ビゼー「アルルの女」、ムソルグスキー/ラヴェル編「展覧会の絵」、ラヴェル「ボレロ」、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」「パリのアメリカ人」など、サクソフォンが使われている管弦楽作品はそれなりに存在し、それなりに演奏機会も多いため、それなりに耳にする機会も巡ってくる。
しかしながら、サクソフォンの魅力を全方位から(響き、歌、機動性)引き出す、管弦楽作品での活用例はごくごく限られているだろう。さらに悪いことに、作品がマイナーなこともあって演奏機会が少なく、一般聴衆はおろか、サクソフォン奏者にも知られていない、という状況が発生している。
個人的に考える、オーケストラの中のサクソフォン:名作セレクションは、下記の3つ。引き続き、別の記事で録音についても触れたい。
・ダリウス・ミヨー「世界の創造(1923)」:ミヨーが作曲したバレエ音楽。世界の始まりの神話の世界をモチーフにした物語が基礎にありながら、音楽自体にはミヨーが米国訪問時に耳にしたジャズ(1920年代の)をふんだんに取り入れている。サクソフォンは、「序曲」のレガート風旋律から、熱狂的な後半部まで、一貫して存在感を放つが、特に聴きものは終盤の乱痴気騒ぎの中に、悠々と歌う即興風のメロディだろう。
・ジャック・イベール「遍歴の騎士(1933?/1950)」:こちらもバレエ音楽で、ドン・キホーテの物語に付加された、スペイン情緒溢れる作品。セクションワークの他、無伴奏でのvヴィルトゥオジックなカデンツァなど聴き応え十分。中間楽章は「黄金時代」として単独でも演奏される。1933年にイベールが音楽を担当した映画「ドン・キホーテ(J.W.Pabst監督作品)」に基づいた再編集作品との情報があり、件の映画のサウンドトラックを着目(耳?)しながら観てみたのだが、どうも関連性が見出せなかった。別の作品かもしれない。
・ジョン・アダムズ「シティ・ノワール(2009)」:ロサンゼルス・フィルハーモニックのグスターヴォ・ドゥダメル芸術監督就任記念演奏会に向けて作曲された委嘱作品。モダン・ジャズの空気管に支配された分厚いハーモニーの上を、各ソロ楽器の走句が縦横無尽に覆いつくす中にあってなお、サクソフォンが放つ存在感そのもに感動を覚える。この作品をきっかけにアダムズ「サクソフォン協奏曲」が生まれたのだが、その話はまた次回に。
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