受けたい・本当に嬉しいワークショップやレッスンが開催されることはまれで、自分で企画しなければ実現しないものだ。私にはそのパワーも人脈も何もないのだが、そういった企画を実現してしまうtfm氏の行動力には、いつものことながら非常に驚かされる。

サックス吹きの方は観覧のみならず、ぜひラージやワークショップにも参加してみてください。

【関東サクソフォンアカデミー】
主催:千葉大学 Saxophone Project
日程:2013年3月9日(土) 13:00開演(参加者集合時間 11:00)
会場:千葉市美浜文化ホール・メインホール(千葉県千葉市美浜区真砂5-15-2)
アドバイザー・講師:大石将紀
入場料:無料
内容:各アンサンブル団体による発表
   大石将紀氏によるアンサンブル公開レッスン
   大石将紀氏によるワークショップ「はじめての即興演奏」
   全員合奏ラージアンサンブル 曲目:ラデツキー行進曲

関東のサクソフォン団体を千葉に集め、共にサクソフォンについて学ぶと共に交流を深めようという会です。講師としてソロ・アンサンブルと大活躍中の大石将紀先生をお招きし、様々なご指導をしていただきます。

2013/03/04

再掲:明日のダグラス・オコナー氏リサイタル!

フェスのレポートの続きは後日にまわす。現在来日中のサクソフォン奏者、ダグラス・オコナー氏のリサイタルが明日に迫っているので、再度ご紹介。

クラシック・サクソフォンの世界では、第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際コンクールで第2位を得た奏者として有名だ。その際の本選でのトマジの演奏は、非常にダイナミックなもので、当時とても感銘を受けたものだ。


こちらはクリスチャン・ロバ「ジャングル」の演奏。YouTubeのサイトにコメントでも残っているが、ロバ氏はこの動画を観て「ワークソング」をオコナー氏に献呈しようと考えたようだ。


「ワークソング」の演奏動画。昨日もフェスの会場で多くの方が堪能したと思われる同曲は、ポップスの影響下にあることが明確だが、オコナー氏はジャズを学んだ経験もあるとのことで、だからこそのあの大局的なビートを感じる演奏ができるのかなあ、などとも思った。


現在は、Naval Academy Band…いわゆる「アメリカ海軍バンド」の2大巨頭をNavy Bandとともに成す吹奏楽団のアルトサクソフォン奏者。ロンデックス国際に入賞しているのに、なぜ去年の世界サクソフォンコングレスに来なかったのかと尋ねたら、入隊直後のブートキャンプ中だったとのこと。ブートキャンプの最中は「腕立て伏せ(pushing up)ばっかりしていたよ」と笑っていた。

ということで、明日の演奏会情報。強くおすすめする次第。特に、フェスティバルで「ワークソング」を聴きそびれた方、来なければ損ですよ!バッハからコンテンポラリーまで、なかなか凄い演奏会になりそうだ。

【ダグラス・オコナー コンサート】
出演:ダグラス・オコナー(sax)、黒岩コウキ(pf)
日時:2013年3月5日(月曜)18:30開場19:00開演
会場:アクタス渋谷6Fアンナホール
料金:一般2500円、学生2000円(当日各500円増)
プログラム:
R.ムチンスキー - ソナタ
J.S.バッハ - バイオリンパルティータ2番よりシャコンヌ
W.オルブライト - ソナタ
C.ロバ - ワークソング
C.カスター - ジェリーフィッシュ(クラゲ)
S.ラフマニノフ - "チェロソナタ"よりアンダンテ
B.セコーン - グラディエント→ここから試聴できます
チケット:
yo_14th@yahoo.co.jp(松下)

