木下直人さんから、マルセル・ミュールのSP復刻を送っていただいた。
ミュール演奏のSPはサクソフォン界、いやもしかしたら、クラシック音楽界の中の、ひとつの財産だ。しかも、そのSPを一つ一つ丁寧にクリーニングし、完璧にオーバーホールした当時の機材(ピエール・クレマン Pierre Clémentのカートリッジ他)を使ってCD-Rへ忠実にトランスファーしたというのだから、このCD-Rこそが音楽界の宝だ!と言い切ってしまって良いものだと思う。値段など到底つけられるものではない。
ノイズリダクションの処理は一切無し。原盤の音に何かしらの変更を加えるということは、収録されている楽器の音にまで影響が及び、原音が失われてしまうということだ。だから、SP特有のスクラッチノイズはたくさん聴こえるけれど、そこから聴こえてくる音はSPが制作された当時の音そのままだということになる。
以前送っていただいたぶんと併せ、ミュールのSPのコンプリート・コレクションへ向けてのこの2枚目となる。木下さんからは「価値のわかる方に積極的にわけてあげてください」と言われているので、興味がある方はkuri_saxo@yahoo.co.jpまで連絡を(CD-R代や送料等の心配はなさらなくて結構です)。両方あわせてお送りします。第1集の情報は、こちらから。
(Selmer Y7092)
Alexandre Glazounov - Theme et Scherzo
Luigi Boccherini / Marcel Mule - Menuet
(Selmer Y7091)
Pierre Vellones - Les Dauphins
Domenico Scarlatti / Marcel Mule - Scherzo
Nicolai Rimsky Korsakov - Vol du Bourdon
以上、Quatuor de saxophones de Paris
Marcel Mule, saxophone soprano
André Bauchy, saxophone alto
Georges Charron, saxophone ténor
Marcel Jossé, saxophone baryton
(Selmer SA7002)
Fritz Kreisler - La Precieuse
Fritz Kreisler - Liebesfreud
(Selmer SA7001)
Jacques Ibert / Marcel Mule - Bajo la mesa
Paul Bonneau - Caprice
(Selmer Y8472)
Jean Joseph Cassanéa de Mondonville / Marcel Mule - Tambourin
François Joseph Gossec / Marcel Mule - La fete au village
Gabriel Pierne - Canzonetta
以上、ピアノ奏者の明記はなし
(Decca GMB-15008)
Jacques Ibert - Aria
Enrique Granados - 5eme Danse espagnole
(Decca AB-8246)
Maurice Ravel / Marcel Mule - Piece en form de habanera
Alex Roelens / Marcel Mule - Pavane et Menuet vif
(Decca AB-8239)
Ludwig van Beethoven / Marcel Mule - Menuet
Jean-Philippe Rameau / Marcel Mule - Gavotte
(Decca 8238)
Enrique Granados - Intermezzo des Goyescas
以上、ピアノはMartha Pellas-Lenom
2 件のコメント:
SP盤は回転が速いので、僅かな偏芯や凹凸で針が飛びます。
Pierre Clementは針圧14g以上でこれをかなり防げます。
本来ディスク・フラッターはSPでは使用禁止ですが、SPは熱による可塑性が高く、非常に効果がありますし、ノイズも減るようです。
特に今回のSelmerレーベルは製盤が悪く、再生不能と思っていたのですが、これらの処置で聴かれるようになりました。
この方法で第一集もいずれ再復刻します。
Pieere Clement は50年代からのフランスの録音スタジオ、放送局で使われていました。専用のアームが必要で、コネクターも互換性がありません。ダンパーゴムも交換不能で、特殊薬品を使用します。フランス盤モノラルLP/SPの再生はこれに尽きます。ステレオタイプは製作されず、Pierre Clement氏は1970年に亡くなりました
> 木下様
コメントありがとうございます。
Selmerは、以前木下さんのお宅に伺ったときには、まだ未開封品だったと記憶しておりますが、再生してみるとそのようなことがあったのですか。
Pierre Clementのダンパーゴムの話は、本カートリッジの最後の決定打だったのですよね。この分野での木下さんの研究の情熱には、本当に頭が上がりません。私も、積極的に啓蒙していこうと考えています!
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