2010/06/14

田村哲サクソフォンリサイタル1st

フランクの「ソナタ」を演奏する感覚ってどういうものなのだろう。ある人の、激動の一生を表すような作品だが、この大曲を演奏し終えたときに、独奏者に、そしてピアニストの中には何が残るのだろうか。たぶん、実際に演奏したことがある人にしか判らないものなのだろうが、演奏者をひとつ違う次元へ押し上げられるような何かがきっとあるのだと思う。

ということで、行ってきました。なんだか仕事のほうがゴタゴタしてしまい、到着が大幅に遅れてしまったのが悔やまれる。やっぱり、月曜火曜木曜の演奏会は伺うのが難しいなあ。

【田村哲サクソフォンリサイタル 1st】
出演:田村哲(sax)、榮萌果(pf)
日時:2010年6月14日 19:00開演
会場:みなとみらいホール 小ホール
プログラム:
R.プラネル - プレリュードとサルタレロ
P.M.デュボワ - ソナチネ
F.デクリュック - ソナタ
B.コッククロフト - ビート・ミー
A.リード - バラード
C.フランク - ソナタ

デクリュックをロビーで聴いて(悔しい…)中に入ると、うわっ!なんと440もの席がある小ホールが、満席状態!ほとんどの方々が、田村哲の関係者なのだろう。部活ぐるみで来ているような、高校生っぽい方もたくさんいたなあ。そういえば、いつもサクソフォンの演奏会でお会いする方に、今日はほとんだ会わなかった。

そういった客層の前で提示する「クラシカル・サクソフォン」としての堂々としたプログラム。デクリュックがいいですね。フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」のように、おそらく誰が聴いても名曲だと断言されるほどの作品であり、一般の音楽ファンにもっと認知されて欲しいところだ。あと、やっぱり「Beat Me」は、聴き手もびっくりしていたみたい。

きちんとアルトサクソフォンの音を楽しめたのは後半から。もともと均整のとれたふくよかな音色を持つプレイヤーだが、さらにホールの豊かな響きも手伝って、まるで音がどこから聴こえてくるのか判らないほどに、ホールいっぱいにサクソフォンのサウンドが満ちていた。ピアノよりも一段大きいバランスであったのだが、聴いていた位置(中程の通路前)のせいもあったようだ。

リード「バラード」のような作品では、本当に田村哲の良さが出ますね。オペラのアリアのような…という文言は曲目解説に書いたのだが、その人が持つアトミックな音楽性がストレートに出る曲なのだと思う。そして、圧巻は上にも書いた「フランク」。30分近くにわたって、聴衆に対してこれまでの人生(って言っても25年か)のうねりを独白するような、愚直なまでにストレートな演奏だった。これほどまでに長い曲で、聴衆の集中力が続いていたことにも恐れ入るが、それはやはり演奏のせいだったのだろう。

アンコールは、ミシェル・ダマーズの「バカンス」。終演後のロビーは大混雑で、なんだか珍しい人にたくさん会えたなあ。田村哲のまわりは人がいすぎてとんでもないことになっていたが、ちらっとだけ挨拶して帰路についた。

2010/06/13

しらこばと音楽団@昭和記念公園

立川市の昭和記念公園という場所で、しらこばと音楽団に参加して演奏してきた。会場は、昭和記念公園の一角に鎮座する、昭和天皇記念館内ガラス張りの講堂(写真)。記念館は大変モダンな建物だが、いったい誰の設計なんだろうか。ここで、本日いっぱい、NPO団体"立川子ども劇場"が主催する、とびっきりまつりという子供向けイベントが開かれていた。

メンバーは、サックスが、ねぇ。さん(Duo Green Green)、ニジマスさん(Duo Crescent)、kuri、mckenさん(アマリリス合奏団)はバリトンサックスのみならずMCも担当、そしてパーカッションがやまーさん。セットリストは、以下。

ピタゴラスイッチのテーマ
ミッキーマウス・マーチ
星に願いを
ピンクパンサーのテーマ
G線上のアリア
誰も寝てはならぬ
時の流れに身をまかせ
見上げてごらん夜の星を
長崎は今日も雨だった
トトロ・メドレー
崖の上のポニョ
名探偵コナンのテーマ(アンコール)