同時にマスタークラスも予定されているとのこと。受講希望の方は、同じく松下さん(yo_14th@yahoo.co.jp)まで連絡を。

アメリカ・メリーランド州出身。イーストマン音楽学校を卒業後、メリーランド大学にてサクソフォンクラスの修士・博士号を取得。オークレアのウィスコンシン大学にてサクソフォンのアシスタント・ディレクターを務めたのち、海軍バンドに入隊。これまでにサクソフォンをデール・アンダーウッド、ティモシー・ロバーツ、チェン・クワン・リン、レイモン・リッカーに師事した。2008年第2回ジャン=マリー・ロンデックス国際サクソフォンコンクール第2位入賞。第15回世界サクソフォンコングレス(タイ・バンコク)にて、クリスチャン・ロバの15番目のエチュード「Worksong」を初演した。また、タイ・フィルハーモニー管弦楽団とともにBaljinder Sekhonのサクソフォーン協奏曲の世界初演を行った。これまでにソリストとして、ナショナル管弦楽団、シンフォニー・イン・C、ムジカ·ノヴァ、イーストマンジャズアンサンブル、等と共演。Red Line Saxophone Quartetのソプラノサクソフォン奏者。

第32回サクソフォーン・フェスティバル(その1)

僭越ながらフェスの感想を。

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♪A会員によるプレミアムコンサート:久慈明広
J.C.ウォーレイ - ソナタ
ケネス・チェもレコーディングしているウォーレイの「ソナタ」。あまり日本では演奏される曲ではなく、ライヴで聴く機会が巡ってくるとは思わなかった。自衛隊音楽隊のサクソフォン奏者である久慈氏の演奏は、大局的な部分からスナップショット的な部分まで隅々まで良くコントロールされており、まるでCDでも聴いているかのようだった。もし機会があれば、クレストンとか聴いてみたいかも。

♪A会員によるプレミアムコンサート:白井奈緒美
酒井健治 - イニシャルS1、イニシャルS2
白井奈緒美さんの演奏による「イニシャルS1」「イニシャルS2」。「イニシャルS1(=イニシャルS)」は、以前みなとみらいで大石さんの演奏を聴いたことがあったのだが、その時との演奏スタイルの違いを楽しんだ。もちろん、技術的・音楽的に完成されていることは、言うまでもない。「イニシャルS2」は、ソプラノ(声楽)とサクソフォンで演奏される。大変な難曲だが、2人の息のあったすばらしい演奏に舌を巻いた。「舵手の書」と違って、執拗にサクソフォンと声楽を近傍で絡めていこうとするような、作曲家の強烈な意志を感じる。

♪A会員によるプレミアムコンサート:デュオ宗貞
D.ショスタコーヴィチ - トリオ第一番
ショスタコーヴィチのトリオではやはり宗貞先生のテナーの演奏に感銘を受けた。このテナーの音色が醸す不思議な空気感は、宗貞先生以外の演奏では聴いたことがない。最近の流行である羽のような軽さとも違い、純国産とでも形容できるようなものとも違う、その中間から上方に向かっているような…上手く表現できないが。ピアニストのダイナミックな表現は、2本のサクソフォンと実に良くマッチしていたと思う。

♪A会員によるプレミアムコンサート:ダグラス・オコナー
J.S.バッハ - 無伴奏パルティータ第2番よりシャコンヌ
C.ロバ - ワークソング
来日して次の日に無伴奏2曲とは、、、いずれも暗譜での演奏。バッハは、おそらくオリジナルのアレンジなのだろうが、重音部分はほぼすべて単音楽器にアダプテーションされたようなもの。循環呼吸や相当高音部のフラジオレットも使いながら、14分に及ぶ大曲を吹ききった。さすがに高音の連結部など若干無理がある部分もあったが、次の十八番「ワークソング」では本領発揮…どころか、とんでもない演奏だった!超々高速で音をばらまきながら、非常に鮮烈な印象を聴衆に与えていた。ミーハ・ロギーナ氏や、ヴァンサン・ダヴィッド氏が来日したときのような、強い電撃を日本のサクソフォン界に与えた(聴けなかった方はぜひ今週火曜日にアクタスへ!)。

