2013/04/13

フランス海軍ツーロン軍楽隊の復刻盤(木下直人氏による)

木下直人さんからだいぶ前にご案内いただいていたのだが、購入が遅くなってしまった。木曜日にふと思い出して注文し、本日到着。じっくりと集中して2時間聴いてみた。

現在、フランス海軍は、パリに総司令部を置き、ブレストに大西洋艦隊司令部、ツーロン(トゥーロン)に地中海艦隊司令部、シェルブールに英仏海峡小艦隊司令部を持つ。1827年、ブレストとツーロンに軍楽隊を設置したのが海軍軍楽隊の始まりと言われているそうだ。ツーロン軍楽隊はそれ以降今日に至るまで各種活動を展開している。

公式ページはこちら。楽隊長の歴代リストをご覧になっていただくと(CDの解説でも木下直人さんが触れているが)面白いことがわかる。なんと、1893年から1910年までギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の楽長を務めた名指揮者ガブリエル・パレス Gabriel Parèsが、1883年から1895年までツーロン軍楽隊の楽隊長を務めていたことがわかる。ちょっと驚いたが、それだけ由緒ある軍楽隊だとも言えるだろう。

本復刻盤は、そんなツーロン軍楽隊の、ジャン・マイヨ Jean Maillot楽隊長の時代のレコーディングを復刻したものである。復刻技術・監修は木下直人氏。ピエール・クレマン Pierre Clementのカートリッジを使用し、ノイズは未除去。当時の音楽を余すところ無く現代に伝える名復刻である。

充実の2枚組。収録されたプログラムも、行進曲のみならず「交響吹奏楽的な」オリジナル作品が多く含まれており注目に値する。このプログラムならば、純粋な吹奏楽ファンにもオススメすることができる。

ディスク1
R.ド=リール「ラ・マルセイエーズ」
M.ムソルグスキー「トルコ行進曲(カルスの奪還)」
J.マイヨ「祭典のためのファンファーレ」
A.グレトリ「オペラ"ルシール"より」
C.サン=サーンス「英雄行進曲」
D.ミヨー「フランス組曲」
D.ミヨー「勝利の栄光」
D.ミヨー「追悼」
D.ミヨー「ウエスト・ポイント組曲」
G.フォーレ「葬送の歌」
F.メンデルスゾーン「付随音楽「夏の夜の夢」より結婚行進曲」
F.メンデルスゾーン「付随音楽「アタリー」より行進曲」
A.スレニック「インド行進曲」
Unknown「ライプチヒの戦いでの老親衛隊員行進曲」

ディスク2
H.ヒンデミット「吹奏楽のための交響曲 変ロ調」
F.シュミット「ディオニソスの祭」
F.シュミット「ポンペイの宿営」
F.ショパン「葬送行進曲」
G.マイアベーア「歌劇"予言者"より "たいまつの行進曲第3番"」
J.イベール「ポワティエのディアーヌ組曲」
林廣守「君が代」

管楽合奏はソロ楽器の集合体であり、そういった各楽器が織りなす色彩感にこそ吹奏楽の魅力が溢れているのだ、と思い知らされる。「音色を揃えて!」という安易な指導が、個々の楽器や奏者の個性を奪い、平坦でつまらない演奏ばかりの現代の吹奏楽とは一線を画する時代の演奏。ところどころ音程(というかピッチ?)が不思議に聴こえる部分もあるのだが、なんだかそれすらも時折魅力的なのはなぜだろう。

サクソフォンは誰が吹いているのだろう。1955年といえばマルセル・ミュール氏と若き日のダニエル・デファイエ氏がパリ周辺では名声を獲得したいた時代だろうが、このサクソフォンセクションの働きも不思議な魅力を醸し出す。この時代のフランスの管楽器が好きな方にはぜひ聴いてほしい(とは木下直人氏のコトバの受け売りだが)。木下直人氏による見開き2ページの渾身のライナーノートも、一読の価値有りである。ピエール・デュポン指揮のギャルド復刻盤とともに、手元においておきたい一枚。

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