いやー、楽しかった!子どもたちの反応が楽しくて、演奏しているこちらもついついニコニコしながら演奏してしまったよー。トトロやポニョでの会場の湧きっぷりは、本当に楽しいなあ。一回の練習で四重奏を本番に乗せるというのも、個人的にはほぼ初めての経験で、いろいろと勉強になった。ぜひまたお願いします(笑)。

他にもいくつかイベントが開かれていたのだけれど、小学2年生くらいの女の子たちがドローンの上でフルートでジョン・ケージ風即興を吹いていたりとか、親子連れが手をつなげながらぐるぐると、テリー・ライリーのような音楽をひたすら歌いながら踊っていたり?とか、なんだか実験音楽的な催しが開かれていて、非常に面白かった。

さて、PowerShot S90を持っていったので、その写真をいくつか。

今日の演奏メンバー。もう帰りの写真ですが(笑)







聴いてくださったお客様方。こんなにたくさん!







やまーさんのパーカッション(クリックすると拡大)。珍しい楽器ばかりで、子どもたちも興味津々。椅子はもちろんカホンです。

2010/06/12

O.マーフィー&雲井雅人SQのDVD

Twitterのアカウント「kuri_saxo」です。みなさんも始めましょう(^∀^)ノ

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先日の雲井雅人氏のリサイタル会場で見つけて、購入したDVD「オーティス・マーフィ×雲井雅人サックス四重奏団 ジャパン・ツアー2009(Brain Music BOD-3095)」。前々から気にはなっていたものの、会場では3000円で売られていて(定価は3980円)ラッキーだった。

この演奏会、なぜだか忘れてしまったけれど伺うことができなくて、そして後から演奏会がすばらしかったということを人づてで聞き、悔しい思いをしたものだった。それにしても、DVDが制作されていただなんて、本当に発売されるまで知らなかった。それだけ、注目されていて、DVDを発売したときに売れる見込みがあるほどの演奏会だったということだ。だから、非常に良い映像、良い音質で収録されており、観応えは十分。そういえば、フルモー氏のDVDもまだ買っていないな…(あれは、記録映像として撮ったつもりが、反響が大きすぎて急遽発売に至った、というような経緯でDVD化されたはず)。

G.ガーシュウィン/R.マルティノ - ガーシュウィン・ファンタジー
山田耕筰/伊藤康英 - 赤とんぼ
A.パスクッリ/K.チェ - 蜂
R.モリネッリ - ニューヨークからの4つの絵
A.I.ハチャトゥリアン/A.ボーンカンプ - 剣の舞
新井満 - 千の風になって
D.マスランカ - マウンテン・ロード
W.A.モーツァルト/和久井仁 - オーボエ四重奏曲より第1楽章
E.モリコーネ/柏原卓之 - ガブリエルズ・オーボエ
秋透 - 3つの富山県民謡より第1,3楽章
伊藤康英 - 琉球幻想曲
B.エヴァンス - ワルツ・フォー・デヴィ

前半がマーフィー氏の独奏曲で、後半が雲井雅人サックス四重奏団の演奏。共演曲は、モーツァルト、伊藤康英「琉球幻想曲」と、アンコールとなったエヴァンスの「ワルツ・フォー・デヴィ」。

マーフィ氏の演奏は、最近ようやく生で聴く機会も増えてきたが、かつてRIAXから発売されていた初期のCD「Memories of Dinant(RIAX RICA-2004)」の印象が強かったため、初めて聴いたときは驚いたっけなー。近年の演奏はとにかくアツイ!のですよ。長い演奏活動の中で、少しずつ演奏のスタイルを変えてきた結果だと思うし、レコーディング⇔ライヴ、という媒体の違いもあろうが、それにしてもすごいな。

一曲目のガーシュウィンから、奥様の晴子・マーフィーさんとともに飛ばしまくり。大曲である「ニューヨークからの4つの絵」を1つの物語のように聴かせ、さらにハチャトゥリアンでは聴衆へのサービスも忘れず。演奏もレパートリーも、素晴らしいバランスだ。また、曲間に幾度かインタビューが挟まれるのだが、ただただ誠実で優しい人柄が言葉の隅々から溢れ出る。やはり音楽は人柄!カメラがかなり近くまで寄るため、奏法などをしっかり確認できるのも面白い。知り合いのサックス吹きの方もおっしゃっていたが、すごいアンブシュアだなー。決め所などでも全体的に音を低めに当てていくのは、アメリカのサクソフォン奏者の系統を受け継いでいる部分だろう。