♪カルテット名曲館:はやぶさ四重奏団
R.プラネル - バーレスク
P.ヴェローヌ - 半音階的ワルツ
R.クレリス - 序奏とスケルツォ
P.ランティエ - アンダンテとスケルツェット
平部やよい - Dice
滝上先生が、若手のサクソフォン奏者3人と組んだカルテット。昨年ルーテル市ヶ谷にて結成記念のリサイタルを開いたが、そのときは伺うことができずに悔しい思いをしたものだった。テナーの岩渕みずき氏は現在ドイツ留学中であるが、春休みのタイミングで帰国しているため、はやぶさ四重奏団の、フェスでの演奏が実現したとのこと。
「バーレスク」を聴いて、音色の方向性のおもしろさを知ることとなった。ポリフォニックな部分や強奏部分では、それぞれの奏者の個性が良くわかり(楽器の違いによるところもあるだろう。ソプラノはシルバー管体かな?、アルトはクランポンの赤ベル、ほか)、逆に弱奏部分ではよく揃った音の重なりとなる。曲が進むにつれ、その方向性が何なのか、ということが少しずつわかってくるような気がした。
ヴェローヌやランティエでは、まるでミュールの四重奏団のようなヴィブラートも使いこなし、なんだかタイムスリップしたような不思議なサウンドを体感した。平部やよい「Dice」は、シリアスな響きの相当な高難易度の作品であるものの、名曲だと思った。演奏は、ブラヴォー、だった。もし楽譜が入手できるものなら、自分たちでもぜひ演奏してみたい。

♪ディスカヴァリーコンサート:太田徹(チェロ)
V.ダンディ - コラール・ヴァリエ
例えば最初のさりげないいくつかの音、そのアタックやフレージングなど、弦楽器としての優位性を様々に感じたのだった。ピアノは羽石道代氏。まさに熱演であった。サクソフォン吹きとして聴くのは非常に面白いものだが、チェロ奏者として取り上げることの面白みはあるのかな?ということが気になった。演奏者に伺ってみたいな。

♪ディスカヴァリーコンサート:須藤三千代(ヴィオラ)
F.デクリュック - ソナタ
アルトサクソフォンと比べて音域が(下に)広いためか、サクソフォン譜と音形が変わっていたのが面白かった。決め所での響きや空気感などは弦楽器独特の凄みがある。急速部分では、音程のバラつきが散見され、曲を楽しむ、というところまでいかなかったのは残念。弦楽器で演奏すると難しいのかなあ。

♪ディスカヴァリーコンサート:古山真里江(コールアングレ)
C.ドビュッシー - ラプソディ
曲が持つ東方趣味が、より強調された印象(唐草文様のフレーズなど実にしっくりくるのだ)。古山さんの演奏も素晴らしく、充実した聴後感を得ることができた。サクソフォンで、例えば今日聴いたような素朴な感じと、サクソフォンの巡航速度であるキラキラした感じを自在に行き来することができたとすれば…というか、サクソフォンはそういうことが可能な楽器だと思うのだが…さらにこの曲の魅力が表出するかもしれない。

♪プロムナードコンサート:芸大メンズカルテット=松下洋、丸場慶人、田中拓也、塩塚純
妙に濃い。2曲だけ聴くことができたが、コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」のアドリブのコピー・ユニゾンから始まるジャズっぽいメドレーが面白かった。タイトル失念。スーパー・インプロヴィゼイション祭、であった(笑)。

♪第15回Jr.サクソフォン・コンクール最高位入賞者披露演奏:住谷美帆
H.トマジ - 協奏曲
高校2年生でトマジ全曲とは…プログラムだけ見ても恐れ入るが、演奏も堂々たるもの。何も恐れずに大きなホールを大音量で鳴らしていこうとする意思か、それとも勢いか…が感じられる。テクニカルな面や奏法、音色でもかなり完成されているばかりか、魅せ方も上手い。急速部分で若干音の粒が見えなくなることがあったが、全体の印象からすればあまり気にならなかった。引き続き研鑽を積まれることと思うが、今の良い部分を残しながら僅かな弱点を1つずつ潰して行きさえすれば、さらに凄い奏者になるかもしれないな、と思った。

