2025/06/22

日下瑶子氏のマスランカ論文

日下瑶子氏の博士論文、「デイヴィッド・マスランカのサクソフォーン作品における表現の根源 : 作曲プロセスの考察を通して」が、国立音楽大学のサイトから参照可能となっている。内容について以前もブログで触れたが、マスランカ氏の音楽活動と思想を包括的に記録・分析したものである。

​彼の吹奏楽作品やサクソフォン作品を中心に、作曲背景、初演情報、作曲思想の変遷、演奏解釈などが詳細に記載されている。マスランカ氏の作品は技巧的な要素から静寂を強調する表現へと変化し、心理療法、メディテーション、仏教思想に基づくマインドフルネスの影響を受けている。自然的、​宗教的、現実的なテーマを音楽に反映し、深い精神性を追求したことを、論文中でつまびらかにしている。 ​

サクソフォン作品では、技巧的な内容からシンプルで静寂を感じさせる表現へ移行し、コラール旋律の引用や調性の明確化が特徴である。 奏者に対して演奏上の限界を超える表現を求め、精神的境地に迫ることで音楽の本質を追求した。 ​また、委嘱者や初演者との関係を深めることで、楽器の可能性を理解し、マスランカ氏が理想とする音楽を実現していった経緯が、関係者の言葉を用いながらリアルに語られる。 ​

さらに、楽譜やディスコグラフィーの詳細な記録を通じて、彼の作品が国際的に広く演奏されていることが示されている。

マスランカの音楽遺産を包括的にまとめあげた、非常に貴重な内容であり、今後、サクソフォンでマスランカ作品を演奏するときに必ず参照されるべき資料だ。また、マスランカ氏の作品に興味がある方にも、いちどぜひ一読いただきたい内容。



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