2015/04/06

ナゴヤサックスフェスタ2015(前編)

いやー、凄かった!充実しすぎて、書くことがありすぎるので、2回に分ける。

今年で14回目を数えるという、ナゴヤサックスフェスタ。日本のサクソフォン関連のイベントの中でも、特に大きな盛り上がりを見せる催しとして注目していたが、これまで都合がつかなかったり体調崩したりで伺ったことがなく、ようやく初めて聴きに来ることができたのだ。日帰りという強行日程だったが、その甲斐ある聴後感を得られたのだった。

雨にもかかわらず、会場は盛況。聞くところによると当日券も僅かしか残らなかっただか無くなったか、というほどだったとのことで、800人弱のホールがほぼ満員という、この種のイベントとしてはちょっと信じられない客入りに驚かされた。出演者がそれなりに多いとか、立地がそこそこ良いとか、なんかそういう定量的なものでは測ることのできない、ある種熱気のようなものを感じたのだった。ここまでの13回に及ぶ、繰り返しの歴史をたどると、何かヒントが得られるのかなあ。

ナディアパークという、矢場町の近くに位置する複合施設を利用。800席弱の大ホールと、練習室3つ、またその他様々な場所で、同時並行的にイベントが進む。今回は初めてということもあって大ホールに張り付いていたのだが、大ホールは常に見た目7割以上~ほぼ満席のお客さんが入っており、また他の会場も、時には立ち見が出るほどの盛況であったと伝え聞いた。

僭越ながら、ひとつひとつ感想を書き記していく。

♪オープニングアンサンブル(指揮:遠藤宏幸)
八木澤教司「フェスティーヴォ!」
A.ボロディン/久田大地「だったん人の踊り」
若手~中堅を中心に、びしっと揃ったアンサンブルがオープニングに華を添える。「フェスティーヴォ!」という作品は初めて聴いたが、わかりやすくて盛り上がる、オープニングにぴったりの作品だ。演奏に覇気があり、(ほとんどの方はこの曲を知らないはずなのに)客席も盛り上がる、という…。ちょっと体感したことのない雰囲気を味わった。「だったん人の踊り」は、これはもう定番とも言える作品だが、終結部にかけてかなり盛り上がりますね。続くプログラムへの期待が高まった。

♪愛知県立芸術大学
J.リュエフ「四重奏のためのコンセール」
このたくさんのお客様にリュエフを聴かせてしまう、というのもまたすごいな。4人ともよく揃った輝かしい音色は、同門の強みだろう。第1楽章のテンポからは、この曲の難しさを感じたが(フレンチバロック風前奏曲の難しさ!)第6楽章などはさすがのリズム感でぐいぐいと演奏しており、さすがの若い世代の演奏だと思った。

♪Duoこつぶ
D.ミヨー「ヴァイオリン、クラリネット、ピアノのための組曲」
この曲のセレクトがなかなか面白い。ヴァイオリンパートをソプラノサクソフォンが、クラリネットパートをアルトサクソフォンが、それぞれ演奏する。さすがにヴァイオリンの高音域はソプラノが少々無理がある部分もあると思ったが、パリっとした発音など、ミヨーの気質を(原曲以上に)表現しているような箇所もあり、面白かった。サクソフォンデュオって、いろいろなことができて楽しいなあ。

♪アマチュア選抜オーケストラ(指揮:堀江裕介)
中橋愛生「静寂の森、饒舌な雨」
紛れも無い、サクソフォンオーケストラの名曲である。これまで、プロフェッショナルの団体による演奏が何度かなされたが、アマチュアによる演奏はもしかしたら初めてではないのかな。どのような演奏になるかと思ったが、堀江さんの的確な導きもあって、お見事!な演奏となった。中間部の雨が降り出す描写の部分では、特殊奏法の物珍しさも手伝って、客席からどよめきが起こった(笑)。

♪名古屋芸術大学(指揮:三日月孝)
P.I.チャイコフスキー/柏原卓之「弦楽セレナーデ」より
ハ長調の幸福な音楽である。ハ長調の音楽は、これと、メンデルスゾーンの序曲が好きだなあ。幸福に満ちた中に、仄かな憂いがある感じはこの曲ならではだろう。指導陣も交えて、三日月氏の指揮に乗りながらまとまった美しい響きを作り出していた。四重奏で聴いた県芸とは、また違った独特の響きがあるのだな、という感触も得られたのだった。