2013/03/03

Saxofono Rosso 第9回演奏会

昨日は、松下洋くんから依頼を受けてダグラス・オコナーを迎えに成田空港へ。ダグラスと会うのは実は初めてで、2nd JML Competitionの直後にこのページを制作するために何度かメールをやり取りしたとか、Red LineSQのCDを買ったとか、その程度しかコネクションがなかったのだが…まさか日本で会うことができるとは思っていなかった。

アメリカの若き俊英(現在29才とのこと)。JML 2ndで2位、NASAのソロコンペで1位ほか、数々のコンクールに入賞しまくっている。イーストマン音楽学校卒業後、ウィスコンシンの大学にサクソフォンの講師として勤務したのち、現在はNaval Academy Band(Navy Bandと双璧をなす、アメリカ海軍バンドの2大巨頭のひとつ)のアルト・サクソフォン奏者として活動中。クリスチャン・ロバの15番目のエチュード「Worksong」を献呈されたことでも有名(火曜日にはソロリサイタルも予定されているので、ぜひ!)。

…と、まあその経歴をよく知っていたのでなんとなく緊張して出迎えたのだが、とてもフレンドリー&フランクな方だった!心配していた時差による辛さもそれほどないとのこと(海軍のブートキャンプよりはマシだよHAHAHA、という具合)。松下洋くんとの待ち合わせ予定時刻の21時までは時間があったので、Rossoの演奏会があるよと紹介して一緒に伺うこととなった。成田空港から青砥までの道中は、いろいろと話がはずんだ(時折、英語のスキルの問題でうまく伝えられなかったのは残念だが)。楽しかったなー。

前置きが長くなったが。

【Saxofono Rosso 第9回演奏会 ~遠藤朱実先生を囲んで~】
出演:Saxofono Rosso、遠藤朱美(sax)、須川展也(客演sax)、西尾貴浩(指揮)
日時:2013年3月2日(土)18:00開演
会場:かつしかシンフォニーヒルズ・アイリスホール
プログラム:
本多俊之 - 陽だまり
A.ロイド=ウェバー - オペラ座の怪人
長生淳 - パガニーニ・ロスト
F.デクリュック - ソナタ
A.ピアソラ - ブエノスアイレスの春・冬
長生淳 - 八重奏曲
P.クレストン - サクソフォン協奏曲(独奏:須川展也)
P.I.チャイコフスキー - バレエ音楽"白鳥の湖"より

1stステージは小編成アンサンブル。ピアノとカルテット編成で2曲演奏されたが、「オペラ座の怪人」ではピアノに溶け込むような音色が印象的であった。梅沢さん旋律の歌い方うまいなー。名アレンジとの呼び声高き「ブエノスアイレスの春・冬」も熱演。エネルギッシュな部分と大人の音楽な部分を見事に吹き分ける手腕は、凄い。私も、昨年吹いたばかり&今年も5月に吹く予定があるけれど、参考になる表現が目白押しだった。サックス2本とピアノの「パガニーニ・ロスト」は、これは野村亮太さんと大山権之助さんと松浦真沙さんという鉄壁の布陣の演奏で、隙がない清潔感あふれる演奏に驚く。これだけ完璧に吹きこなすのだから、さらにアグレッシヴな表現も聴いてみたいところだ!長生淳「八重奏曲」は第1楽章のみだったが、祝祭的な雰囲気を演出して最終部に向けて疾走する様子は、聴いていてとても興奮する。技術的にもすばらしく、模範たりえる演奏だ。ダグラスも、特にピアソラや長生淳に相当な感銘を受けたようだ。

