2016/02/25

フェスでちょっとだけ喋ります

3月を過ぎるまではいろいろと忙しくてなかなかブログを書いている時間が取れない。仕事が落ち着いてきたのは幸いではあるのだが…コンサート・レビューも、未だ書けず。。。

第35回日本サクソフォーン・フェスティバルの、2/27に小ホールで行われるプレミアム・コンサート、佐藤淳一氏が、共同委嘱作品であるJacobTVの「Ticking Time」を演奏するのだが、その演奏前に、委嘱経緯と作品コンセプトについて、ちょっとだけプレゼンをする予定。内容は、昨年のコングレスにおける世界初演の前に喋ったものとほぼ変わらない。

会場におられる方、ぜひいらしてください~

2016/02/17

大石俊太郎カルテット

いくつかレビューしなければならないコンサートが溜まっているのだが、とりあえず今日聴きに行ったライヴを。

大石俊太郎さんがフロントを務めるカルテットを聴きに伺った。渋谷の「公園通りクラシックス」、会場の名前は聞いたことがあったのだが、赴くのは初めてだった。木を基調とした、とても良い雰囲気の空間だ。グランドピアノが2台ある、というのもなかなかすごい。壁には、ジャズやらクラシックやら、様々なチラシが貼られているが、やはり名前の通りクラシックでの利用が想定された空間なのか…な?

メンバーとプログラムは以下の通り。演奏曲は、すべて大石さんのオリジナル。

【大石俊太郎カルテット】
出演:
大石俊太郎(Saxophone)http://shntr-oishi.tumblr.com/
松岡美弥子(Piano)http://ameblo.jp/miycom/
小美濃悠太(Bass)http://yutaomino.com/
坪井洋(Drums)https://tsuboihiroshi.wordpress.com/
日時:2016年2月17日(水) 19:00open 19:30start
会場:渋谷・公園通りクラシックス
プログラム:
はじまり
Baia di vento
cutie's game
即興
PENTA-PHOBIA
即興
神を運び
即興
Take Off
即興
Romance of M

ジャンルとしては、「ジャズ」ということになるのだが、無節操に盛り上がったりはせず、全編通してとても品のある演奏が印象的。だがしかし、曲の中にはきちんと起承転結が作られ、聴き手を飽きさせることはない。

個人的に、ソプラノで演奏された「Baia di vento」「神を運び(日本のとある祭りにインスピレーションを受けたたいう、かなり手のこんだ作品、とても面白く、ついつい集中して聴いてしまった)」「Take Off」といった曲、そして演奏にとても感動した。

「テンションの一体感」のようなものを常にメンバー内に持ちながら、それぞれが見事なテクニックや音楽性を披露する、というスタイルを取っているように感じた。個々の演奏については、特に、持ち音色のバリエーションの豊かさや、瞬間瞬間の変化が見事であった。例えばピアノの松岡氏、クラシックのピアノの音、まるでピアノ線を直接弾いているような軋んだ音、エレクトリックピアノのような音(なんだかリターン・トゥ・フォーエヴァーを思い出した)など、場面に応じてコロコロと紡ぎ出す音を変える。ほか、打撃のスピードの変化が見事なドラムス坪井氏、弓とピツィカートを駆使して華麗なインタープレイを繰り広げる小見濃氏といった、強力なメンバーを従え、大石さんのサクソフォンが自在にフレーズを紡ぐ。この不思議な温度、一体感は、彼の美意識による所が大きいのだろう。

オリジナル作品を作ることができるって、なんて素敵なことだろう。一曲一曲が、彼の個人的なエピソードが基となって編み出された曲…そのMCの内容を、ライヴ後にも思い出すことができてしまうほどだ。クラシックだと、「XXXX年に生まれたどこどこの作曲家で、YYYY年に作られて…」くらいしか言えないからなあ。

