フランクの「ソナタ」を演奏する感覚ってどういうものなのだろう。ある人の、激動の一生を表すような作品だが、この大曲を演奏し終えたときに、独奏者に、そしてピアニストの中には何が残るのだろうか。たぶん、実際に演奏したことがある人にしか判らないものなのだろうが、演奏者をひとつ違う次元へ押し上げられるような何かがきっとあるのだと思う。
ということで、行ってきました。なんだか仕事のほうがゴタゴタしてしまい、到着が大幅に遅れてしまったのが悔やまれる。やっぱり、月曜火曜木曜の演奏会は伺うのが難しいなあ。
【田村哲サクソフォンリサイタル 1st】
出演:田村哲(sax)、榮萌果(pf)
日時:2010年6月14日 19:00開演
会場:みなとみらいホール 小ホール
プログラム:
R.プラネル - プレリュードとサルタレロ
P.M.デュボワ - ソナチネ
F.デクリュック - ソナタ
B.コッククロフト - ビート・ミー
A.リード - バラード
C.フランク - ソナタ
デクリュックをロビーで聴いて(悔しい…)中に入ると、うわっ!なんと440もの席がある小ホールが、満席状態!ほとんどの方々が、田村哲の関係者なのだろう。部活ぐるみで来ているような、高校生っぽい方もたくさんいたなあ。そういえば、いつもサクソフォンの演奏会でお会いする方に、今日はほとんだ会わなかった。
そういった客層の前で提示する「クラシカル・サクソフォン」としての堂々としたプログラム。デクリュックがいいですね。フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」のように、おそらく誰が聴いても名曲だと断言されるほどの作品であり、一般の音楽ファンにもっと認知されて欲しいところだ。あと、やっぱり「Beat Me」は、聴き手もびっくりしていたみたい。
きちんとアルトサクソフォンの音を楽しめたのは後半から。もともと均整のとれたふくよかな音色を持つプレイヤーだが、さらにホールの豊かな響きも手伝って、まるで音がどこから聴こえてくるのか判らないほどに、ホールいっぱいにサクソフォンのサウンドが満ちていた。ピアノよりも一段大きいバランスであったのだが、聴いていた位置(中程の通路前)のせいもあったようだ。
リード「バラード」のような作品では、本当に田村哲の良さが出ますね。オペラのアリアのような…という文言は曲目解説に書いたのだが、その人が持つアトミックな音楽性がストレートに出る曲なのだと思う。そして、圧巻は上にも書いた「フランク」。30分近くにわたって、聴衆に対してこれまでの人生(って言っても25年か)のうねりを独白するような、愚直なまでにストレートな演奏だった。これほどまでに長い曲で、聴衆の集中力が続いていたことにも恐れ入るが、それはやはり演奏のせいだったのだろう。
アンコールは、ミシェル・ダマーズの「バカンス」。終演後のロビーは大混雑で、なんだか珍しい人にたくさん会えたなあ。田村哲のまわりは人がいすぎてとんでもないことになっていたが、ちらっとだけ挨拶して帰路についた。
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