前半だけでかなり満足してしまうのだが、後半冒頭、脳天からカミナリが落ちるような「マウンテン・ロード」の冒頭!ピタリとはまった純正律の響きは、これほどまでにパワーを持つものなのか!すでに幾度も演奏している「マウンテン・ロード」だろうが、雲井雅人サックス四重奏団の演奏はいつ聴いてもスリリングで興奮させられる。共演曲も楽しいですね。端正だが、光り輝くような音に溢れたモーツァルト(アレンジャーが和久井仁氏というのも凄いな…)、そして問答無用の「琉球幻想曲」はなんとサックス5重奏+ピアノという豪華絢爛な編成。これは、ヴァイオリンとサクソフォーン四重奏とピアノ版、という編成の楽譜を使っているのかな?アンコールの「ワルツ・フォー・デヴィ」

DVDの特性を非常に上手く生かしていると思った。演奏者の息遣い、会場の雰囲気が伝わってきて、クラシック・サクソフォンモノのなかでも、とても観る価値のあるメディアのひとつだ!まだ観ていない方は、ぜひどうぞ。Amazon購入ページへのリンク→こちら。

2010/06/11

ご案内:しらこばと!

最近、なんだか最近ブログのネタが演奏のご案内ばっかりだなあ(笑)。いろいろと書きたいこともたまっているが、まあ徐々に書いていこう。

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こんなイベントで、しらこばと音楽団のメンバーとして演奏してくる。メンバーは、サックスが、ねぇ。さん(Duo Green Green)、ニジマスさん(Duo Crescent)、kuri、mckenさん(アマリリス合奏団)、そしてパーカッションがやまーさん(初めてご一緒する)。演奏プログラムは、サクソフォックスを始めとした曲。楽しみ~。

【第4回とびっきりまつり ~みどりの音のゆうえんち~】
日時:6/13(日) イベントは9時頃~、しらこばと音楽団の演奏は13時~
会場:昭和記念公園 はなみどり文化センター
費用:100円(イベント参加の保険料)
主催:立川子ども劇場

詳細はこちら。お近くの方は、ぜひ家族連れでいらしてください。

2010/06/10

Kenneth Tse plays Canfield on YouTube

ケネス・チェ Kennth Tse氏の演奏動画をご紹介。ディヴィッド・デボア・キャンフィールド David DeBoor Canfieldによって作曲されたサクソフォン協奏曲「アフター・グリエール Concerto after Glière」。2年前にタイで開催されたサクソフォーン・コングレスの演奏映像のようだが、このように画質・音質とも高いものが存在していたことに驚いた。他のもあれば良いのに。

"アフター・グリエール"ということは、レインゴルド・グリエールのフレーズになぞらえた作品ということなのだろうか?(演奏後に、キャンフィールド氏がグリエールの肖像を持ってステージに駆け上がっている)私はグリエールの作品をほとんど聴いたことがないので、定かではないのだが…。

サクソフォンの小川卓朗さんは、この時の演奏を聴いて、自身のジョイント・リサイタルの曲目に本作品を入れようと思ったのだそうだ。こんどは全曲通して聴いてみたいな。

第1楽章


第2楽章


第3楽章

2010/06/09

演奏会情報:田村哲 サクソフォン・リサイタル

【田村哲 サクソフォン・リサイタル】
出演:田村哲(sax)、榮萌果(pf)
日時:2010年6月14日(月)19:00開演
会場:みなとみらいホール 小ホール
入場料:一般2500円 高校生以下1500円(全席自由・当日券各500円増)
プログラム:
R.プラネル - プレリュードとサルタレロ
P.M.デュボワ - ソナチネ
B.コッククロフト - ビート・ミー
F.デクリュック - ソナタ
A.リード - バラード
C.フランク - ソナタ

