ジョン・ハールの「サクソフォン・ミサ曲」という作品を、「The John Harle Collection Vol.8 - Gothic」で聴くことができる。ギルドホール音楽院サクソフォンアンサンブルをフィーチャーした演奏で、大規模、かつ、実験的要素を含む壮大な作品である。
のちに「恐怖と壮麗」という作品で、作品のコア(中世の音楽を活用するなどの考え方)を流用しながら、コンパクト、かつ、ポップな要素をも携えて再び世に問われることになるが、その片鱗を「サクソフォン・ミサ曲」の各所で垣間見ることができる。例えば「恐怖と壮麗」の最終部、40本のソプラノサクソフォンが炸裂する箇所は、明らかに「サクソフォン・ミサ曲」の一部を引用していることが分かる。
「恐怖と壮麗」と「サクソフォン・ミサ曲」の関係性については、ジョン・ハール自身の言葉を引用しておこう。
《恐怖と壮麗》は、音楽による五つのドラマからなるファンタジーである。「過去の中に現在を見出だせ。そうすれば世界が理解できる」といったのは、ロイヤル・シェイクスピア劇団の芸術監督であるエイドリアン・ノーブルだった。そしてこのアルバムが形を整えるに連れて、彼のこの言葉は私の心の中でより鮮明に鳴り響くようになった。
この音楽の種が最初に蒔かれたのは1980年代の中頃、ハリソン・バートウィッスルとドミニク・マルドウニーがナショナル・シアターでわれわれ音楽家にとって刺激的な演奏を行った時のことである。彼らは、中性音楽が構造的・即興的な遊び場として面白い素材であることにわれわれの目を開かせてくれた。彼らの努力の成果は私の場合、《サクソフォン・ミサ曲》となって結実した。これは16人のサクソフォン奏者、4人の打楽器奏者、2人のキーボード奏者、ニュー・ロンドン・コンソート、そして1台の大砲のための1時間に及ぶ大作である。《サクソフォン・ミサ曲》が埋葬されて10年後、このアルバムに収録された作品で、バートウィッスルとマルドウニーの努力はさらなる成果を生んだ。
これは「恐怖と壮麗」のブックレットに記載されたコメントで、このアルバムを入手したときから「サクソフォン・ミサ曲」の存在はとても気になっていた。そういった背景から「The John Harle Collection」にそれが収録されたことは個人的に非常に嬉しい出来事だった。このコメントからすると「サクソフォン・ミサ曲」は演奏時間1時間とのことだが、「The John Harle Collection」に収録されたものは20分程であり、その差分の理由は判らない。もしかしたら、複数バージョンが存在しているのかもしれない。
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