休憩を挟んで、須川展也氏を独奏に迎えてのクレストン「協奏曲」。独奏、バンドとも熱演!まず須川氏だが、技術的にも音楽的にも感性されているのは当然として、それ以上に感銘を受けたのは、"演奏者"や"音楽家"と呼ぶのは躊躇される、"アクター"とでも言うべき立ち振る舞いだ。サクソフォン奏者は舞台上でどうあるべきか、どう魅せるべきかという、その極地を体現していたと思う。サクソフォンオーケストラも、テクニカルな譜面を高精度で処理しており、さらに西尾さんの指揮にも引っ張られて実にダイナミックな仕上がり。最高のソロと最高のバックだった。ダグラスの興奮具合も相当なもので、連れて行って良かったなと思った。

松下洋くんとの待ち合わせ時刻が迫っていたので、残念ながら第3部は聴くことができなかったのだが、これもまた素晴らしい演奏だったと伝え聞いた。

都営→半蔵門線と乗り継いで、おなじみ、渋谷の串八珍へ。ビール2杯、焼酎1杯、日本酒1杯と、本当に今日到着したとは思えないタフさ。お箸も器用に使いこなして、日本食を楽しむ(ここは料理もなかなかなので、気に入ってもらえて良かった)。松下洋くんを待ちながら食事・海軍バンド・政治・経済まで話が及んだ。

3/3サクソフォーン・フェスティバルの聴きどころ!

音楽大学アンサンブルステージ…実はかなり楽しみ。プログラムは下記。もちろん、あの名作「静寂の森、饒舌な雨」の再演は楽しみだが、実はそれぞれのグループに面白そうな要素があり(一個ずつ説明したいくらいなのだけど)、どれも注目している。

・大阪芸術大学
岩永 知佳:Sax8重奏のためのAmerica「都市の肖像」
・東邦音楽大学(指揮:佐々木雄二)
W.A.モーツァルト(arr.R.シビング):弦楽五重奏K.406
・国立音楽院(指揮:成田徹)
A.グラズノフ(arr.草山ゆかり):四季より「秋」
・東京音楽大学(指揮:小串俊寿)
J.S.バッハ(arr.河原 翌真):トッカータとフーガ ニ短調
・武蔵野音楽大学(指揮:栃尾克樹)
G.ホルスト:セントポール組曲→個人的にツボな曲。
・上野学園大学(指揮:松原孝政)
P.チャイコフスキー(arr.野村秀樹):「弦楽セレナーデ」より第一楽章 
・くらしき作陽大学(指揮:貝沼拓実)
J.スーク(arr.圓田 勇一):「弦楽セレナーデ 変ホ長調 作品6」より
第1楽章 Andante con moto、第4楽章 Allegro giocoso,ma non troppo
・東京藝術大学(指揮:松本宗利音)
中橋 愛生:サクソフォーンオーケストラの為の 静寂の森・饒舌な雨
・尚美ミュージックカレッジ専門学校(指揮:原博巳)
B.スメタナ(arr.岩本伸一):交響詩《わが祖国》よ 第2曲「ヴルタヴァ」
・昭和音楽大学(指揮:栄村正吾)
G.ガーシュウィン(arr.金井 宏光):パリのアメリカ人
長生 淳:セルマーキャンプのテーマ
・国立音楽大学(指揮:滝上典彦)
P.チャイコフスキー(arr.奥野 大樹):バレエ音楽「眠れる森の美女」より イントロダクション・ワルツ
・洗足学園音楽大学(指揮:宗貞啓二)
R.シュトラウス(arr.岩本伸一):ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら

「カルテット名曲館」では、滝上先生率いるはやぶさ四重奏団が演奏。この機会に合わせて岩渕みずきさんも一時帰国しているとのこと。はやぶさ四重奏団の前回リサイタルは聴くことができなかったので、楽しみ。そして、プログラムは何になるのかあ(笑)そういえば岩渕さんは帰国中にいくつもの演奏機会があるとのこと。