次回ライヴは、5月11日とのこと。また聴きに行きたいと思う。

第23回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会

【第23回東京藝術大学サクソフォーン専攻生による演奏会】
出演:太田弦(指揮)、東京藝術大学サクソフォーン専攻生
日時:2016年2月16日(火曜)19:00開演
会場:東京文化会館小ホール
プログラム:
※後で書く

やはり、とういか、さすが、というか、素敵な演奏会であった。簡単にそれぞれの感想を。

Absil:
いわゆる「一年生カルテット」だが、技術的に高度に完成されており、さらに音楽表現に突っ込んだ部分が多く垣間見え、聴き応えがある。この年代にしてこの演奏を展開するとは、末恐ろしい…(と思ったのは私だけではないだろう)。これだけ上手いのだから、願わくば、更に斜め上のレパートリーにも取り組んでいただきたいなあ、とも思うのだった。クラシック・サクソフォンを語るのに、1930~1970年代周辺のフランスの作品だけでは(21世紀のこの時代にあっては)不足していると思うのだ。

Saint-Saens:
非常に繊細な境界をたどり続ける曲、そして演奏だった。一聴したインパクトは他の曲に比べれば希薄だが、変な固執に走らず、原曲が持つ"良さ"を丁寧に紡ぎ出す姿勢に感銘を受ける。これって、簡単なようでいて難しいことだと思う。

Brahms:
選曲と演奏のバランス、本日の白眉であった。後期ロマン派かくあるべき、という的(まと)に、超高確率でビシバシと当ててくる、非常に安定した技術と音楽性は特筆すべきであろう。いつも気になるのだが、彼らはこの演奏クオリティを提示するために、どれだけのリハーサルをこなしているのだろうか。いやはや、想像がつかない。

Villa-Lobos:
私にとってはHenk van Twillert氏の演奏でおなじみな作品である。トッカータ冒頭のパワーは、Twillert氏のほうが私の趣味に合ってはいるのだが、途中の細かい音符が連続するフレージングを、音楽的に吹きこなす辺りは、さすが現代のサクソフォン奏者達だ、とでも評すべきだろうか。バリトン八重奏という、端的でありながら面白みのある響きだったのだった。

Khachaturian:
中島くんの演奏の強烈さを久々に思い出した。彼の個性として、瞬間瞬間に内面を恐ろしいほどにガツガツと掘り下げていき、受け手のキャパシティに関係なく「エイヤッ」と超豪勢な演奏を提示する、というところがあるのだが、その真骨頂であった。この難曲を、全編に渡り非常に濃い密度で吹ききる…ある意味、(遊びの部分も含めて)規範となるような演奏であった。日本で、この年齢でここまでの演奏をする人は他にいるかなあ。

Strauss:
交響詩というジャンルを見事に体現し、まるで何かの映像作品を目の当たりにしているかのような、錯覚を覚えた。それは、やはり指揮を担当した太田弦氏の手腕によるところも大きかったのだろう。とても小気味よく、テンションが高い、指揮っぷり。すでに東京国際音楽コンクールの入賞歴もあるとのことだ。あまりに指揮者の要求が高いものだから「サクソフォンがついていけなくな…り…そんなことな…いや…?」という瞬間が、あったようななかったような。

楽しかったなあ。さらに期待するならば、彼ら彼女らが持つ技術力音楽性を、もう少し尖ったレパートリーや編成に向けてほしいなと…そんなことも思うのだった(サクソフォン吹きの末席ながらこんな図々しい感想持って良いのかしらん)。

2016/02/16

"The Portrait of JacobTV" 無事終演

日曜日、アーニーズスタジオで開いた演奏会"The Portrait of JacobTV"無事終えることができた。

【The Portrait of JacobTV - Musics for Saxophone and Ghettoblaster】
出演:佐藤淳一、加藤里志、大石俊太郎、栗林肇
日時:2016年2月14日(日曜)14:00開場 14:30開演
音響・映像オペレーション:出射慎二
会場:アーニーズスタジオ(表参道駅A4出口徒歩1分)
プログラム(すべてJacobTV作品):
The Garden of Love
Billie
Ticking Time ※委嘱作品・日本初演
Buku
Postnuclear Winterscenario No.10
Grab It! (sax quartet version)  ※日本初演