ここからは、第1回ナゴヤサクソフォンコンクール受賞者による披露演奏。ナゴヤサクソフォンコンクールと、ナゴヤサックスフェスタは、現時点では別々のイベントであるが、今後それぞれ関連性を持たせて、いずれはひとつのイベントとして…というような話を、堀江氏から伺った。東海地区のサクソフォン界を、フェスタのみならずコンクールという側面も使いながら、盛り上げていこうとする、そんな意思や気概も感じたのだった。

♪第1回ナゴヤサクソフォンコンクール受賞者による披露演奏(中学生以下部門:西浦颯)
P.イトゥラルデ「小さなチャルダッシュ」
いやー、若い!この恐れなき演奏は、若さがなせる技かな。

♪第1回ナゴヤサクソフォンコンクール受賞者による披露演奏(高校生部門:岩田基睦)
L.E.ラーション「協奏曲」より第1楽章
いやー、本当にびっくりした。高校3年生になりたてとのことだが、プロか!?と思うほどの見事なコントロール(跳躍、ヴィブラート)、フラジオも一発も外さずに(しかもとても音程が良い)、吹ききった。なんという演奏家だ…。多くの聴衆が衝撃を受けたことだろう。冒頭、わりとコンパクトに音楽を運ぶかとおもいきや、思い切りの良い箇所も散見され、良い意味で期待を裏切られた。

♪第1回ナゴヤサクソフォンコンクール受賞者による披露演奏(一般部門:袴田美帆)
P.クレストン「協奏曲」より第3楽章
いやー、本当にびっくりした(2度目)。アマチュアながら、ここまで見事にこの難曲を演奏できるものなのか。岩田氏の演奏とともに、大きな衝撃を受けたのだった。名古屋のサクソフォン愛好家のレベル、恐るべし。。。素晴らしい面はたくさんあるのだが、何を置いても、まずリズムがすべらずしっかりしており、その上で音色も良く、音程も良く、音楽性もあり…いやはや。

♪第1回ナゴヤサクソフォンコンクール受賞者による披露演奏(U25若手演奏家部門:佐藤杏奈、指揮:遠藤宏幸、プロフェッショナル陣によるアンサンブル)
県芸3年生の佐藤さんによる演奏。リュエフにも、確かテナーで乗っていらっしゃったな。豪華なアンサンブルをバックに、こういう場でイベールを演奏することは、より緊張度が高いのではないかな…とも思ったが、堂々たる演奏、そのものであった。バックのアンサンブルは、中堅~若手が固めていたが、その見事な連携具合も、さすが。アレンジは誰のものだったのだろう?ロンデックス編?

続きの第3部とスペシャルステージについては、次の記事で。

ちなみにフェスタの様子は、次号のThe SAXにも掲載する予定。私が執筆を担当する。

イベントの面から気づいたことをいくつか書き記しておく。
・運営陣の連携・協力体制。アリオンSQのメンバーあたりから下の世代にあたる、中堅~若手による強固な運営体制が垣間見えた。もちろん三日月氏や櫻井氏といった大御所もフェスタには出演者として協力しているが、中心となって運営にあたっているのは(実行委員のメンバーを見る限り)若手である。
・司会が上手い。山本祐歌さんという、FM愛知のパーソナリティ(名音の声楽科の卒業生だそうな)が大ホールの司会進行を務めたが、とにかく間のもたせ方やしゃべり方や盛り上げ方の上手いこと。びっくりした。また、ステージセッティング入れ替えが多いが、司会とも連携しつつ、かなり素早い。
・大ホールを見ていると、部ごとのみならず、曲間で出たり入ったりするお客様がけっこう多い。いろんなイベントをまんべんなく聴きに行こうという意思の現れか(=惰性で聴いていないということか)。
・客席に座りながら周りのお客様の話し声に聞き耳を立てていると、どうもサクソフォン関係者ではない方が多くを占めている雰囲気。どういうアプローチで、そういった客層を獲得するのか、その手法に興味がある。

年に1度とはいえ、これほど大きなイベントを準備・運営する、瀧彬友氏を始めとする実行委員の面々の働きたるや、すばらしいものであったと思う。

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