伊藤あさぎさんがマルチェロの独奏者に抜擢!?とちょっと驚いたが(本人も驚いたとのこと)非常に清涼感のある音色や音楽性から、なかなか面白いものになるかもしれないと思っている。上野耕平さんは、ヘムケ氏がCDに録音しているガーシュウィン。先日聴いたばかりのヴィードーフの演奏がとても楽しかったので、そのときの演奏の魅力がそのままガーシュウィンに当てはめられたときにどうなるのか、わくわくする。井上麻子さんは、石毛里佳「フラジャイル」を演奏。作品も気になるが、それよりも、最近関西の名手の演奏を東京でも聴く機会が増えつつあることが嬉しい。おなじみ、ジェロームは、レオ・シュタインの往年の名曲を。ずいぶんとマッチしそうだ(笑)。メインとして据えられたのは林田和之氏によるラーション。林田氏の師匠である雲井氏が、かつて弦楽四重奏+ピアノという編成でこの曲を演奏したことを思い出したが、こんどは弦楽四重奏のみ。また、林田氏の独奏を聴くのも久しぶりであるため、とても楽しみだ。

A協会員によるプレミアムコンサートは、まず先日現代音楽演奏のコンクールに入賞した白井奈緒美氏の「イニシャルS1」「イニシャルS2」の演奏が気になっている。「イニシャルS(=S1)」は大石将紀氏の演奏を聴いたことがあるのだが、S2では(声楽の)ソプラノ奏者もゲスト出演するそうで、どのような展開になるのか興味深い。奇しくも、今日伺ったRossoの演奏会で白井さんにお会いし、「S2はもっと凄いよ!」とのコメントをいただいた!聴き逃してはならないだろう!

スペシャルゲストのダグラス・オコナー氏は、無伴奏で十八番の「Worksong」と、そしてなんとバッハの無伴奏パルティータ第2番から「シャコンヌ」を演奏!「Worksong」を献呈先の奏者自身の演奏で聴ける、というのも凄いことだが、もっと驚いたのはバッハ。単音楽器であの名曲「シャコンヌ」をどのように料理するのだろう!アレンジはオコナー氏自身によるものなのだろうか!?…と、気になるポイントが多い。そして、今日聴いた話によれば、両作品とも、なんと暗譜で演奏するとのころ…まじっすか。

最近何かと話題の、バジル・クリッツァー氏によるアレクサンダー・テクニークの特別講座が開催される。私の知り合いの中にも、何人かクリッツァー氏の講習を受けた、という方がいるのだが、その言葉の端から想像するに、なんだか面白そうだ。演奏以外のイベントは貴重で、こういった機会を逃すと次はまたいつか…と成りかねない。

ディスカヴァリー・コンサート…。演奏曲目は、下記。
・F.デクリュック:ソナタ嬰ハ調 ヴィオラ:須藤三千代
・V.ダンディ:コラール・ヴァリエop.55 チェロ:太田徹
・C.ドビュッシー:ラプソディ コール・アングレ:?
サクソフォン吹きとして、これらの作品の別形態を知っておくことは、普段慣れ親しんだ表現以外を吸収できるという意味で重要なことだろう。個人的には、シュミットの「伝説」も聴きたかったかなー、なんて(^^;

雲井雅人プレゼンツ「アドルフ・サックス工房からの枝分かれ」は、2007年のフェスティバルをまざまざと思い出す。非常にシリアス、かつ、ポップでエキサイティングなサクソフォンとエレクトロニクスのための5作品(それはそれでものすごく感動したのだけど)のあとに、ホール中を満たしたアドルフ・サックスの音色も、まさに涙がこぼれんばかりの素晴らしいものであった。あの音色を聴くと、なぜかサクソフォンの歴史が走馬灯のように次々と思い出される(実際生きたわけじゃないのだけど…ふしぎ)。

たぶん、他にもいろいろと聴きどころはあると思うが、夜も遅いのでこのへんで…。