おなじみ、田村哲氏のリサイタル。実は、もうチケットが完売してしまったようなのだが(すごい!)、いちおう案内を掲載しておく。デクリュック、フランクという、弦楽器的な2曲(デクリュックは一応サクソフォンのオリジナルだが、明らかに弦のフレーズ運び)を軸に、宝石のようにおしゃれな小品を散りばめている。コッククロフトは杉原真人氏のリサイタルで聴いてインスピレーションを受け、プログラムに組み入れたそうなのだが、一本のテナーサックスからどんな演奏が繰り広げられるのかなあ。

あいにく月曜日ということで、開演に間に合うかどうかはアヤシイが、なんとかして伺おうと思う。楽しみ~。

2010/06/08

安井寛絵さんのリサイタルを聴いてきた

なんとか仕事を抜け出して伺ったが、案の定一曲目には間に合わず…(苦笑)。

【安井寛絵サクソフォーンリサイタル】
出演:安井寛絵(sax)、望月友美(mez-sop)、羽石道代(pf)、田野倉広向(electro)
日時:2010年6月8日(火曜)18:00開場 18:30開演
開場:ティアラこうとう 小ホール
プログラム:
田中カレン - ナイトバード
細川俊夫 - 暗い道
野平一郎 - 舵手の書
棚田文則 - ミステリアス・モーニングIII
A.ジョリヴェ - 幻想即興曲
A.カプレ - 伝説
E.デニゾフ - ソナタ

住吉駅から猛ダッシュして会場に到着。同じく一曲目に間に合わなかった(ナイトバードを聴けなかったのは残念!)mckenさんとともに、最前列に席を構えた。

初めてライヴで聴く細川俊夫から、ぐっと引き込まれる。実質的なデビュー・リサイタルという場で演奏家としての「地」を、ここまでストレートに聴衆へ届けることができるのは、ある種自信の表れでしょう。しかも、気合い先行ではなく、強固なベース(音色、テクニック、音楽性)を持つあたり、安井さんの個性のひとつと捉えられるかもしれない。

田中カレン、細川俊夫、野平一部、棚田文則というプログラムが第一部にならんだ作品展のようなセレクトは、実際にリサイタルで取り上げることには勇気が必要だったと想像する。だが、ここまで高レベルで吹かれてしまうと、安井寛絵さん⇔舵手の書とか、安井寛絵さん⇔ミステリアス・モーニングとか、プレイヤーと作品の一騎討ちのような印象を受ける。20代にして作品とバトルできる方って、なかなかいないのではないかなあとも思った。第一部は、鳥のさえずりを抱きながら夜が明けていた…(なんとコンセプチュアルな!ナイトバードを聴けなかったのが、ますます残念だ!)。

細川俊夫作品について、個人的な解釈を一点:
くらきより くらき道にぞ 入りぬべき はるかに照らせ 山の端(は)の月 - 和泉式部
歩けば歩くほどに、暗い暗い中に迷い込んでしまいそうだ。山の端の月よ、どうか行く先を照らしてくれ。ここでの「暗き道」とは、「煩悩の道」のことをも言っている。


後半は、とにかくデニゾフが圧巻。第一楽章を古典的な「ソナタ」として聴かせた演奏は初めて聴いたし(しかも、ありあまるほど楽譜に忠実!)、第三楽章のJazzyな愉悦感は、単に"さらっているだけ"の演奏とは一線を画したレベルにあったと思う。最近でこそいろいろな方が吹いている曲だけれど、自分の血肉としてレパートリー化している方は、少ないのではないかな。そういう意味で、今日のデニゾフの演奏を聴くことができて良かった!

相当さらっているのだろうなあ。アンコールまで聴衆に気を抜かせないだなんて、いやはや、聴く側としても一筋縄ではいかないですね。そこまで自分の内面を掘り下げて、聴き手をみなその穴の中に無理やり誘い込んでしまう演奏スタイルは、現代のサクソフォン界のなかでも稀なものなのかもしれない。ジョン・ハールとか、平野公崇とか、そのあたりの音楽家のコンセプトにも通じるのでは。

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会場は関係者だらけ。いろいろな方にご挨拶できて良かったー。特に、7年ぶり?となるモンマミチコさんにお会いできたのが収穫!帰りは、mckenさんと「軽く」一杯。音楽の話から、現代で一番大切と思われるようなことの話まで、いろいろと話せて楽しかったです。ありがとうございました!