直前までドタバタと宣伝をすることになったのだが、結果的に多くのお客様(ほぼ満席!)にお越しいただき、大変嬉しかった。

個人的に掲げたテーマは「JacobTVの個展を開く」、そして「Ticking Timeの日本初演」の2つ。

「JacobTVの個展を開く」については、佐藤淳一さん、加藤里志さん、大石俊太郎さんという、素晴らしいサクソフォン奏者の方々にソロ演奏をお願いできたこと「Grab It!」のサクソフォン四重奏版バージョンを共演し日本初演できたこと、とても嬉しく思う。さらに、出射さんという素晴らしい音響オペレーターの下で、アーニーズスタジオという素敵な空間で演奏できたことも、得難い経験であった。聴いても演奏してもヘヴィな作品が多いとはいえ、やはり作品としてそれぞれが魅力的であることは間違いなく、JacobTVの作品は今後もしつこく取り上げていこうと思った次第。

「Ticking Timeの日本初演」については、2012年にドゥラングル教授のリサイタル@静岡の開演前、佐藤淳一さんと「東日本大震災をテーマにJacobTVに作品委嘱できたら…」と言葉を交わしたところから始まり、足掛け4年弱、日本での初演を終えたことでようやく一区切りとなり、感無量である。本番の自分の演奏は…上手くいった部分やしっかりと聴かせられたかなと思う部分ももちろんあるのだが、録音を冷静に聴き返すと、反省すべき点は多々あり、今後も精進せねば、というところ。お客様にはどのように聴こえていたのか気になるところだ。

それにしても、レベルの高い方々、普段自分なんかとは全く違う次元で音楽に取り組んでいる方との共演は、とても勉強になる。音そのものの説得力、発音、リズム、フレージング、高速フレーズの作り方といった演奏に絡む事柄から、本番までのリハーサルや気持ちの持って行き方など、私なんかまだまだだなあと再認識するのだった。とはいえ、お客様の前に出れば皆同じ、どこまで自身の演奏を高めることができるか、機会を重ねて試行錯誤していくしかないだろう。昔に比べると、ここ数年指が回らなくなってきてしまっているのを実感し、下がり幅を小さくするように普段から少しでも吹く機会を作っておかなければ、と思う。

…と、なぜか自省ばかりの感想になってしまったのだが、準備は苦しくも楽しく、本番はとても楽しく、打ち上げも楽しく、充実した時間を過ごすことができたのだった。

tkさんが感想を書いてくださいました(いつもありがとうございます!)
http://d.hatena.ne.jp/tk_saxo/20160214/1455461291

お越しいただいたお客様、共演者の皆様、音響オペレーターの出射さん、アーニーズスタジオの井村さん、本番に向けての準備から当日もサポートしてくれた妻、他、関係者の皆様に、この場を借りて改めて御礼申し上げる次第。

2016/02/12

演奏会ご案内:The Portrait of JacobTV

2月14日まで、この投稿を一番上に表示しておく。ぜひお越しください!

