2015/04/09

松下洋リサイタル~ソビエト3巨匠の情景~

(毎度のことながらの)新しい試み、そしてそれが高い完成度のステージとして結実していた。さすがだ!やりたいことを具現化してしまうその行動力、さすがです。

【松下洋サクソフォンリサイタルvol.4~ソビエト3巨匠の情景~】
出演:松下洋(sax)、黒岩航紀(pf)他後述
日時:2015年4月8日(水)18:30開場 19:00開演
会場:みなとみらいホール 小ホール
プログラム:
セルゲイ・プロコフィエフ - 「ロミオとジュリエット」組曲
アラン・ハチャトゥリアン - 「スパルタクス」よりアダージョ
セルゲイ・ラフマニノフ - 「ピアノ協奏曲第3番」より、Queen、Muse
セルゲイ・プロコフィエフ - 「冬のかがり火」より
ドミトリー・ショスタコーヴィチ - バレエ組曲「ボルト」
出演者:
Saxophone
松下洋・東秀樹・田中拓也・宮越悠貴
木管五重奏
満丸彬人・福島広之・小谷晋一・相良良・荒木奏美
金管五重奏
蔵持智明・松下絵里・庄司知世・高井郁花・田村優弥
打楽器
松本英之・関聡・小柳絵美璃
Piano
黒岩航紀
アレンジャー
旭井翔一

20世紀初頭の天才興行師、ディアギレフへのオマージュとして、彼が結成したバレエ・リュス解散ののち、ロシアで花開いたバレエ音楽他を(サクソフォンを含む)様々な室内楽編成で聴かせる、という、凝ったコンセプト。プログラム冊子にはその解説も記載されており、演奏会前にその流れを予習することができた。

プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」は、ヴィルトゥオーゾ・スタイルのアレンジで、先日同じく松下氏が演奏していたラヴェルの「ツィガーヌ」の鮮烈な演奏を思い出した。クラシック・スタイルのサクソフォンとピアノで、ここまで幅広い表現ができるのかと驚くのは、松下氏のリサイタルではいつものことだ。アレンジも面白かった(誰のアレンジかな?)。

ここからは、全編旭井翔一氏のアレンジとなる。ハチャトゥリアンの「スパルタカス」は、サクソフォンの木管的側面を前面に出すために、木管五重奏との共演となった。旭井氏の音色のマジックが早速炸裂し、また、共演陣も素晴らしい仕事をしており、ドラマチックな演奏となった。超個人的な話だが、なぜか始まる直前まで「ガイーヌ」のアダージョと勘違いしていた(映画「2001年宇宙の旅」の、木星探査のシーン冒頭で使われるのだ)。

第一部最後は、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」へのオマージュ作品…Queen「Rachmaninov's Revenge」、Muse「Butterflies and Hurricane」は、いずれも同曲のモチーフを下敷きとして使ったロック作品である。メタルマウスピース・セッティングのアルトサクソフォンを携えて松下氏が現れ、さらに金管5重奏、ピアノ、ドラムスとのアンサンブルが展開。ノイジーかつパワフルなサックスは、原曲のヴォーカル部分をなぞる形となっており、金管5重奏やピアノがインスト部分…というようなアレンジであった。この音量規模で埋もれないサックス、というのも凄まじいな(笑)そしてラフマニノフのカデンツァは、ピアノ黒岩航紀氏の面目躍如!すさまじい集中力。いやはや、実にカッコ良く、終わった瞬間に会場がどよめいた。

休憩を挟んで、まずはプロコフィエフの「冬のかがり火」より「出発」。プロコフィエフの、朗読、児童合唱、管弦楽のための作品。プロコフィエフがさらされていた、政治上の批判活動に対する"名誉回復"のために作った作品の、第1曲である。列車的な音響効果が、非常にわかりやすい形で使われている。ここでは、全員参加のアンサンブル…サクソフォン四重奏を中心として、周りを管楽器、さらにピアノや打楽器が固める。非常にスマートな"管楽アンサンブル"で、鉄壁のメンバーとともに…あれ?サクソフォンのリサイタルじゃなかったっけ?

ところが、これが松下氏の狙いであったようで、まずはヴィルトゥオーゾスタイル、次は木管楽器としてのサクソフォン、さらに、ロックの中でのサクソフォン、最後、第2部はサクソフォンを含む管楽器群でオーケストラを表現する(サクソフォン独奏はもはやあまり重視されない)という、そんな試みだったそうだ。

その編成のまま演奏されたショスタコーヴィチ「ボルト」も、強い印象を残した。旭井氏のアレンジの素晴らしさ…管楽器の音色を混ぜて、瞬間瞬間に聴いたことのないような響きを創りだす…も手伝って、全8曲を一気に聴いてしまった。これ、演奏したい人も多そうだなあ(笑)

アンコールに、ハチャトゥリアン「剣の舞」のスペシャルアレンジ。大いに盛り上がった!

打ち上げも出たかったのだが、体調を崩しかけているのと、やることが溜まりまくっているので、早々に退散…(T_T)

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