井村重人さんのフォトスタジオ"アーニーズ・スタジオ"において、JacobTV(Jacob ter Veldhuis)作品を集めたコンサートを行う。私は、委嘱作品である「Ticking Time」の日本初演と、四重奏で「Postnuclear Winterscenario No.10」「Grab It!(四重奏版が最近リリースされたのだ、これも日本初演となる)」を演奏予定。出演者が私以外超豪華なことになっているが、頑張りたいと思う。

【The Portrait of JacobTV - Musics for Saxophone and Ghettoblaster】
出演:佐藤淳一、加藤里志、大石俊太郎、栗林肇
日時:2016年2月14日(日曜)14:00開場 14:30開演
音響・映像オペレーション:出射慎二
会場:アーニーズスタジオ(表参道駅A4出口徒歩1分)
料金:入場無料/投げ銭制(限定40席・要予約)
プログラム(すべてJacobTV作品):
The Garden of Love
Billie
Ticking Time ※委嘱作品・日本初演
Buku
Postnuclear Winterscenario No.10
Grab It! (sax quartet version)  ※日本初演

予約・問い合わせ:
kuri_saxo@yahoo.co.jp
もしくは出演者まで直接メール/メッセージをお願いします。

Facebookのイベントページ:
https://www.facebook.com/events/803260159819166/


2016/02/04

わたせひでひこ奇聞屋フルートライブ Vol.43(ゲスト:斎藤和志)

渡瀬センセの月一の奇聞屋ライヴも、いつの間にか40回を超えた。今回のゲストは、日本を代表する変態フルーティスト(褒め言葉です)の、斎藤和志氏である。

【わたせひでひこ 奇聞屋フルートライブVol.43】
出演:渡瀬英彦、斎藤和志、池田さく子、福田亜由美(以上fl)、寺田雅彦(pf)
日時:2016年2月3日(水曜)19:30開演
会場:奇聞屋
プログラム:
J.S.バッハ - 無伴奏パルティータよりアルマンド(オーレル・ニコレの1955年製ヘインズフルート使用)
武満徹 - 翼
斎藤和志 - 一人用ブルース
C.ドビュッシー - シランクス
C.ドビュッシー - "俺俺"牧神の午後への前奏曲
斎藤和志 - エレキ伽羅倶梨之平舞(本当のタイトルはすべて漢字)
H.マンシーニ - 小象の行進

冒頭、先日亡くなったオーレル・ニコレ氏への追悼として、氏が実際にベルリン・フィル時代に使用していたヘインズ銀製フルートを使い、斎藤氏がニコレ氏から直接レッスンを受けたというバッハを演奏した。それが殊の外素晴らしく、音色、解釈ともずっと耳に残り続けたのだった。さらに、ニコレと武満の関係性から「翼」を、渡瀬氏、寺田氏とともにトリオ編成で演奏(てっきり「ボイス」あたりが来ると思ったのだが)した。アドリブも大量に交えた演奏に、会場が一気に沸く。また、開発されたばかりの三響製バスフルートが休憩前には、自作の一人用ブルース。ループサンプラーRC-505を利用し、ベースライン、コードを重ね、さらに即興を加えた見事な"一人芸"。一聴したときに、「???」と思うのではなく、「カッコいい!」と感じられる内容であることも良いなあ。聴いたことのない方のために…こんな感じです。

休憩を挟んで、金製、銀製、木製、ピッコロを使ったブラインド音色クイズ(なんと全問正解できた!)。驚きは、「"俺俺"牧神の午後への前奏曲」という、全オーケストラパートを斎藤氏のフルート1本でこなしてプリ・レコーディングし、フルート独奏を重ねるという代物。プリ・レコーディングは、非常に凝った作りになっており、100時間近くに渡る作業だったというから驚きだ(ハープのグリッサンドをレコーディングするのも、わざわざ弦を模して音をすべて重ねたとのこと…気が遠くなりそうだ)。斎藤氏の生徒、福田氏を交えた、「エレキ伽羅倶梨之平舞」という、雅楽をモチーフにした作品。これもループサンプラーを活用し、聴いたことのない響きが創りだされていた。最後は、渡瀬先生をトップに、全員でBASUYAのレパートリーである「小象の行進」。アドリブ大会となり、大盛り上がりのなか幕となった。

いやはや、斎藤和志氏、一筋縄ではいかない存在だ。リーダーライブも聴いてみたいな。